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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第5回 「在宅介護」と「施設介護」について

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著者:一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事  石間 洋美

中小企業のための「介護離職防止」対策! 第5回 「在宅介護」と「施設介護」について

前回(中小企業のための「介護離職防止」対策!「実際に介護が始まったら…」)までのお話の中でも何度かお伝えさせていただいてきましたが、介護は本当にある日突然やってきます。

そして、短期間で様々なことを決めていかなくてはなりません。

介護が必要な状態になったとき、まず初めに、自宅での生活を継続(在宅介護)するのか、生活の場を介護施設へ切り替える(介護施設へ入居する)のか、選択をする必要があります。

当然、最初は在宅介護を選び、その後施設へ入居する方もいますが、どちらにしても「どちらか」を選択することから始まります。


在宅介護のメリット・デメリット

では、実際に「在宅介護」と「施設介護」では、それぞれどのような特長があるのでしょうか。まず、在宅介護を選択する理由として、住み慣れた自宅で生活したいということが一番に挙げられます。「住み慣れた場所でリラックスして介護を受けてほしい」という家族の思いと、「家族の負担増や緊急時の対応が心配」という現実的な問題が存在しますが、家族や身内の理解が得られやすいことや、一人暮らしだとしても日常生活に支障がなければ在宅介護を選ぶことが多いようです。

在宅介護のメリットは、訪問介護サービスやデイサービスなど、ご本人の介護状態や希望する生活に合わせて、自由に介護サービスを選べることにあります。施設介護に比べると費用負担も少なく、月額約3万円から8万円で介護サービスを利用することができます。一方のデメリットは、家族や身内の介護負担が大きいことです。介護は終わりが見えないため、介護する期間が長くなればなるほど精神的にも肉体的にも負担が増加していきます。また、介護職員が不足している問題から、希望の時間に訪問に来てもらえないケースや、希望の曜日にサービスが利用できない場合もあるため、その部分を家族が介護して補うことになります。特に近年は核家族化が進んでいることも要因となり、子ども一人に負担がかかった場合に起こる「共倒れ(介護をする家族の方が倒れてしまう)」や「老々介護」も問題になっています。

在宅で介護をする場合に起こりがちなのは、介護をする人が負担を一人で抱え込み、限界を迎えてしまうケースです。最後まで住み慣れた自宅で家族を介護したい、という気持ちは大切ですが、その負担やストレスを一人で抱え込むと、心身ともに疲弊してしまいます。

こうした状況に陥らないためには、まずは担当のケアマネジャーに相談し、しっかりと現状の報告をして、それまでと違う生活になるようにサービス内容(ケアプラン)を見直してもらい、それでも改善されない場合には介護施設への入居を検討することが必要になります。

在宅介護には、「肉体的負担」「時間的負担「精神的負担」の3つの負担が考えられます。

負担の1つとして、「肉体的な負担」が挙げられます。介護を必要とする方の身体状況次第では、毎日たくさんの身体介助(肉体的疲労)を強いられることになります。身体介助をやり続ける中で、腰痛や膝痛を発症してしまったり、自分が倒れてしまったり、介護をする人が負担に耐えられなくなってしまうケースがよくあります。肉体的負担は、高齢者が高齢者の介護をする、いわゆる「老々介護」の場合、特に深刻な問題となります。

介護をするということは、介護する方の生活の中に、介護に割く時間をつくらなければならないということでもあります。こうした「時間的な負担」も、在宅介護の難しさの1つです。

介護によって仕事に集中することができなくなり、退職するしかなくなってしまったり、介護に拘束されることで自分の時間がまったく取れなくなってしまったり、介護により生活が破綻したというケースもあります。

「精神的な負担」も、在宅介護では無視できません。24時間365日、休みなく介護をする必要があるという事実自体が負担になる上、介護される方の言動、とくに認知症などの場合における暴言やコミュニケーションの難しさなどは、介護する側にとって大きな負担となってしまいます。こうした状況が長く続き、介護をする方の精神がすり減ってしまい、心を病んでしまうケースもあります。

自宅での介護は本人にとってメリットが大きいものですが、あまり長期間に及ぶと、介護する方の負担が増えすぎて、介護する方とされる方が共倒れになるリスクがありますので、そうなる前に介護施設への入居を検討するようにしましょう。

施設介護のメリット・デメリット

次に「施設介護」を考えてみましょう。施設介護とは、有料老人ホームなどの施設に入居して介護サービスを受けるスタイルです。施設介護の最大のメリットは、24時間体制で介護のプロたちが見守ってくれている点です。介護施設の種類もいくつかあり、施設によっては介護士の他に看護師や医師などがいるため、万が一の時も安心です。また、家族の方は自ら介護する必要がないので、家族にとってはその分「肉体的負担」「時間的負担「精神的負担」がかなり軽減されます。また、介護度が高くなればなるほど、在宅介護ではかなり厳しい場面が訪れます。認知症の介護などはその代表例と言えるでしょう。

一方のデメリットとして、毎月の施設利用費の高さがあります。介護施設にもいくつか種類があるため、別のコラムで特長をまとめますが、代表的な介護施設として、特別養護老人ホームと呼ばれている施設があります。収入に応じて費用負担が軽くなる制度もあり、民間の有料老人ホームと比べ低料金で入居できる可能性のある施設ですが、こちらでも介護費の他に個室費用などがかかり、昔と比べて費用が高くなっている施設も増えています。また、高級有料老人ホームと呼ばれる、入居一時金だけで数千万円の支払いが発生することがある施設もあります。そして、仮に高額な入居費用を支払ったとしても、その環境が入居する方に合うかどうかまでは保証されません。場合によっては、施設になじめず退所し、自宅に戻ってくることもありますので、施設入居を考える場合には「お試し入居」が可能な施設なら、まずは本契約の前にお試し入居をお勧めします。

どの介護スタイルにも、それぞれメリットとデメリットがあります。自分の仕事や生活、経済的状況、親の状態などを考慮して、何が最適なのかをよく考える必要があります。

そして、大切なのは今後の生活を送る上で、どこに重きを置くか考えることです。どのスタイルを選択しても、家族の覚悟は必要になってきます。「親を施設に入れるなんて」「介護は家族がするもの」などといった周りの声や目を気にせず、介護をされる方・介護をする方双方が幸せになれる介護のあり方をあきらめずに考えていきましょう。

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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