一般的な委任状の意味と書き方
委任状とは、本来なら自分自身で行うべき一定事項の手続きを、第三者に委任したことを記載した文書のことです。
会合などの議事を委任する場合や、第三者に手続きを依頼する場合などに作成します。
本コラムでは、委任状の書き方について解説します。

委任状とは
委任状とは、本人が行うべき手続きや持っている権利などを第三者に委任する保証となる文書のことをいいます。
本来自分がやるべきことでも、どうしても都合がつかず出来ない時に委任状を作成することで、他者に依頼することができます。身近なところでは役所や銀行での申請手続きがあげられます。
「委任」と「代理」の違い
「委任」と「代理」は同じような意味合いで使われることが多いですが、法律上はその役割が異なります。
民法第643条「委任」
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法第99条「代理行為の要件及び効果」
- ①代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
- ②前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
上記の違いは「委任」は他者に託す行為、「代理」は託された任務を実行する行為を指します。
したがって、代理人がおこなう手続きが委任者本人から託されたものであることを第三者に証明出来るのが「委任状」となります。
参考:民法 - 法務省
委任状の効力期間
委任状には法令で定められた効力期間はありません。しかし、日付が古すぎるとトラブル要因になるため、多くの機関で『作成から3ヶ月以内』のものを提出するよう求められます。また、委任状の効力を停止したいときは委任状を回収する、委任された内容が完了した時点で効力を失うよう明記する、委任状に有効期限を明記しておく等の措置をとっておくと良いでしょう。
用紙について
委任状の用紙にも特に決まりはありません。コピー用紙や便箋、メモ用紙でも良いのです。役所などには予め委任状の様式がありますので、心配な場合はそれを使いましょう。もちろん自作のものでも構いません。
印鑑と印鑑証明について
委任状にはシャチハタではない印鑑での押印が必要になります。内容により認印で良いケースもありますし、重要な手続きであれば実印を求められることもあります。また実印を求められる場合は、併せて印鑑証明の提出が必要なケースが多いでしょう。
委任状の様式と文例
委任状を作成することで、委任する人に対して法的に代理権を与えた証拠になります。そのため、万一代理人が権限を乱用したとしても、代理行為が有効となりますので、委任事項はなるべく明確にしておく必要があります。それでは様々な委任状の書き方をご紹介しましょう。
①基本的な委任状
ここでは、どんなケースでも使いやすい基本的な委任状の書き方についてご説明します。
委任年月日
委任状に記載する日付は『委任した日』に該当します。
委任者の氏名・住所
本人を確定するために生年月日や電話番号の記載が必要なこともあります。
受任者(代理人)の氏名・住所
委任者同様、受任者も生年月日や電話番号の記載が必要なこともあります。
委任内容
できるだけ詳しく具体的に記載します。
押印
必要に応じて認印か実印を押印します。
②株主総会で使える委任状
株主総会にて代理人が議決権を行使するためには、委任状もしくは議決権行使書面が必要になります。多くの企業で代理人の資格を株主に限定していますから、そのような制限がないかの確認は必要でしょう。株主総会で使う委任状の書き方についてご説明します。
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第3回 株主総会で使用する委任状の注意点
株主総会で使用する場合の記載事項
- 株主総会の日時
- 開催場所
- 回数
- 定時/臨時の区別
- 押印
このときの印鑑は、会社に届け出ている印鑑でないと委任状が無効になってしまうことがあります。また、委任者のパスポートや免許証のコピーを求められることもありますので、必要書類については事前の確認が必要です。
③住民票受け取りで使える委任状
特に会社員は役所の受付時間中に手続きに行けない人が多いのではないでしょうか。家族に委任すれば代わりに手続きをしてもらえます。しかし、せっかく行っても不備があっては無駄足になってしまいますよね。不備のないよう事前にしっかり確認しておきましょう。それでは住民票受け取りで使う委任状の書き方をご説明します。
1.委任の内容
- 住民票の写しの申請
- 戸籍謄本の交付申請
- 印鑑登録の申請 など
2.必要な書類と通数
3.使用目的
- パスポート取得のため
- 勤務先への提出のため
- 住宅公社へ提出のため など
④不動産売買で使える委任状
不動産の売買契約において、売主と買主、そして仲介不動産会社が一同に会して手続きを進めるのが一般的です。
しかし、物件が遠方だったり、ケガや病気だったりと事情により対面取引が出来ない場合に、委任状を作成して代理人に売買契約をおこなってもらうことが可能です。
フォーマットは自由ですが、売主の意向通りに手続きをおこなえるよう、不動産売買で使う委任状の書き方についてご説明します。
不動産売買で使用する場合の記載事項
- 売却物件の情報(土地・建物の表示項目)
- 委任の範囲(不動産の売買契約に関する権限、所有権移転登記等に関する権限 など)
- 署名と押印(実印)
また、売却価格や仲介手数料などの金額交渉などを委任者がおこなっても問題ないか、といったように、お金に関するトラブルが起きないためにも、上記に加えて「してほしくないこと」は「禁止事項」として記載しておくと良いでしょう。
委任状の注意点
普段特に気にせず委任状を扱っている人も多いと思いますが、代理権の乱用などによるトラブルも発生しています。下記の点に注意して作成しましょう。
トラブル防止のためのポイント
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第1回 今さら人には聞けない!弁護士が教える、委任状の常識
1.白紙委任状を発行しない
委任状に受任者名や委任事項を書かず、委任者の署名捺印だけをしてしまうものを白紙委任状といいます。白紙部分に自由に書き込まれてしまう恐れがあるため注意が必要です。
2.委任内容の下に『以下余白』と記載する
勝手に委任事項を追記されないよう、『以下余白』と記載したり止め印を押印したりして防止します。
3.捨印を押印しない
捨印を押印しておくと委任事項を勝手に変更されてしまう危険性があります。
4.コピーをとっておく
委任状作成後コピーをとっておけば、委任状の記載事項を後日でも確認できるため安心です。
手書きでもいいのか
委任状はもちろん手書きでも構いません。PC作成の場合でも、署名は必ず手書きである必要があります。ここは手書きでないと無効とされてしまう可能性がありますので注意しましょう。
署名以外の例文が記載されている簡単に作成可能なテンプレートはこちらから。
代筆でもいいのか
委任状は、必ず委任者が自筆しなければなりません。それが委任者の意思表示となるからです。代筆が可能であると、誰でも勝手に委任状を作れてしまいますね。
しかしながら、委任者が自筆できない状態の場合はどうしたら良いのでしょうか。例えば事故や病気で文字が書けない場合などです。この場合も必ず本人の意思表示は必要です。そのため、意識不明であるときには委任自体ができません。意思表示ができれば、代筆が認められることもあります。そのときはさらに下記内容を記載します。
- 代筆しなければならない理由
- 代筆者氏名
- 委任内容を本人が了解した旨
- 委任者の拇印
ただし、これは受付機関によってもケースバイケースですから、代筆が必要なときには一度確認してみることをオススメします。
まとめ
法令で定められた効力期間はありませんが、委任状の日付が古いとトラブル要因になるため、『作成から3ヶ月以内』のものを提出するよう求められることが多いようです。
様式にも特に決まりはありませんが、少なくとも自署だけは手書きで本人がする必要があります。委任状は様々なシーンで使われることがありますので、作成する際はテンプレートを参考にしてください。