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大切な人が亡くなったら何をすべきか? 【相続法改正に対応】はじめての相続手続き2

大切な人が亡くなったら何をすべきか? 【相続法改正に対応】はじめての相続手続き2

遺産相続を行う際、被相続人(故人)の資産を相続する者、いわゆる相続人は誰になるのかを確定する必要があります。

相続とは一言で言っても様々なケースがあるため、該当する民法に照らして相続する必要があります。

民法では、誰が、どの割合で相続すべきか、相続財産の持分を定義しています。

一方で、遺言書がある場合は遺言書が優先されますが、これに対しても民法では相続人に対して、一定の金額を受け取る権利が守られるように「遺留分制度」を設けています。

2019年に遺留分制度が改正されており、本文では改正内容の詳細を解説します。


この記事の著者
さかにし貴子行政書士事務所  行政書士 

1 相続人を確定しよう

(1)法定相続人とは

遺言書があった場合も、ない場合も、被相続人(故人)の相続人は誰になるのか確認し確定する必要があります。法律で定められている相続人を「法定相続人」といいます。

法定相続人は、第1順位から第3順位まであります。第1順位の相続人が誰もいなかったら第2順位、第2順位の相続人が誰もいなかったら第3順位の人が相続人となります。

被相続人の配偶者が生存している場合、配偶者は必ず相続人となります(民890条)。また、法定相続人を確認する場合は代襲相続人に注意が必要です。

〇配偶者が生存している場合の法定相続人

第1順位 配偶者+子
第2順位 配偶者+父・母
第3順位 配偶者+兄弟・姉妹

(2)代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)とは

例えば第1順位の子にあたる人が既に亡くなっている場合でも、その方に子(被相続人の孫にあたる人)がいれば、その孫が代襲相続人となります。孫が亡くなっていれば、ひ孫と続きます。子や孫、ひ孫など続く者がいない被相続人の場合は、第2順位の父・母が相続人となりますが、ご両親が既に亡くなっている場合は、代襲相続人は、もしご存命なら祖父母、曾祖父母など直系尊属になります。

しかし、片親のみ亡くなっている場合は、ご存命の方(父親が亡くなっていて母親が存命の場合は母親)が第2順位の相続人となります。

第3順位の兄弟・姉妹の代襲相続人に関しては、その子(被相続人の甥・姪)までが代襲相続人となり、甥・姪が既に亡くなっている場合、その子は代襲相続人にはならないことに注意しましょう。

代襲相続人にあたる人
第1順位 孫、ひ孫と直系卑属に続く
第2順位 父・母 祖父母など、直系尊属に続く
第3順位 兄弟・姉妹 兄弟・姉妹の子(甥・姪)のみ

(3)法定相続人の相続財産持分とは

民法では、法定相続人に対してそれぞれの相続財産の持分が決められています(民900条)。

しかしこれは遺言書の内容が優先しますので、遺言書においてこの持分通りではない財産分与がされる場合もあるでしょう。また相続人全員で、各々の財産分与分を決めることもできます。

①配偶者がいる場合 法定相続分
配偶者のみ(他に誰もいない) 全部
第1順位 配偶者 2分の1
2分の1を均等に分割
第2順位 配偶者 3分の2
父・母 3分の1を均等に分割
第3順位 配偶者 4分の3
兄弟・姉妹 4分の1を均等に分割
②配偶者がいない場合 法定相続分
第1順位 全部を均等に分割
第2順位 父・母 全部を均等に分割
第3順位 兄弟・姉妹 全部を均等に分割

(4)遺留分に注意

遺言書は被相続人の最後の意思表示なので、その内容の通りに実現できるのが一番なのですが、その内容によっては、相続人であるのに全く財産を貰えない人が出てくる可能性があります。民法では相続人に対して、一定の金額を受け取る権利が守られるように「遺留分」制度を設けています。遺留分を無視した遺言書は無効ではないのですが、相続人より遺留分の請求があった場合、他の相続人はこれを無視することはできません。この相続人が遺留分を請求できる権利のことを「遺留分侵害額請求権」といいます。

遺留分がどれくらいなのかについては、相続人の順位によってその相続財産に占める割合が変わります。

遺留分を請求できる人は「配偶者」「子など第1順位の相続人」「父・母など第2順位の相続人」になります。第3順位の相続人である兄弟姉妹(またはその代襲相続人)には遺留分がないことに注意しましょう(民1042条)。

〇各相続人の遺留分

①配偶者がいる場合 法定相続分 遺留分割合
配偶者のみ(他に誰もいない) 全部 2分の1
第1順位 配偶者 2分の1 4分の1
2分の1を均等に分割 4分の1
第2順位 配偶者 3分の2 3分の1
父・母 3分の1を均等に分割 6分の1
第3順位 配偶者 4分の3 配偶者のみ2分の1
兄弟・姉妹 4分の1を人数で分割 なし
②配偶者がいない場合 法定相続分 遺留分割合
第1順位 全部を均等に分割 2分の1
第2順位 父・母 全部を均等に分割 3分の1
第3順位 兄弟・姉妹 全部を均等に分割 なし

※兄弟・姉妹(代襲相続人)に遺留分はない。

例えば、被相続人の遺言書に「財産は長男に全部相続させる」とあった場合、配偶者の妻は全く財産をもらえないことになってしまいます。そこで、遺留分侵害額の請求をすることにより、相続財産の4分の1を確保することができるのです。

遺留分侵害額を請求できるのは、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間です。行使しない時は、時効によって権利が消滅します。相続開始の時から、10年を経過した時も同様に取り扱います(民1048条)。

(5)遺留分制度の見直し

遺留分制度は民法改正において見直しがされており、新しい制度が2019年7月1日に施行されています。主な改正点を2つご紹介します。

①遺留分侵害額に相当する金額の支払を請求できるようになった

法改正以前では、遺留分の権利者が遺言の受遺贈者に遺留分の侵害の請求を行うと、その相続財産は全て共有財産となってしまいました。例えば遺言書で長男に相続させたい会社なども、権利の行使によって共有財産になってしまうため、事業承継の支障となることが指摘されていました。

しかし、法改正によって、遺留分権利者が遺留分侵害額に相当する金額の支払を請求できるようになったため、請求された受遺贈者は、お金を支払うことによって解決することができるようになりました(民1046条)。

お金を直に準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることもできます。

この法改正により、従来は遺留分侵害額の請求を「遺留分減殺請求」といっていたのですが、「遺留分侵害額請求」という言葉が用いられることになりました。

②遺留分を算定するための財産の価額・生前贈与があった場合

相続財産とは、被相続人相続開始の時において持っていた財産の価額にその贈与した財産の価額を加えて、そこから債務全額を控除した額としています(民法1043条)。その贈与した財産の期間の取り決めの改正がありました。

以前は、旧法や判例によって、

  • 相続人以外の第三者に対する生前贈与については、相続開始1年前からの生前贈与の財産に限定して遺留分算定の基礎となる財産に含める。
  • 相続人に対する生前贈与については、期間の限定がなく、過去に行われた生前贈与を全て遺留分減殺請求の対象とする。

としていました。

しかしこれでは、相続人に対する生前贈与がどんなに大昔のものであっても対象となってしまいます。そのため、改正法では、相続人に対する生前贈与についても、相続開始10年前からの生前贈与に限定されることになりました(生前贈与の対象に関しては、婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価格に限るとなっています)。(民1044条)

ただし当事者双方において、他の相続人の遺留分に損害を加えることを知って行った生前贈与は、仮に相続開始前10年より前の生前贈与であっても、従来通り、遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。

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著者プロフィール

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阪西 貴子

さかにし貴子行政書士事務所 行政書士

平成24年5月神奈川県行政書士会登録。
相続・遺言・成年後見を専門業務とし、「あなたの不安を安心に変えるお手伝い」をモットーに活動中。特定行政書士・個人情報保護士。

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