備品の勘定科目とは? 正しい会計処理方法・経費計上のやり方を徹底解説!
備品をどの勘定科目に仕訳するか迷っていませんか?備品は、取得価額や耐用年数に応じて処理する方法が異なります。
具体的には、取得価額が10万円以上のものは「備品」として計上しますが、10万円未満または耐用年数が1年未満のものは「消耗品費」として計上が可能です。
本記事では、備品購入時の勘定科目や経費計上に関する基本的な知識を、わかりやすく解説していきます。仕訳で悩まれている経理担当者の方はぜひ参考にしてください。
備品購入時の勘定科目
備品購入時の勘定科目は備品の性質によって異なり、以下の3つのケースに分けられます。
- 備品に仕訳するケース
- 消耗品費に仕訳するケース
- 勘定科目が事務用品費になるケース
それぞれのケースについて解説します。
備品に仕訳するケース
購入した備品が「耐用年数が1年以上で取得価額が10万円以上の物品」の場合、「備品」に仕分けします。
耐用年数は、国税庁が設定した資産が利用できる期間を意味し、資産の種類に応じて異なります。通常の使用環境下での補修や保守を考慮して設定されており、例えば、金属製の事務机は15年、冷房用機器は6年などです。
国税庁「耐用年数(器具・備品)(その1)」
消耗品費に仕訳するケース
購入した備品が「耐用年数が1年未満または取得価額が10万円未満」の場合、「消耗品」に仕訳します。
なお、取得価額が20万円未満の場合は「一括償却資産」としての処理も可能です。
一括償却資産は、耐用年数にかかわらず固定資産を3年で均等に償却します。個別に管理せずに3年で償却できる一方、耐用年数によっては必ずしも有利にならない点に注意が必要です。
勘定科目が事務用品費になるケース
事務用品費は、事務作業に必要な備品を購入した場合に用いる勘定科目です。会社によっては、消耗品費に含める場合もあります。
消耗品費と事務用品費を使用する際には、自社の過去の会計処理を継続することが重要です。
その理由は、企業会計には「継続性の原則」があり、採用した会計処理方法を継続して使用し、安易に変更してはならないというルールがあるためです。
備品を購入時の会計処理
備品購入時の会計処理について、以下のケースに分けて解説します。
- 備品で計上する場合の処理
- 消耗品費で計上する場合の処理
例題を用いて解説するため、参考にしてください。
備品で計上する場合の処理
備品で計上する場合には購入時に資産として計上し、決算時に減価償却費を計上します。
社員食堂に設置するために20万円のテレビを購入した場合を例に説明します。(耐用年数5年)
<購入時>
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
器具備品 |
200,000 |
現金 |
200,000 |
<決算時>
減価償却費の計上方法には「直接法」と「間接法」があります。
<直接法の場合>
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
減価償却費 |
40,000 |
器具備品 |
40,000 |
<間接法の場合>
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
減価償却費 |
40,000 |
減価償却累計額 |
40,000 |
自社がどちらを採用しているかを確認して処理しましょう。
消耗品費で計上する場合の処理
消耗品費で計上する場合の処理方法は、以下の2通りです。
- 購入時に貯蔵品で計上する方法
- 購入時に消耗品費で計上する方法
2000円の穴あけパンチを5台購入し、決算時に4台未使用になっていた場合を例に説明します。
<購入時に貯蔵品で計上する方法>
・購入時
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
貯蔵品 |
10,000 |
現金 |
10,000 |
購入した10,000円分すべてを、資産の勘定科目の「貯蔵品」として計上します。
・決算時
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
消耗品費 |
2,000 |
貯蔵品 |
2,000 |
使用した穴あけパンチ1台分にあたる2,000円を、費用の勘定科目の「消耗品費」に振り替えます。
<購入時に消耗品費で計上する方法>
・購入時
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
消耗品費 |
10,000 |
現金 |
10,000 |
購入した10,000円分すべてを、費用の勘定科目の「消耗品費」として計上します。
・決算時
借方科目 |
金額 |
貸方科目 |
金額 |
貯蔵品 |
8,000 |
消耗品費 |
8,000 |
未使用の穴あけパンチ4台分にあたる8,000円を、資産の勘定科目の「貯蔵品」に振り替えます。
備品を経費計上する方法
備品の経費計上には、以下の3つの方法があります。
- 減価償却で経費計上する
- 一括償却資産で経費計上する
- 少額減価償却資産特例で経費計上する
それぞれの特徴について詳しく解説します。
減価償却で経費計上する
1つ目は、減価償却で経費計上する方法です。物品ごとに税法で定められた耐用年数を確認し、使用年数に応じて価値の減少分を減価償却して経費計上します。
国税庁でオフィスの器具や備品の耐用年数を細かく定めているため、減価償却で経費計上する際には必ず参照しましょう。
国税庁「耐用年数(器具・備品)(その1)」
【関連記事はこちら】
減価償却とは? 必要性や対象となる資産、計算方法をわかりやすく解説一括償却資産で経費計上する
2つ目は、一括償却資産で経費計上する方法です。
一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産を、耐用年数にかかわらず3年で均等に経費にできる処理をいいます。減価償却と比較して計算が簡単で、3年で取得価額の全額を損金に算入できる点が特徴です。
ただし、耐用年数によっては必ずしも有利にならない点に注意しましょう。
【関連記事はこちら】
一括償却資産とは? 仕組みや少額減価償却資産との違いを解説少額減価償却資産特例で経費計上する
3つ目は、少額減価償却資産特例で経費計上する方法です。
青色申告書を提出する従業員が500人以下など特定の要件を満たす企業は、30万円未満の資産に対して「少額減価償却資産の特例」が適用され、取得価額全額を事業年度の損金に算入できます。
なお、全額償却できる資産の上限は年間300万円までです。
少額減価償却資産の特例を適用する場合、取得価額が10万円未満のものや一括償却資産の適用を受けるものはこの特例の適用の対象外のため、注意しましょう。
備品勘定科目についてのまとめ
備品購入時の勘定科目は、購入した備品の取得価額や耐用年数によって異なり、「備品」または「消耗品費」に仕訳します。
勘定科目を適切に使い分けると、自社の資金使途について項目別の整理が可能です。さらに、国税庁の定めるルールを基に社内の経理ルールを構築すると、「どの勘定科目に仕訳したら良いか分からない」という混乱は減少します。
社内の経理ルールを明確にして、しっかりと経費の流れを管理することが重要です。