相続開始後の手続きと流れをチェック!
相続が開始すると、それから10ヶ月までの間に遺産分割の協議を行い、必要な場合は相続税の申告が求められます。もちろん、それ以外にもさまざまな手続きが必要になります。手続きにはそれぞれ期限があることから、順番に漏れなく行うことが大切です。今回は相続における手続きと流れ、そして手続きの注意点についても合わせて解説します。
相続の手続きと流れ
相続の手続きについては、「死亡届の提出」から「相続税の申告」までのさまざまな手続きを、決められた期限内に行う必要があります。では、その一連の流れについて、以下に説明します。
死亡届の提出(死亡後7日以内)
死亡診断書の欄を医師に記入してもらった死亡届を、火埋葬許可申請書と合わせて死亡した地域もしくは本籍地の市区町村役場に提出します。そうすることで、死体埋葬火葬許可証をもらうことができます。この死体埋葬火葬許可証がないとお葬式をあげることができませんので、お葬式をあげる際には必ず入手し、葬儀業者に渡すようにしてください。
社会保険関連の手続き(死亡後14日以内)
死亡届を提出し、葬儀を行った後は、速やかに社会保険関連の手続きを行う必要があります。具体的な手続きとしては以下のものが挙げられます。
- 年金受給停止(死亡後10日以内)
- 未支給年金の請求
- 健康保険証の返却、介護保険資格喪失、住民票の抹消(死亡後14日以内)
住民票の抹消手続きにより、世帯主が変更となる場合は、その手続きも必要となりますのであわせて行うようにしてください。
遺言書の確認ほか(死亡後速やかに)
遺言書がある場合は、なるべく早くその内容を確認する必要があります。その際はその遺言書が有効なものであるかもあわせて確認するようにしてください。また、公的機関へ申請手続きを行った後には、金融機関への連絡や保険会社への連絡も合わせて行い、葬儀などに必要な費用の引き出しや保険金を受け取るための手続きを行いましょう。
遺言書が「公正証書遺言」ではない場合
遺言書が見つかりそれが「公正証書遺言」でない場合、その有効性それが本物かどうかを判断するために家庭裁判所に対して「検認の申し立て」を行う必要があります。検認の申し立てを行い、指定された日にちに相続人全員が家庭裁判所に集まり、そこで遺言書を開封することができます。それまでは遺言書については勝手に開封することはできず、もしも勝手に開封した場合は行政上の罰則の対象となりますので注意してください。
相続人の確定や遺産の調査
相続人の確定や遺産の調査も早めに始めておくとよいでしょう。相続人の確定の際には、亡くなった方の「生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本」を取り寄せて確認を行います。死亡した時点での戸籍謄本だけではないということをきちんと覚えておくとともに、本籍地が遠い場合においては郵送してもらうなどの手続きがあわせて必要となります。
また、相続人の中には放棄や限定承認を希望する人もいるでしょう。そのような場合には、3ヶ月以内に家庭裁判所に放棄もしくは限定承認を行う旨を申し出る必要があります。特に限定承認については、ほかの相続人全員の同意も必要となることから、早めに申し出て手続きを開始しておくようにしてください。
遺産の調査には、対象となる遺産によって調査方法が異なります。不動産であれば登記簿謄本や地積測量図など、金融資産であれば通帳や金融機関の残高証明などが必要となります。他に株式などの有価証券をお持ちであれば、証券会社からの通知書等で確認しましょう。保険金については、保険証券にて内容が把握できます。
遺産分割協議を行う
相続人の確定と遺産の調査が完了したら、遺産分割協議に入ります。遺言書の内容に不服がある相続人は、遺言書の無効を訴えたり、遺留分侵害額請求をしたりします。相続人全員が遺言書の内容に合意しない場合のみ、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことができます。
遺産分割協議が成立した際には、忘れずに「遺産分割協議書」を作成しておくようにしましょう。
所得税の準確定申告(死亡後4ヶ月以内)
準確定申告は必要な方と不要な方がいます。亡くなった方が自営業者や不動産所得がある方で確定申告をしていた場合に必要な手続きとなります。
ここでいう所得税とは、亡くなった方の所得税のことです。その年の1月1日から亡くなった日までに給与所得や事業所得などがある場合は、亡くなった日から4ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。もしこの期限までに準確定申告を行わなかった場合は延滞税などがかかる可能性がありますので、忘れないように行うようにしてください。
相続税の申告および納税ほか(死亡後10ヶ月以内)
相続税の申告そして納税については、死亡後10ヶ月以内に行う必要があります。したがって、遺産分割協議が完了したら速やかに遺産分割協議書を作成し、その内容に基づいて相続を行います。相続人はそれぞれの相続割合に応じた相続税を申告し、納税します。もし、この時点でまだ遺産分割協議が終了していない場合は、取りあえず法定相続割合で相続したものとして相続税額を計算し、納付する必要があります。そして、遺産分割協議が終了した段階で更生請求を行うことで、いったん納税した相続税を精算することになります。
以上が、相続開始から相続税の申告までの流れになります。ただし、その後に行える手続きもありますので、以下に紹介します。
遺留分侵害額請求(死亡後1年以内)
遺言書がある場合はその内容が優先されることになりますが、その内容が遺留分の相続範囲を脅かしている場合、相続人は遺留分について相続する権利があることを訴えることができます。これを遺留分侵害請求といいます。遺留分侵害請求は被相続人が亡くなった日(相続の開始を知った日)から1年以内に行わなければならず、また、相続の開始から10年経過すると請求できなくなることも覚えておきましょう。
健康保険および生命保険に関する請求(死亡後2~5年以内)
人が亡くなった場合、健康保険より給付金がもらえることがあります。また遺族年金を受け取る権利は発生するケースもあるでしょう。そのような権利についても死亡後2年以内(遺族年金については5年以内)に請求しなければ受け取ることができなくなってしまうので、早めに手続きを行うようにしてください。なお、生命保険の受け取りについては生命保険会社の規定により、死亡後3年間の猶予が設けられています。
相続手続きの注意点
相続手続きの際には膨大な書類が必要となります。手続き関係を一人の相続人に任せてしまうと、見落としなどが発生し、その分手続きが遅れてしまうことにもなりかねません。相続人が複数いる場合は、協力し合って書類をそろえていくとよいでしょう。また、相続手続きにおいては、上で述べたように期限があるものが多いですが、なかには期限が存在しないものもあります。例えば不動産の相続登記などです。不動産の相続登記を行っていないケースは意外と多く、登記簿謄本を取り寄せると何代も前の持ち主の名義となっていることもあります。後に正式な名義人への所有権移転登記を行うとなると、手続きが煩雑になるなどのデメリットが発生しますので、遺産分割協議が終了した時点でできるだけ早めに登記などは済ませておくようにしましょう。
相続開始にあたってよくある質問
一度成立した遺産分割協議の内容を変更することはできますか?
原則として遺産分割協議のやり直しは認められていません。しかし、相続人全員の合意があれば、やり直すことは可能です。ただ、その際に新たに遺産を相続したとしても、相続税の基礎控除などの特例は認められず課税対象となることに注意が必要です。
相続税が払えない場合はどうすればいい?
相続税については、原則として現金で一括支払うこととなっています。しかし、なかには手持ちのお金がなく、一括で支払うことが難しいケースもあります。そのような場合は、「延納」もしくは「物納」という制度を利用することができます。「延納」とは一定の要件を満たす場合にのみ認められる制度ですが、それを利用することで何年かに分けて毎年一定額を納めることになります。「物納」とは、延納によっても相続税を支払うことができない場合に利用できる制度で、国債や社債、不動産などの財産によって相続税を納めることになります。ただし、物納の対象財産とならないものもありますので、事前に税務署で相談することをおすすめします。
相続人の中に未成年者がいる場合は?
相続人の中に未成年者がいる場合、遺産分割協議においては未成年者の代わりとなる代理人を選定し、その代理人が協議に参加することになります。この代理人を「特別代理人」といい、選定の際には家庭裁判所への申請が必要となります。
まとめ
相続手続きにおいて一番時間がかかるのが遺産分割協議です。したがって、相続の手続きをスムーズに行うためには、生前に被相続人とよく話し合っておくことが大切です。また、相続税を納める際には現金で支払う必要がありますので、自分の支払う相続税はどのくらいになるのかを事前に把握し、準備しておくことも忘れないようにしましょう。