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資産管理における内部統制の進め方 固定資産管理のワークフロー

資産管理における内部統制の進め方 固定資産管理のワークフロー

業務が正しく行われ、不祥事を防ぐ管理体制を構築していくためには、固定資産をいかに有効・効率的に使用するかが大きな鍵となります。

固定資産管理のワークフローの中における、ルール作りと管理体制について確認していきましょう。


この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

固定資産管理のワークフロー

さまざまな企業不祥事により、会社法や金融商品取引法において、内部統制システムの構築が義務化されたのはご承知のことと思います。

その背景と義務化された内容(内部統制の四つの目的、六つの基本的要素)についてはここで詳しく記しませんが、内部統制を総務的に表現すれば、業務が正しく行われるルール作りと、不祥事を防ぐ管理体制の構築といえるでしょう。

そして、企業にとって限られた資金や資産をいかに有効・効率的に使用するかは大変重要であり、中でも固定資産は金額的にも多額でその使用期間も長期にわたるので、購入時期や処分時期、維持管理を誤ると、大きな損害となってしまいます。

企業にとって固定資産を維持管理することは大変重要であり、そのために明確な規程を整備し運用する必要があります。

今回は、固定資産管理のワークフローの中における、ルール作りと管理体制についてみていきます。資産管理における内部統制のポイントは以下の通りです。

  • 固定資産の購入、管理、処分の際の権限や手続きに関する規程を設ける。
  • 固定資産の購買の際、購入先は二社以上から見積もりをとる。
  • 登記等の法的手続きが必要な場合の適正な手続き方法を設ける。
  • 発注したものと入荷したものが一致しているか確認する。
  • 購入申請や管理台帳、資産処分の申請について、申請漏れや帳票等への転記ミスがないように、複数回のチェック体制を設ける。
  • 固定資産を新たに購入した場合は、資産管理番号を印刷したシールを貼る。
  • 固定資産台帳と原価償却費を管理する会計データとの整合性を保つ。<
  • 固定資産の現物実査を毎年行う。
  • 固定資産の除却手続きを定める。

以下、詳しくみていくことにします。


固定資産管理の二つの側面

固定資産管理には、二つの側面があります。経理的側面と、固定資産そのものである現物の管理です。

経理的側面は、減価償却、減損会計の検討、固定資産税の申告といった税務・会計上の業務が中心となりますので、一般的に経理部門の業務となります。

ただ、中長期経営計画に基づく予算策定においては、固定資産管理を管轄する総務部が主導的に情報提供をすることが望ましいといえます。

もう一つの現物管理が、固定資産管理での総務部の主な業務となります。

大まかにいうと、固定資産の購入、現物の管理、現物の処分です。そのフローにおける業務がルール通りに行われ、現物の状態と固定資産台帳の情報が合致していることがポイントです。

固定資産管理では、総務部による資産を管理する役割と、現場での資産を使用する立場での役割があります。

総務部の役割は、みなさんがすでに日常行っている、以下の業務があります。

  • 固定資産の取得や移動、貸与、処分に関するルール作り
  • 上記ルールにおける窓口業務と許可、手続き業務
  • 固定資産の存在状況と使用状況の把握
  • 固定資産台帳の整備
  • 固定資産の棚卸しの統括

一方、固定資産を実際に使用する部署での役割は、以下のものがあります。

  • 固定資産の購入申請
  • 現物の適切な管理
  • 現物の移動等の申請
  • 現物実査、管理部署への報告

使用部署での役割は定められていても、以下のような課題が存在するのが実態でしょう。

  • 適切な手続きがとられないまま、勝手に購入される場合がある。
  • 稟議議制度はあるものの、稟議内容が不十分である。
  • 固定資産が申請のないままに、移設、貸与、廃棄されている。
  • 結果として、固定資産台帳との整合性がとれない場合がある。
  • 修繕の必要があるにもかかわらず、そのままの状態になっている。

以下、上記の課題が生じないような管理体制の構築方法についてみていきましょう。


固定資産の購入申請

固定資産に関する業務フローごとにみていくことにしましょう。

まずは資産の購入申請フェーズです。

固定資産の購入は、まずは資産を使用する部門の担当者が購入申請書に記入し、部門決裁を経て、総務部門等の決裁窓口に提出することから始まります。

そして購入金額に応じた決裁者が申請の内容を検討し、承認することで購入することが許可されます。通常、購入申請書(稟議書)は総務部管轄のもと、指定のフォーマットにより申請、許可され、それ以外の方法で購入することは許可されません。

購入申請書には、取得理由や金額、購入先、購入によって期待される効果などが記入され、それを元に総務部や決裁者により決裁が検討されます。また、金額の多寡により最終決裁者が異なることが多いようです。

提出された購入申請書は、主に次の観点から、購入が必要かどうか検討されます。

  • 購入の理由とそれを担保する資産の性能があるかどうか
  • 購入により期待される効果の見込みはあるのか

次に、購入金額の妥当性の確認です。次の点を確認します。

  • 二社以上からの見積もりが添付されているかどうか
  • 見積もりを取った購入先の選定理由

また往々にして、イニシャルコストは記すものの、ランニングコストや除却・処分費用を明記していない場合もあります。

ランニングコストとは、その資産を利用するのに必要な消耗品や付属品のコストです。利用形態や使用頻度を確認し、ランニングコストが記されていない場合は再度提出させる必要があります。

総務部としては、その資産を購入する場合の費用だけでなく、利用し続けていく際に発生する費用についても年度ごとに明記させるようにしましょう。さらに除却・処分費用もすべて含む予算計画が必要です。

定められた申請書により、正式な決裁が下った際には、許可を受けた購入申請書のコピーを申請部署に戻し、総務部もしくは申請部署にて購入手続きを行います。

ちなみに、固定資産はもとより、備品等の物品を購入する段階の内部統制における注意事項は以下の通りです。

  • 過剰在庫とならないよう、適切な利用計画、消費計画を立てる。
  • 購入の際には、二社以上の取引先から見積もりをとる。
  • 年間契約等、有利な購入方法を検討する。
  • 新規取引先から購入する場合は、財務状況等の企業の健全性の確認を行い、売買契約を締結する。
  • 不正(個人使用やキックバック等)防止のため、発注担当者を定期的に変更する。
  • 仕入れ先については、定期的に確認する。
  • 入荷業務の際、検収担当者は入荷品と発注品が一致しているかを確認する。

BCPの観点からも、購買業務においては信頼性のある取引先を確保することが重要です。

品質の良い商品を、適正な価格・数量・納期で、安定的・継続的に提供できる取引先をみつけることが大切です。

そのために、その企業の事業内容・沿革・経営状態・資金繰り状況などを、調査し検討しておくことが必要です。具体的には、財務諸表の入手、信用調査機関の利用、すでに取引のある企業からの評判なとから情報を得ます。

次回に続く

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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