株主総会に出席できない時には代理人が使える
皆さんがご存じのとおり、多くの上場企業や大企業では、株主総会に出席できない人のために、議決権行使書面や会社が発行した委任状が当たり前のように使用されています。
通常、議決権行使書等は郵送で送られ、株主総会へ出席は出来ないが、議案へ賛成・反対を行いたい場合は専用のハガキ等が用意されている場合が殆どです。その様な場合、それらを利用すれば良いのですが、万一委任状を紛失してしまった場合、あるいは、閉鎖型の企業の場合や中小企業の場合で、そのような委任状自体が株主総会の招集通知に同封されていない場合があります。
そのような場合に、使える委任状をご紹介したいと思います。
委任状や議決権の代理行使書面が必要!
会社法第310条1項には「株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。」と規定されており、議決権を代理人が行使すること自体は、法律上認められているところです。
また、その場合について、同条は二つ重要なことを規定しています。
一つ目は、株主が代理人によって議決権を行使する場合、当該株主又は代理人は代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない(同法同条同項第2文)という点です。
つまり、委任状や議決権代理行使書面が必要だという点です。
委任状や議決権代理行使書面がなければ議決権は行使できません。
二つ目は、この株主から代理人に与える代理権については、株主総会ごとにしないといけない(同法同条第2項)という点です。
それゆえ、この書式でも代理権については「何年何月何日に開催される、株式会社○○の第○回定時株主総会」と株主総会が限定されて、授与されています。
この点を記載しない、あるいは包括的に「株主総会において」などと記載された委任状では、法律の要件を満たしませんので、委任状としては使えないということになります。
代理人は誰でもいいの?
それでは、受任者である代理人は誰がなってもいいのでしょうか。
この点については、かなり多くの会社が定款において代理人の資格を株主に限定していますし、このような限定は判例上も有効とされていますので、会社の定款や招集通知を確認する必要があります。
もっともそのような限定がある場合でも、法人が株主でその従業員が代理人として選任される場合には、その従業員が株主である必要はございません。
以上のような資格制限がない場合には、誰でも受任者として代理人になることができます。
今回の書式では、特に代理人の資格制限は意識されていませんが、制限がある場合であっても、委任状の代理人部分の記載は同様で構いません。
会社の方で当該住所と氏名から、その代理人が株主であるかの確認はできるからです。
押印は必要なのか?
株主の記名の横の押印がない場合でも、委任状としては有効なのか?
そのような委任状の取扱いを取締役が事前に定めているときはそれに従うことになります(同法298条1項5号、同法施行規則)が、そうではない場合には、一般にそのような委任状は無効と考えられています。
一方で、記名ではなく署名がなされている場合には押印がない場合でも有効と考えられます。
とはいえ、委任状を作成する際には、記名がされていなければ、署名と捺印をすることで、有効だの無効だのという問題が生じないようにすべきです。
この場合の印鑑ですが、会社に届け出ている印鑑がある場合には、その印鑑を使わないと委任状として無効になることがありますので、会社に届け出ている印鑑を使用しましょう。
もし会社にそのようなものを届け出ていない場合には、どの印鑑を使用しても差し支えありませんが、偽造を疑われないように、実印を捺印して印鑑証明書を添付するか、認印と免許証等の本人確認書類のコピーを添付してあげれば代理人としては株主総会の受付で通れないという問題は生じなくなりますので、印鑑にも注意を払いましょう。
今回のポイント
ポイント(1)
株主総会で代理人が議決権を行使するには委任状か議決権行使書面が必要。
ポイント(2)
委任状の委任事項には、具体的な株主総会の日時、場所、回数、定時か臨時かの区別を記載する。
ポイント(3)
代理人資格の制限がないかを確認する。
ポイント(4)
委任状の捺印にも注意を払う。