流動比率から何がわかる? 計算方法・目安・業種別平均をわかりやすく解説
流動比率とは、会社の経営助教を図る際の指標のひとつです。流動資産を流動負債で割った数値を指し、短期的な安全性を判断する際に用いられます。
本記事では、流動比率について、概要や計算方法、改善方法、ほかの指標との比較など、さまざまな角度から解説していきます。
流動比率とは
流動比率とは、その企業の短期的な安全性を判断する際に用いられる指標です。流動資産の値を、流動負債の値で割って求めます。
流動資産とは、1年以内の現金化が見込まれる資産で、具体的には現金預金、売掛金、受取手形、棚卸資産などがあります。
流動負債とは、1年以内の返済が予定されている負債で、具体的には買掛金、支払手形、未払金、短期借入金などが該当します。
計算方法
流動比率の計算方法は以下のとおりです。
流動資産÷流動負債=流動比率
たとえば、流動資産が1500万円、流動負債が600万円のとき、流動比率は125%となります。
(1000万÷800万=1.25%)
数値から何がわかる?
流動資産から分かるのは、その企業が1年以内に資金ショートするリスクの大きさです。
資金ショートとは、資金不足によって必要な支払いができない状態を指します。これは企業の倒産も危ぶまれる深刻な事態です。
流動比率がある程度高い水準にあれば、その企業が1年以内に危機的状況に陥るリスクは低いと見ることが出来ます。
流動比率の目安
一般的に、流動比率の望ましい値は200%だとされています。
流動比率を確認する際のポイントのひとつが、100%を上回っているかどうかです。100%を下回る流動比率は、1年以内に現金化できる金額が、1年以内に返済しなければいけない金額よりも少ないことを示します。
つまり、1年以内に資金ショートする可能性が高いということです。
100%を超えていれば安心というわけでもありません。100%ぎりぎりでは、何らかの理由で流動資産の換金が遅れたり、想定していた金額で換金できなかったりした場合に、支払が滞ってしまうためです。
よって流動比率は、ある程度余裕がある状態が望ましく、200%がひとつの目安とされています。
【業種別】流動比率
流動比率は業種ごとに傾向が大きく異なります。
経済産業省が調査・公表している令和3年中小企業実態基本調査によると、令和2年度時点の中小企業において、流動比率の平均値が最も大きい業種は情報通信業(245.5%)でした。
一方で、最も低い業種は宿泊/飲食サービス業(154.9%)で、両者のあいだには約90%もの隔たりがありました。
下表は、中小企業における令和2年度の流動比率を、業種別に比較したものです。
業種 |
中小企業の平均流動比率 |
---|---|
情報通信業 |
245.5% |
建設業 |
200.1% |
製造業 |
198.7% |
学術研究/専門・技術サービス業 |
189.2% |
サービス業(他に分類されないもの) |
183.0% |
運輸//郵便業 |
180.5% |
不動産/物品賃貸業 |
176.9% |
卸売業 |
172.9% |
生活関連サービス/娯楽業 |
172.0% |
小売業 |
160.7% |
宿泊・飲食サービス業 |
154.9% |
流動比率を分析するときの注意点
流動比率が高ければ、必ずしもその企業が安心というわけではありません。
ここでは、流動比率を基に企業の安全性を確認するにあたり、注意が必要な事柄を幾つか紹介します。
支払いに当てられない流動資産もある
流動資産の中には思惑通りに現金化できるとは限らないものがあります。
流動比率が100%を超えていても、支払期限までに現金化できなかったり、想定よりも低い価格で現金化することを余儀なくされた場合、負債の返済が難しくなるでしょう。
たとえば、商品の在庫は買い手がつかなければ現金になりません。受取手形や売掛金は債務者の倒産によって回収できなくなることがあります。
有価証券は価値が大きく変わる可能性があります。しばしば見受けられるのは、資産が担保に入っていたりして換金できない場合(たとえば拘束預金等)です。
無借金が最善とは限らない
流動比率が高くても、健全な経営状態とはいえないケースもあります。
たとえば、信用が低いために融資を受けられない場合は、負債がないため流動比率が高くなりますが、必要な投資を行うこともできないため、競合との争いに勝つことは難しいでしょう。無借金にこだわるあまり、かえって収益性を圧迫することがあります。
例えば、WACCを考えた場合、自己資本には支払金利は見かけ上かかってはいませんが、計算上会社が負担したことになり、好ましくありません。
流動比率を改善する方法は2種類
流動比率を改善するためのアプローチとしては次の2通りがあります。
- 流動資産の増加
- 流動負債の減少
それぞれ見ていきましょう。
流動資産の増加
流動資産、つまり支払いに充てられる額を増やすことで、流動比率の改善を図ることが可能です。流動資産の増やし方として最も理想的な形は、事業での利益を増やすことでしょう。
しかし、流動比率が危険な水準にある状況から、突然大きな利益をあげるのは難しいことがほとんどです。
現実的な手段としては、固定資産の売却などがあります。固定資産を売って得た金額は流動資産になり、返済に充てることが可能です。
流動負債の減少
流動負債、つまり支払わなければならない額を減らすことでも、流動比率の改善を図ることができます。
こちらもやはり、事業で大きく利益を出して負債を返済できれば理想ですが、流動比率が危険水域に入るほど追い詰められている状況では難しいでしょう。
その他には、返済期限が1年以内の短期借入金を、1年以上の長期借入金に借り換えする方法があります。
長期借入金は流動負債ではなく固定負債に分類されるため、流動負債を減らし、流動比率を良化させることができます。また、期間は伸びるものの毎月の返済額は少なくなりますから、安定した返済が可能になるでしょう。
そのほかに、借入金の資本金への振り替え等(DES)によっても良化することはできます。
流動比率以外にもある指標
流動比率以外にも、自社の財政状況を把握するための指標がいくつかあります。それぞれ解説していきます。
当座比率
当座比率は、当座資産の値を、流動負債の値で割って求めます。
当座資産とは、流動資産の中でも比較的現金化しやすいものを指し、現金預金や有価証券、売掛金、受取手形などが該当します。
たとえ流動比率が高水準であっても、当座比率が低い場合、確実に返済に充てられる資産はそれほど多くなく、リスクの高い状態にあるかもしれません。
自己資本比率
自己資本比率は、資産全体における自己資本の比率を示す値です。自己資本とは貸借対照表における純資産のことです。
資産には負債と純資産があり、負債は人から借りたお金、純資産は返済の必要がない自分のお金のことを指します。
自己資本率が高い状態は、人から借りたお金が少なく、自分のお金が多いことを表しています。当然、自己資本率が高いほうが安全な状態といえます。
固定比率
固定費率は、自己資本に対する固定資産の割合を示す値です。長期に渡って使用する固定資産は、返済する必要のない自己資本で購入することが望ましいとされています。
固定費率が100%を超える場合、流動資産の一部を固定資産の購入比に充てる必要が出てくるため、経営に悪影響を及ぼしやすいです。
流動比率が短期的な安全性を表しているのに対し、固定比率は長期的な安全性を示す指標です。
流動比率についてのまとめ
流動比率について解説しました。流動比率は、流動資産を流動負債で割って求める値で、その企業の短期的な安全性を示す数値です。
ただし、流動比率が高い水準でも、支払期限までに現金化することが難しかったり、想定よりも低い金額で現金化することを余儀なくされたりして、安心できない場合も存在しています。
流動比率を用いて企業の安全性を判断する際には、当座比率や自己負担比率など、他の指標と併せてチェックすると良いでしょう。
【関連記事はこちら】