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就業規則の作り方 ちゃんとできてる?健康診断とストレスチェック、就業規則の定めは?

著者:本山社会保険労務士事務所 所長  本山 恭子

就業規則の作り方 ちゃんとできてる?健康診断とストレスチェック、就業規則の定めは?

1 はじめに

健康診断やストレスチェックが就業規則に関係するのかと思われるかもしれませんが、就業規則の相対的記載事項の一つです。労働安全衛生法に定められている事項であり、年に1回(ストレスチェックの場合は企業規模による)の実施が義務付けられていて実施していくものですから、就業規則に定めをおきます。健康診断、ストレスチェックの概要及び就業規則の定め方について順に見ていきましょう。


2 健康診断

事業主による年に1度の定期的健康診断の実施及び従業員の受診の義務についてはご存知の方が多いかもしれません。一般健康診断の種類はそのほかに、雇入れ時の健康診断、特定業務に従事している者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、給食従業員の検便等種類があります。

当該健康診断の実施義務には企業規模は関係ありませんから、常時使用する従業員がたとえ1人であっても行うことが必要です。また、健康診断の費用は、法律で義務付けられていますので、法定を上回る検査項目等を除き、原則として事業者が負担しなければならないとされています。健康診断の受診のために要した時間を労働時間とするかどうかについて問題となることがあります。特殊健康診断の受診の場合には、事業の遂行に絡んで当然実施すべき性格のものですから、労働時間とみなされます。他の一般健康診断については特に定めがないことから、労使で協議して決定するものとされています。

また、とても重要なことですが、健康診断をただ実施すればいいというわけではなく、健診結果の労働者への通知、記録の保存、有所見者においては医師の意見聴取や必要に応じて就業上の措置等が必要になりますし、健康診断の個人票は5年間の保存義務があります。

健診結果の労働者への通知は個人に送られますが、会社での保存や有所見者への措置などを行っていない事業所もあるかもしれませんから、産業医のいない事業場などでは、どのようにしているか今一度確認し、万が一何もしていない場合には実施していただくことをお勧めします。


3 ストレスチェック

平成27年12月に施行されたストレスチェック制度は、常時使用する労働者数が50人以上の事業場に1年に1回ストレスチェックを実施することを義務付けています。常時使用する労働者が50人とは、いわゆる正社員が50人ということではなく、次の要件を満たすものを指すとされています。

  1. 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者も含む)であること。
  2. 1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

ストレスチェックの実施には、医師や保健師や必要な研修を終了した看護師等の「実施者」が必要です。実施者の指示を受けて実際の事務を取り扱う「実施事務従事者」と呼ばれる人事権のない担当を置くことも可能です。また、ストレスチェックを実施した結果「高ストレス」と判定された人が申し出た場合には、「医師」による面談の実施が義務付けられています。ストレスチェックの受検の結果は原則として受検した本人に戻され、本人の同意なしに事業者に通知されることは禁止されています。また第三者に漏らすことも禁止されています。

様々なことが細かく定められているように感じるかもしれませんが、意外と多くの事項が衛生委員会等で調査審議し決定できるものとなっています。例えば、どのような方法で実施するのか、検査結果の通知方法や面接の申出方法など。調査票も次の3つの事項に関する質問が含まれていればいいとされ、必ず使用しなければならないものがあるわけではありません。

  • ① ストレスの原因に関する質問項目
  • ② ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
  • ③ 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

厚生労働省からストレスチェック制度実施マニュアルというものが出されています。200ページ程度とボリュームのあるマニュアルですが、実施に当たってはぜひご覧いただければと思います。


4 就業規則の定めはどうする

(1)健康診断

就業規則には、健康診断を採用時及び毎年1回(深夜労働に従事する者は6か月ごとに)行うこと、有害業務に従事する者に対する項目の付加、健康診断の結果の通知、異常の所見があった場合の対応などについて記載しましょう。

実際にはあまり細かいことまで規定している例を見ることがありませんので、どのくらいまで細かく定めるかは事業所の考え方次第ともいえるでしょう。

(2)ストレスチェック

厚生労働省はストレスチェック実施規程(例)を示していますが、これは必ずしも規程として作成しなければならないものとはされていません。労働条件でもありませんので、作成・変更の時の労働基準監督署への提出義務もありません。

ただし、就業規則本体にも健康診断と同様にストレスチェックの年1回の実施、高ストレス者に対する医師による面談の実施、医師の意見に基づく必要な措置の実施、不利益取り扱いの禁止といった基本事項については盛り込んでおきましょう。

その上で、就業規則という形をとる必要がないとはいえ、ストレスチェックの実施に当たっては、健康診断と違い、なるべく多くの人に安心して受検してもらうためにも次のような事項を定めて、実施要項などタイトルはどのようなものでもいいと思いますが示していきましょう。

  • ① 目的、変更の場合の手続きや周知方法について
  • ② 対象従業員の範囲
  • ③ 実施体制(実施者、実施事務従事者、面接指導を行う者など)
  • ④ ストレスチェックの実施方法(実施期間、受検方法、高ストレス者の選定方法、結果通知の方法、結果提供に関する同意書の取得方法など)
  • ⑤ 医師による面接指導(申出方法、面接指導の実施方法、面接指導の結果を踏まえた措置の実施方法)
  • ⑥ 記録の保存
  • ⑦ 同意を得て得た結果や医師による面接指導結果等の共有範囲
  • ⑧ 情報開示、訂正、追加及び削除と苦情処理
  • ⑨ 不利益取り扱いの禁止について

可能であれば「集団分析」の実施、方法等についても記載し、実施していきましょう。


5 まとめ

常時使用する従業員数が50人以上の企業にはストレスチェックの実施が義務付けられていますが、従業員側には受検は義務付けられていませんので注意が必要です。受検の有無による不利益取り扱いなどがないように十分に気を付けましょう。

健康診断はストレスチェックと違い、企業側にも従業員側にも実施と受診が義務付けられていますし、企業規模は問われません。健康診断の事後措置について、産業医の選任義務のない事業場では、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する「地域産業保健センター」を原則として無料で利用することが可能です。概ね労働基準監督署の管轄区域ごとに設置されていますので、問い合わせて利用してみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

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