貸借対照表とは? 分析方法や作成方法、注意点を解説
企業の財務状態は、経営状況を判断するうえで重要な指標です。
企業の財務に関する「決算書」と呼ばれる書類には、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」がありますが、貸借対照表は企業の決算時における資産や負債の内容を一覧にしたもので、財務状態が一目瞭然です。
この記事では、貸借対照表の基礎知識から分析・作成方法、注意点を初心者の方に向けてわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
貸借対照表とは
貸借対照表とは企業の決算時における資産や負債の内容を表したもので、財政状態を一覧で見ることができます。
同じ財務三表である「損益計算書」や「キャッシュフロー計算書」は、それぞれ「一定期間の企業の収入と支出」と「一定期間の現金の動き」を表したものであることから、事業の損益やお金の出入りに関する情報しか把握できません。
企業の正確な財政状態を把握するには、保有している土地・建物の時価や借入の残高などが記載されている貸借対照表を見る必要があります。
貸借対照表の基本的な見方
貸借対照表は、左が「資産の部」、右上が「負債の部」、右下が「純資産の部」で構成されています。
右側には資金をどのように調達したのかを記載し、左側には調達した資金の使い道を記載します。
例えば、銀行から500万円を長期で借り入れ、400万で土地を購入し、残り100万を預金に置いたとします。この場合は、右側に「長期借入金:500万円」、左側に「預金:100万・土地:400万」と、それぞれ記載します。
左側と右側の合計額は必ず同じになるのが特徴です。
貸借対照表の分析方法
貸借対照表は、どのように分析するのでしょうか。ここでは、具体的な方法を解説します。
1. 流動資産・流動負債
流動資産とは、通常の営業活動から生じる資産のうち1年以内に現金化が可能及び現金として利用できるものを指します。
流動資産の例:
- 現金・預金
- 受取手形
- 売掛金
一方、流動負債とは1年以内に支払う予定のあるお金・債務のことを指します。
流動負債の例:
- 支払手形
- 買掛金
- 短期借入金
2. 流動比率・当座比率
流動比率とは、流動負債に対してどのくらい流動資産があるのかを示す指標です。
言い換えると、短期で返済しなければならないお金に対して、流動資産でどのくらい返済することができるのかという能力を測る指標でもあります。
一方、当座比率とは、流動負債に対してどのくらい当座資産があるのかを示す指標です。
流動比率と基本的な考え方は一緒ですが、当座資産には棚卸資産などを含めることができないため、流動比率よりも厳しく返済能力をチェックできる指標といえます。
3. 自己資本比率
自己資本比率とは、総資本のうち自己資本がどのくらいの割合を占めているかを示す指標です。
自己資本比率は企業の安定性を見るための指標であり、自己資本比率が低い企業は、借入金などの「他人資本」が多くを占めているということになるため、安全性が低いといえます。
4. 負債比率
負債比率とは、自己資本に対して他人資本(負債)の割合がどのくらいを占めているのかを測る指標です。
自己資本比率と逆の意味で使われます。
5. 自己資本利益率
自己資本利益率は別名、「株主資本利益率」ともいわれており、その株式に投資したらどれくらい効率良く利益を得られるかを示した、収益性の指標を指します。
貸借対照表の作成方法
ここでは、貸借対照表の作成方法を解説します。
実際には、かなり多くの勘定科目が出てくるため複雑な構造になりますが、順を追って1〜3の処理を行えば確実に貸借対照表を作成できるようになります。
1. 日々の取引の仕訳を実施する
商品の売上や仕入れといった日々の取引の仕訳作業は、経理業務の基本です。
貸借対照表の作成に必要な作業は基本的に仕訳作業と同じで、規模が1日単位なのか、それとも事業全体なのかの違いになります。
2. 総勘定元帳に転記する
総勘定元帳とは、仕訳をした取引を勘定科目ごとに記録する帳簿のことです。
取引要素ごとに仕訳を行い、総勘定元帳を作成します。
3. 勘定科目ごとに残高を試算表に転記する
総勘定元帳の作成が完了したら、勘定科目ごとの合計額を試算表に転記します。
4. 貸借対照表を作成する
最後に減価償却などの決算処理を考慮して試算表の数字を集計すると、貸借対照表が完成します。
覚えておきたい貸借対照表のチェックポイント
貸借対照表を見るときは、次のポイントを押さえましょう。
1. 自己資本が十分にあるかどうか
企業の資本には、「自己資本」と「他人資本」があります。
自己資本は自社のお金なので返済義務はありませんが、他人資本は借入金など他人の資産であることから、返済義務が生じます。
自己資本率が高い企業の方が安全性も高いため、貸借対照表を見る際には必ずチェックしておきましょう。
2. 仮払金や仮受金などの項目はないか
仮払金や仮受金は読んで字の通り、「仮に計上しておくもの」です。
一旦支払いを行い、あとで回収するものや、一旦受け取っておいて、あとで支払うものを指します。
これらは通常、期末に精算することから、仮払金や仮受金が残っている場合には必ず中身をチェックしましょう。
3. 現金残高が実際の現金有高と合っているか
現金残高が実際の現金有高と合っていないという事態は、注意しないと十分に起こり得ます。
社長が会社の口座からお金を下ろして、一時的に個人の支払いに充てた場合を想定してみましょう。
この場合、帳簿上で何も処理をしないまま決算を迎えると、実際の現金有高との差が出てしまいます。
会社の運営上問題がなくても、対外的に見ると「この会社は現金管理もきちんとできていないのか」と信用性を疑われてしまうことがあります。
そのため、日々徹底した管理を行うことが大切です。
貸借対照表のまとめ
貸借対照表の基礎知識から分析・作成方法、注意点を初心者の方に向けてわかりやすく解説しました。
貸借対照表のベースとなるのは、商品の売上や仕入れといった日々の取引の仕訳作業です。
そのため、まずは仕訳作業を正確に行うことが大切です。
仕訳作業に慣れてきたら貸借対照表で見るべきポイントを理解し、実際に分析してみると貸借対照表への理解がさらに深まるでしょう。
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