返金時の勘定科目や仕訳は? 返品やキャンセル処理と対応ポイントを解説
企業が行う事業活動において、商品の不具合やキャンセル、大量仕入による割引などの理由から、返金が発生するケースは数多くあります。
返金の理由や、返金前の会計処理の方法によって、その後の対応が異なるため、経理担当者は違いを理解しておきましょう。
この記事では、返金時の勘定科目や仕訳について、例をあげながら解説します。対応のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
売上代金を返金した場合の勘定科目と仕訳例
まずは、具体的なケースをあげて売上代金を返金した場合の勘定科目と仕訳例を紹介します。
- 販売商品の返品・キャンセル
- 誤った入金による返金
- 取引が無効となり返金
返金の理由によって勘定科目が異なるので注意しましょう。
販売商品の返品・キャンセル
販売した商品の返品・キャンセルによる返金の場合は、当初の売上を取り消すか、売上戻りの勘定科目で計上します。
例)販売した商品の一部に破損があり、商品代金5万円を返金することで取引先と合意した場合
借方 |
貸方 |
売上(売上戻り) 50,000 |
現金 50,000 |
誤った入金による返金
取引先が入金額を誤り、販売金額より多く入金された場合は、「仮受金」の勘定科目を使用して仕訳を行います。
例)5万円の商品を販売したが、取引先から誤って5万5,000円入金されたことがわかり、過入金分を返金した場合
借方 |
貸方 |
現金預金 55,000円 仮受金 5,000円 |
売上 50,000円 仮受金 5,000円 現金預金 5,000円 |
仮受金は、長期間そのままにしないよう注意しましょう。
返金を受けた場合の勘定科目・仕訳
ここでは、返金を受けた場合の勘定科目と仕訳例を見ていきましょう。
仕入商品の返品・キャンセル
仕入商品を、発注ミスや不良品などの理由で返品・キャンセルする場合は、仕入を取り消す仕訳を行います。売上代金を返金する場合と同様に、対応する勘定科目に対して、マイナス分を計上しましょう。
例)5万円の商品を掛仕入したあとに、その商品をすべて返品した場合
借方 |
貸方 |
仕入 50,000円 買掛金 50,000円 |
買掛金 50,000円 仕入 50,000円 |
取引金額が変更となり返金を受ける
一部の商品に不具合が見つかったなどの理由で取引金額が変更となり、返金を受けるケースがあります。その場合は、「仕入値引」の勘定科目を用います。
例)1万円分の商品が不具合により返品となり、返金を受けた場合
>借方 |
貸方 |
現金預金 10,000円 |
仕入値引 10,000円 |
仕入値引の代わりに「仕入」の勘定科目を用いることも可能です。
クレジットカード決済された仕入代金が返金
クレジットカード決済で商品を購入する場合は、実際に口座から代金が引き落とされるまでに1か月程度かかるのが通常です。
決済時は「買掛金」として処理し、口座から代金が引き落とされた時に買掛金を取り崩す流れになります。
そのため、クレジットカードで決済した直後に注文をキャンセルし、まだ口座から代金が引き落とされていない場合は、次のように仕訳を行います。
例)5万円の商品を購入した場合
借方 |
貸方 |
買掛金 50,000円 |
仕入 50,000円 |
商品売買以外での返金処理
商品売買以外での返金処理の方法についても、ケース別に解説します。
保険の解約による返金
保険商品を解約すると、それまでに支払った保険料の一部が「解約返戻金」として戻ってくることがあります。
保険料を経費として計上していた場合、解約返戻金は雑収入として処理するのが一般的です。保険料のすべてまたは一部が保険料積立金で、「保険積立金」として資産計上されている場合は、その分を取り崩す形で処理します。
例)500万円の解約返戻金があり、保険料を経費として計上していた場合
借方 |
貸方 |
現金預金 5,000,000円 |
雑収入 5,000,000円 |
例)500万円の解約返戻金があり、200万円の保険料を保険積立金として計上している場合
借方 |
貸方 |
現金預金 5,000,000円 |
保険積立金 2,000,000円 雑収入 3,000,000円 |
年末調整で従業員の所得税を返金
年末調整で企業が従業員の所得税を返金する場合は、12月もしくは1月の給与支払時に返金するケースが多くなります。
その場合は「預り金」の勘定科目を用いて、給与の仕訳とあわせて所得税を返金する仕訳を行います。
例)年末調整を行い、従業員に1万円の源泉所得税を返金した場合
借方 |
貸方 |
預り金 10,000円 |
現金預金 10,000円 |
返金に関する勘定科目・会計処理で覚えておきたいこと
ここでは、実務で迷うことが多い返金時のポイントを紹介します。
売上や仕入にかかる消費税の会計処理
返金をしたり、返金を受けたりした際の消費税の会計処理は、当初の売上時や仕入時と同じ消費税の勘定科目を用います。
ただし、「仮受金」は、入金があった時点では用途が不明であることから、課税対象かどうかも判断できません。
そのため、用途が確認できて、仮受金を正しい勘定科目に振り替えるまで課税処理は行わないよう注意します。
割戻の会計処理
割戻とは、取引量に応じて代金の一部が返金される商慣行のことで、「仕入割戻」と「売上割戻」があります。
仕入割戻とは、買主側が受ける割戻のことで、まとめて仕入を行うことで商品代金の一部が割り戻された際に用います。
一方で、売主側は売上金額の一部を買主に戻すことになるため「売上割戻」の勘定科目を用いましょう。
また、割戻の会計処理には、費用と収益を総額で計上する「総額主義」と、相殺して計上する「純額主義」があります。
損益計算書上は総額主義が原則とされていますが、すべての取引において総額主義を採用すると実務負担が増えることから、純額主義での計上が例外的に認められています。
返金勘定科目についてのまとめ
返金や返品が発生した場合、取引を取り消すための仕訳が必要です。仕訳をする際は売上側の事項なのか仕入側の事項なのかを把握することが重要です。
返品やキャンセルに伴う返金は基本的な取引であるため、取引時の仕訳を基に、適切な仕訳方法を理解し適用することが望ましいでしょう。
返品やキャンセルに伴う返金はごく一般的にある取引で、その都度、会計処理も発生します。
本記事を参考に、返金の理由や、売手側・買手側の違いによる適切な処理の方法を把握しておきましょう。