礼金の勘定科目は金額によって異なる! 仕訳・消費税の取り扱いを理解しよう
礼金とは、物件の契約時に大家に対して支払う謝礼金のようなものです。
礼金の勘定科目は支払った金額によって異なり、消費税の扱いも間違いやすいので注意が必要です。
この記事では、礼金の勘定科目と仕訳例、注意点を解説します。経理を担当している方は、ぜひ参考にしてください。
礼金とは
礼金とは、賃貸物件の契約時に、大家に対して支払う謝礼金です。賃貸契約の初期費用として、敷金と一緒に支払うことが多いですが、その目的は異なります。
敷金は、借主に責任がある損傷の修理・修繕費や家賃の未払いに充てられ、その差額が退去時に返却されます。しかし、礼金はあくまで謝礼金なので、退去時に返却されません。
礼金は、現在よりも賃貸物件の数が少なかった時代に、物件を貸してくれたことへの感謝を示すため、お金を大家に渡していたのが始まりと言われています。
仲介手数料との違い
賃貸契約の際には、礼金や敷金のほかに、仲介手数料が発生します。
礼金が大家に支払う費用なのに対し、仲介手数料は、物件探しから契約までのサポート代として不動産会社に支払う費用です。
仲介手数料は、宅地建物取引業法に基づき、1ヵ月分の家賃に消費税を足した金額が上限に定められています。
一方で、礼金は慣習によるものなので、法律で上限額が決まっていません。
礼金の消費税
礼金は、その物件の用途によって、消費税の課税となるか非課税となるかが決まります。居住用として賃貸契約する場合、社会政策上の観点から、礼金に消費税はかかりません。
しかし、企業が事務所や店舗など、事業用として賃貸契約をする際には、礼金に消費税がかかるので注意しましょう。
企業が契約する居住用物件の例として、社員寮や社宅として物件を借り上げるケースが挙げられます。ただし、駐車場にかかる礼金は課税対象です。
礼金の勘定科目
礼金の勘定科目は金額によって異なるため注意しましょう。
ここでは、礼金の勘定科目を金額別に解説します。
20万円未満:地代家賃
礼金が20万円未満の場合は、「地代家賃」として計上します。地代は土地を借りる際に支払う金銭、家賃は建物を借りる際に支払う金銭のことです。
20万円未満の礼金は、事務所や土地の賃料として扱い、全額を費用として会計処理します。「支払手数料」として処理することも可能です。
20万円以上:長期前払費用
礼金が20万円以上の場合は、「繰延資産」として計上します。
支払時には「長期前払費用」の勘定科目で繰延資産として会計処理が可能です。
決算時には「地代家賃」もしくは「支払手数料」として償却します。
礼金の支払い・受け取り時の仕訳方法
ここでは、礼金を支払った時と、受け取った時の仕訳方法をそれぞれ解説します。
支払った時の仕訳方法は金額が20万円未満か20万円以上かによって異なりますが、礼金を受け取った場合の仕訳方法は一種類のみです。
20万円未満の礼金を支払った場合
礼金の金額が20万円未満の時は、支払時に全額を費用として計上します。
例)新しく開設する事務所の礼金として15万円を普通預金から支払った。
借方 |
貸方 |
---|---|
地代家賃 150,000 |
普通預金 150,000 |
20万円以上の礼金を支払った場合
礼金の金額が20万円以上の場合は、繰延資産として処理します。繰延資産とは、すでに支払いが完了しているもので、その効果が1年以上に及ぶ費用です。
礼金は賃貸借契約の締結時に支払うものですが、その効果は契約が終了するまで及ぶと考えられるので、繰延資産に該当します。繰延資産は、その効果が及ぶ期間に基づき償却(=費用化)することになります。
賃貸借契約においては、一般的には契約期間が定められています。よって、その期間にわたって償却する形です。
また、契約期間が定められていない場合は5年で償却します。
例)営業所を移転するため、新しい事務所の賃貸借契約を締結した。それに伴い、礼金100万円を普通預金口座から支払った。なお、賃貸借契約の契約期間は2年である。
借方 |
貸方 |
---|---|
長期前払費用 1,000,000 |
普通預金 1,000,000 |
例)決算時に上記の礼金について償却を行う。なお、契約の更新までの残りの期間は1年である。
借方 |
貸方 |
---|---|
地代家賃 500,000 |
長期前払費用 500,000 |
礼金を受け取った場合
不動産賃貸業を営む大家が、借主から礼金を受け取った場合の仕訳は次の通りです。借主の場合と異なり、受け取った金額を一括で収入に計上します。
例)自己が不動産賃貸事業用として所有する貸店舗の賃貸借契約を締結し、礼金50万円を受け取った。受け取った礼金は普通預金口座に入金した。
借方 |
貸方 |
---|---|
普通預金 500,000 |
売上高(※) 500,000 |
※「受取賃貸料」とすることもあります。
礼金の勘定科目・仕訳に関する注意点
ここでは、礼金の勘定科目・仕訳に関する注意点を紹介します。間違いやすいポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
繰延資産の償却開始日
繰延資産の償却開始日は、礼金を支払った日となります。
通常、礼金は賃料の発生よりも前に支払いますが、償却は礼金を支払った日を基準に月数按分が必要です。
繰延資産となる礼金は、支払った日から償却を開始します。事業年度の途中で支払った場合は月割りで計算することになり、1ヵ月未満の期間がある場合は1ヵ月としてカウントします。
(例)3月決算の会社が6月15日に賃貸借契約を締結し、同日に礼金60万円を普通預金から支払った。賃貸借契約の契約期間は2年である。
借方 |
貸方 |
---|---|
長期前払費用 600,000 |
普通預金 600,000 |
(例)決算時に上記の礼金について償却を行う。
- 600,000円 ÷ 2年 × 10ヵ月 ÷ 12ヵ月 = 250,000円
- 6月は1ヵ月未満であるため、1ヵ月としてカウントします。
※タックスアンサーNo.5460「建物を賃借するための権利金等」参照
敷金など礼金以外の勘定科目の誤りに注意する
賃貸借契約に基づく支払いには、礼金の他にも敷金や仲介手数料などがあります。
敷金は繰延資産ではなく、「投資その他の資産」として計上することになるため、契約書の内容を十分に確認し、会計処理を間違えないようにしましょう。
また、仲介手数料は賃貸借契約が成立した事業年度に一括して「支払手数料」などの勘定科目で処理します。こちらも礼金と混同しないように注意してください。
礼金について勘定科目内訳明細書に記載する
勘定科目内訳明細書は、法人の決算書を作成する際に必要な書類です。支払家賃や礼金については「地代家賃等の内訳書」に記載します。
礼金の勘定科目についてのまとめ
礼金は、支払金額によってその後の会計処理が変わります。
また、物件の契約年数によって償却期間も変わるため、会計処理をする際は注意が必要です。
消費税の取り扱いにも注意して、正確な会計処理を実施しましょう。
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