第8回:所得控除の種類とそのやり方3(社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除)
所得控除がテーマの確定申告のコラムですが、ここでは社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除について解説します。
さっそく、控除対象となる社会保険料の範囲や小規模企業共済等掛金の掛金などを、図を用いて詳しく説明していきましょう。
社会保険料控除とは
納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。これを社会保険料控除といいます。
控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。
社会保険料の範囲
社会保険料控除の対象となる社会保険料の例は、次の通りです。
- 健康保険、国民年金、厚生年金保険及び船員保険の保険料で被保険者として負担するもの
- 国民健康保険の保険料又は国民健康保険税
- 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料
- 介護保険法の規定による介護保険料
- 雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
- 国民年金基金の加入員として負担する掛金 等
確定申告書への添付
社会保険料控除のうち、国民年金保険料及び国民年金基金の掛金について所得控除を受ける場合には、「社会保険料控除証明書」等の添付又は提示が必要です。
なお、年末調整でこれらの控除を受けた場合には、源泉徴収票にその記載がありますので、確定申告では必要ありません。
引用・参考:国税庁「社会保険料控除」
添付書類の例
国民年金保険料
(3)に金額の記載がある場合はその金額を、(1)にのみ金額の記載がある場合はその金額を、それぞれ社会保険料控除の金額として記載します。
引用・参考:日本年金機構「社会保険料控除証明書の見方」
国民年金基金
この場合は、12月までに払い込まれる予定金額の、158,800円を社会保険料控除金額とします。
引用・参考:日本年金基金連合会「社会保険料控除証明書について」
小規模企業共済等掛金控除とは
納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合には、その支払った金額について所得控除が受けられます。これを小規模企業共済等掛金控除といいます。
なお、控除できる金額は、その支払った掛金全額です。ただし、前納減額金がある場合は、その金額を引きます。
小規模企業共済等掛金控除の対象掛金
- ① 小規模企業共済法の規定によって中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金(小規模企業共済)
- ② 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金(iDeCo)
- ③ 地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金
代表的なのは、①の小規模企業共済と、②のiDeCoです。
引用・参考:国税庁「小規模企業共済等掛金控除」
小規模企業共済とは
小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。
月々の掛金は、1,000円~70,000円まで500円単位で設定可能で、加入後も増減できます。
退職や廃業時に受取可能となり、満期等はありません。受取時には、「一括」と「分割」を選択でき、一括受取の場合は退職所得、分割受取の場合は公的年金等の雑所得として扱われます。
小規模企業共済の貸付け
退職や廃業等のみ受取可能ですが、掛金の金額を限度として、貸付を受けることは可能です。利率や返済期間などの条件は、どの貸付制度を利用するかによって異なります。
掛金支払時に所得控除を受けることができ、もしものことがあったときは、貸付を受けることができますので、使い方によってはメリットを感じることができる制度といえると思います。
引用・参考:中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」
iDeCoとは
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことです。加入は任意で、掛金や運用方法を自分で決めます。
掛金は1年に1回だけ変更可能です。また、掛金を止めることはいつでもできます。
拠出した掛金は、原則60歳にならないと引き出せない資産になります。この点は特に注意が必要と思われます。無理のない資金計画を立てて、拠出金額を決めましょう。
iDeCoの途中引き出し
iDeCoは原則60歳まで拠出した金額を引き出すことはできません。ただし、以下の要件をすべて満たす場合には、脱退一時金を受給することができます。
- 60歳未満であること
- 企業型確定拠出年金加入者でないこと
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できない者であること(国民年金保険料免除者や外国籍の海外居住者など)
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
- 確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
- 通算拠出期間が5年以下、又は個人別管理資産の額が25万円以下であること
- 最後に企業型確定拠出年金又は個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者の資格を喪失した日から2年以内であること
引用・参考:国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」
確定申告書への添付書類
小規模企業共済掛金等控除に関しては、支払掛金額の証明書の添付又は提示が必要です。
なお、年末調整でこれらの控除を受けた場合には必要ありません。
添付書類の例
小規模企業共済掛金払込証明書
上記の場合、年間払込金額である840,000円を小規模企業共済掛金等控除額とします。
引用・参考:中小企業基盤整備機構「「小規模企業共済掛金払込証明書」について」