残存簿価とは? 残存価額・減価償却との違いや計算方法を解説
本記事では減価償却における残存簿価について、具体例を交えながら解説していきます。
似た用語との違いや、残存簿価を考慮した減価償却の計算方法などについても触れていきます。
残存簿価とは?
残存簿価とは、固定資産の減価償却に関連する概念の一つで、耐用年数が経過した後の固定資産に、1円の資産価値が残るという考え方です。
たとえば、耐用年数が5年の業務用コピー機を50万円で購入した場合、5年間かけて10万円ずつ経費計上していくため、1年後には40万円、2年後には30万円と、コピー機の資産価値は徐々に減っていきます。
しかし5年が経過しても、コピー機が資産として存在しなくなるわけではありません。この時、コピー機に1円の資産価値があるとすることが、残存簿価の考え方になります。
そもそも減価償却とは?
建物、機械装置、器具備品など、一般的に時の経過等によってその価値が減っていく資産のことを減価償却資産といいます。
減価償却とは、この減価償却資産の取得に要した金額を、その資産の耐用年数に応じて、各年分の必要経費として配分していく手続きです。
後述しますが、減価償却を計算するには、定額法と定率法の2種類の方法があります。
参考:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
残存簿価と残存価額との違い
残存価額とは、平成19年まで採用されていた、資産が減価償却限度額を迎えた時の処分価格のことです。
平成19年の税制改正によって、残存価額および償却可能限度額という概念が廃止され、減価償却資産は耐用年数にわたって、残存簿価(備忘価額)1円まで償却できるようになりました。
平成18年以前の制度では、残存価額が取得金額の10%に設定されており、償却可能限度額(取得価額の95%)までしか、減価償却することができませんでした。
この、取得価額の95%までしか減価償却できないことが、企業の新規の設備投資の抑制となっているといわれており、この点が税制改正につながったのです。
また、税制改正によって、償却可能限度額(取得価額の95%)までに償却されていたものについても、備忘価額1円を残して、5年で均等償却することが可能になりました。
参考:国税庁「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」
残存簿価を考慮した減価償却の計算方法
ここでは、残存簿価を考慮して減価償却を計算する方法を解説していきます。減価償却の計算は、定額法と定率法の2種類があるので、それぞれについて見ていきましょう。
定額法での計算方法
定額法の計算方法は、対象となる減価償却資産を平成19年4月1日以降に取得した場合と、それ以前に取得した場合で、計算方法が異なります。
〈平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産の場合〉
償却限度額=取得価額×定額法の償却率
定額法の償却率については、財務省令の耐用年数省令別表第八に規定されています。なお、耐用年数が経過した後は、残存簿価(1円)を残す必要があります。
〈平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産の場合〉
この場合、旧定額法という算定式により償却額を計算します。
償却限度額=(取得価額ー残存価額)×旧定額法償却率
耐用年数に達した際には、残存簿額(購入時の5%にあたる金額)が残りますが、その翌年には残存簿額(1円)まで減価償却することができます。
定率法での計算方法
定率法を用いて減価償却を計算する場合も、対象となる減価償却資産を取得した時期によって計算方法が異なります。
- 平成19年4月1日以降かつ、平成24年3月31日以前に取得した減価償却資産:250%定率法
- 平成24年4月1日以降に取得した減価償却資産:200%定率法
250%定率法も200%定率法も、どちらも同じ算定式になります。
- (算定1)償却限度額=(取得価額-既償却額)×定率法の償却率
- (算定2)調整前償却額が償却保証額に満たない場合の償却限度額=改定取得価額(=期首帳簿価額)×改定償却率
参考:国税庁「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」
※債務保証額とは、取得価額に保証率を乗じた金額です。償却率、改定償却率、保証率の3つは、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第九及び第十」に耐用年数ごとに規定されています。
最後に備忘価額(1円)を帳簿価額として残します。
また、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、以下の旧定率法の算定式により償却額を計算します。
(取得価額-既償却額)×旧定率法償却率
残存簿価についてのまとめ
減価償却における残存簿価について解説しました。経理の業務をしたことがなかった方には、聞きなれない言葉も多かったのではないでしょうか。
しかし、そのほかの用語との違いを知ったり、計算方法を知ったりすることで、適切な処理を行えるようになるでしょう。