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賞与引当金とは? 計算・仕訳方法を具体例を挙げてわかりやすく解説

賞与引当金の計算が複雑で、どのように処理すべきか悩んでいませんか?計算ミスが経営判断に影響を与えたり、税務上の問題に発展したりする可能性もあるため、正確な処理が必要です。

本記事では、賞与引当金の基本的な計算方法や仕訳例を具体的に解説します。また、計上時に注意したいポイントについてもわかりやすく紹介を行います。

適切な決算書を作成するための参考として、この記事をぜひ活用してください。


この記事の監修者
  税理士・米国税理士・認定心理士 

賞与引当金とは?

まずは、賞与引当金とは何かについて解説します。

賞与引当金の定義

賞与引当金とは、翌期に発生する賞与について、今期に対応する従業員の賞与分を事前に引当金として計上しておくための勘定科目です。期間損益の適正化の観点からも重要です。

通常、従業員に対する賞与の支給時期と支給金額は、支給実態や社内規定等によって事前に概ね決定します。計上するべき金額が今期中に確定するため、引当金として計上が必要です。

賞与の支給対象期間を定めている場合、それに従って支給額が決定します。たとえば、3月決算の会社で7月の夏期賞与が「9月から翌年3月まで在籍した人に賞与を支払う」とされている場合、9月~翌年3月の6カ月分の賞与全額を引当金として計上します。

賞与引当金の支給見込基準

賞与引当金の支給見込基準には、2つの種類があります。

  1. 支給見込額基準
  2. 旧税法基準

支給見込額基準は、過去の支給実績や社内規定によって支給対象期間を定めている場合が該当します。

また、旧税法基準は、旧法人税で用いられていた支給対象期間を基準として用います。中小企業会計指針によると、旧税法基準で算定された金額が合理的である場合は、賞与引当金の金額とすることが可能とされています。

参考:中小企業会計指針|日本税理士連合会

賞与引当金の必要性

賞与引当金は、支給の基準期間が前期にまたがっていた場合に、費用を平準化するために必要です。

特に、賞与は一定期間の勤務実績を基にまとまった額が支給されることが多いため、賞与引当金計上の有無で利益に大きな差が生じます。計上しない場合、賞与の支給時期を恣意的に動かして、一定期間の利益を調整できてしまいます。

なお、賞与引当金は債務が確定していないため、損金計上はできません。


賞与引当金の仕訳

ここからは、賞与引当金をどのように計算・仕訳を行うのか、具体例を挙げて解説します。

賞与引当金繰入額の計算方法

賞与引当金の繰入額の計算例を見てみましょう。

  • 決算:3月
  • 支給対象期間:1月~6月
  • 支給月:7月
  • 賞与総額:120万円と仮定、実際の支給は150万円

この場合、決算時の賞与引当金は1〜3月が対象となるため、下記のように計算・仕訳されます。

1,200,000円×3カ月/6カ月=600,000円

借方

貸方

賞与引当金繰入額 600,000円

賞与引当金 600,000円

また、7月の賞与支給時は下記のように仕訳されます。

借方

貸方

賞与引当金 600,000円

賞与    900,000円

現金預金      1,500,000円

賞与引当金は負債にあたる

借方

貸方

賞与引当金繰入額 600,000円

賞与引当金 600,000円

賞与引当金として60万円計上する場合、表のような仕訳になります。賞与引当金は今後支払うであろう賞与を負債と捉えて、貸借対照表上に記録されます。

賞与引当金繰入額は、近い将来支払う賞与を損益計算書上に販売費及び一般管理費 として表示します。

賞与引当金戻入の計上

借方

貸方

賞与引当金 600,000円

賞与    900,000円

現金預金      1,500,000円

賞与の支給を行った時、前期分として経費計上された賞与引当金60万円の戻し入れの仕訳を行います。賞与60万円が今期分の費用として計上されることで、合計120万円分の賞与が計上されたことになります。

税務上は、支払った際に損金として確定され、120万円の損金として処理されます。


賞与引当金を計上する際のポイント・注意点

ここまで、賞与引当金の基本的な計算・仕訳方法について解説しました。ここからは、賞与引当金を計上する際に注意するべき点について見ていきましょう。

賞与引当金は損金として計上されない

賞与引当金は、会社の期間損益を正確に把握するという観点から、計上する必要があります。しかし、債務が確定していないので、損金として計上することができません。賞与を支給するために金額を確定した時に、損金経理ができるようになります。

これは、ステークホルダーは企業の業績を把握するために財務諸表を用いるのに対して、税務当局は正しく徴税することを目的に決算書を用いるからです。損金が不確定では、正確な税額を計算することができません。

賞与引当金の仕訳は毎月計上する

賞与引当金は、実務上、毎月計上される場合が多いようです。賞与は年2回支給の企業が多く、少なくない金額になるからです。賞与支払時のみに起票をする場合、計上月のみ利益が大きく減ることになります。

経営陣にとって、決算書は会社の経営状況を知るための重要な資料です。毎月一定額を賞与引当金として計上していくことで、経営判断を誤るリスクをなくすことができるでしょう。

賞与引当金の社会保険料も計上する

賞与を支給する場合、健康保険、介護保険、厚生年金、労働保険が賦課(ふか)されます。賞与引当金を計上する際には、会社負担分の社会保険料等を加味して計算しなければなりません。

通常の賞与引当金と同じように税務上の損金にはできませんが、費用の負担はほぼ確定しているため、引当金としての計上が必要です。


賞与引当金についてのまとめ

賞与引当金は、翌期に発生する賞与について、今期に対応する賞与分を事前に計上するための勘定科目です。期間損益を適正に計算するために、正確に計上する必要があります。

ただし、債務が確定しないため、損金としては計上されない点には注意が必要です。会計上と税務上の処理の違いを理解したうえで、適切に処理を行うようにしてください。


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監修者プロフィール

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竹中 啓倫

税理士・米国税理士・認定心理士

上場会社の経理部門で個別決算を中心とした決算業務に従事する傍ら、竹中啓倫税理士事務所を主宰する。
税理士事務所では、所得税・法人税を中心に申告業務を行っている一方で、外国税務に関するセミナー講師を行っている。
心理カウンセラーとして、不安を抱える人々に対して寄り添って、心の不安に答えている。
税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

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