電子帳簿保存法の改正により申請は不要に!?
国税関連の帳簿書類については、原則として紙による保存が要求されていましたが、電子帳簿保存法によりその必要もなくなりつつあります。
電子帳簿保存法ができた当初は、電子保存するためにシステム上で帳簿書類を作成したり、税務署とやり取りしたりといった作業が増えていましたが、電子帳簿保存法の改正によって、保存するための要件が緩和されました。
現在の電子帳簿保存法において、帳簿書類を電子化したい場合はどのように始めれば良いのでしょうか?
この記事では、帳簿書類を電子化する方法について詳しく解説します。
改正により電子帳簿保存法の申請は不要に
電子帳簿保存法の改正により、事前の申請は不要になりました。
以前は、税務署長に対して、一定の添付書類を付けた承認申請書を電子保存を開始する3か月前までに提出する必要がありました。
令和4年1月1日時点ですでに税務署長の承認を受けている帳簿書類については、以後に作成する帳簿書類についても、承認制度における取り扱いが継続します。
帳簿についてすでに承認を受けている法人などは、新たに届出書を提出することで、過少申告加算税が5%軽減となる優良電子帳簿の規定の適用を受けることができます。
承認を取りやめる場合は、税務署長へ承認取りやめの届出書を提出する必要があります。
ただし、改正後の新しい要件を満たして引き続き電子保存する場合には、一定の対応をすることを前提に、届出書の提出は不要となります。
電子帳簿保存法適用までの流れ
電子帳簿保存法に従って電子データで保存する場合、様々な要件を満たす必要があります。
ここでは、実際に電子帳簿保存法を適用するまでの流れを紹介します。
電子保存するための要件を確認する
ここでは、電子保存するための要件について、以下の3パターンを解説します。
- 帳簿
- 紙の書類をスキャナ保存する場合
- 電子取引
〈帳簿〉
帳簿を電子保存するには、一般電子帳簿と優良電子帳簿があります。
一般電子帳簿とは正規の簿記の原則に従って記録し、初めから一貫してコンピューターを使用して作成しているもので、以下の要件を満たしたものをいいます。
- 関係書類等の備付け:帳簿の電子保存に併せて、システムのマニュアル等の備え付けを行うこと。
- 見読可能性の確保:電子帳簿について、ディスプレイやプリンタ等を備え付け画面や書面で確認、出力できること。
- 税務調査への対応:税務調査時に調査官等から電子帳簿の閲覧等の要求に応じられること。
また、優良電子帳簿として認められるには、一般電子帳簿の要件に加え、以下の要件を満たす必要があります。
- 訂正・削除履歴の確保:帳簿に係るコンピューター処理に、一定の要件を満たすシステムを使用すること
- 相互関連性の確保:電子帳簿と他の帳簿との間に相互にその関連性を確認できるようにしておくこと
- 検索機能の確保:電子帳簿について一定の要件で検索できること
なお、優良電子帳簿として保存できていれば、過少申告加算税の軽減措置の適用を受けることができます。
また、法人がはじめから一貫してコンピューターを使用して作成した書類については、一般電子帳簿と同じ要件で電子データとして保存することができます。
〈紙の書類をスキャナ保存する場合〉
法律により保存をしなければいけない書類のうち、上記以外の書類がスキャナ保存の対象となります。スキャナ保存の要件は、以下の通りです。
- 入力期間の制限:紙の書類を受領したら速やかにスキャンし、記録を残すこと
- 一定水準以上の解像度及びカラーでの読み取り:200dpi相当以上の解像度で、24ビットカラーであること
- タイムスタンプの付与:データがその時刻に存在し、その後改ざんされていないと証明できる記録を残すこと
- 読み取り情報の保存:読み取った際の解像度、階調等の情報を保存すること
- ヴァージョンの管理:訂正または削除を行った場合その内容を確認できるシステムであること
- 入力者等情報の確認:データ入力を行うもの及び管理するものの情報を確認できるようにしておくこと
- 帳簿との相互関連性の確保:他の電子データとの間に相互にその関連性を確認できるようにしておくこと
- 見読可能装置の備付け等:電子データを紙または映像等で確認できるようにしておくこと
- 電子計算機処理システムの概要書等の備付け:システムの概要書等一定の書類を備え付けておくこと
- 検索機能の確保:電子データについて、一定の条件で検索できること
〈電子取引〉
電子取引とは「取引情報(取引に関して受領または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)の授受を電磁的方式により行う取引」と定義され、取引情報が電子データによって行われるすべての取引が電子取引に該当します。
電子取引は電子帳簿保存法で電子保存が義務付けられ、紙及びマイクロフィルムによる保存は認められなくなりました。
電子取引を電子保存する要件は、以下の通りです。
- 改ざん防止のための措置:タイムスタンプの付与や履歴が残るシステムでの授受・保存といった措置
- 検索機能の確保:一定の方法で検索することが可能であること
- 見読可能性の確保:ディスプレイやプリンタ等を備え付けること
業務フローを作成する
従来の紙ベースでの保存とは違い、電子データで保存する場合は業務フローの変更が必要です。
例えば、経費申請などを電子データとして行う場合は、申請方法が変更となったことによるデータの保存方法や、システムの操作方法などのルールを作成しなければなりません。
また、データ改ざんや外部への漏えいなどを防止するための仕組み作りも重要です。
電子保存システムの導入
書類を電子化する際には、専用のシステムを導入すると簡単に電子帳簿保存法に対応することができます。
適切なシステムの選定と導入を行うことで、帳簿書類を電子保存するメリットを享受できます。
電子帳簿保存法を活用しよう!
電子帳簿保存法により、各種書類などを電子データ化することで、様々なメリットを受けることができます。
今回紹介した方法を参考に、改正された電子帳簿保存法に対応していきましょう。