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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第9回 認知症の種類と症状について

~企業は「人」がいるから売上がある!をサポート~

著者:一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事  石間 洋美

中小企業のための「介護離職防止」対策! 第9回 認知症の種類と症状について

要介護状態になるきっかけの第一位は、認知症です。

65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は推計16%を超えており、2020年時点で約600万人に上り、65歳以上の6人に1人が認知症有病者であることが「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」で明らかになっています。そして、その数が2030年には740万人へ増加し、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されています。

今回は、決して他人事ではなく、皆さまの親や、もしくはご自身にも発症の可能性のある認知症について詳しくお伝えしていきます。


認知症の種類と症状について

認知症という病気は、物忘れの延長線上にあると思ったことはないでしょうか?

実は、認知症と物忘れでは大きな違いがあります。

歳をとると、人の名前が思い出せないことや、物をどこにしまったのか忘れてしまうことは、多かれ少なかれ誰にでもあることだと思います。認知症とは、そのような加齢に伴う物忘れとは違い、色々な原因で脳の細胞が損傷を受けたり、働きが悪くなったりすることで認知機能が低下し、「日常生活に支障をきたすようになった状態」のことを言います。

まずは、物忘れとの違いからお伝えしていきます。加齢に伴う物忘れと、認知症の記憶障害との違いの例を細かくあげていきます。

加齢に伴う物忘れとは、

  • 経験したことが部分的に思い出せない
  • 目の前の人の名前が思い出せない
  • 物の置き場所を思い出せない
  • 約束をうっかり忘れてしまった
  • 曜日や日付を間違えることがある

といったことになります。

体験したことの一部を忘れてしまったとしても、ヒントがあれば思い出せることが多いことが特徴です。進行もあまりせず、判断力が低下することもありません。また、本人も忘れっぽいことを自覚しているので、日常生活に支障をきたすような状態になることもありません。


次に、認知症による記憶障害をあげていきます。

  • 経験したこと全体を忘れている
  • 目の前の人が誰なのか分からない
  • 置き忘れ・紛失が頻繁になる
  • 約束したこと自体を忘れている
  • 数分前の記憶が残らない
  • 月や季節を間違えることがある

といったことになります。

物忘れとは異なり、体験したことをまるごと忘れてしまい、ヒントがあっても思い出せないことが特徴です。徐々に進行していき、判断力も低下していきます。また、本人は忘れたことの自覚がないので日常生活にも支障をきたすようになります。


「認知症の種類は4種類」

一口に「認知症」といっても、その種類は大きく分けて4つあります。それぞれ原因や症状が異なりますので詳しく紹介していきます。


1 アルツハイマー型認知症

全体の67.6%を占めるほど一番多い認知症となります。脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、脳に委縮が起こります。症状としては、昔のことはよく覚えているのに、最近のことは忘れてしまいます。軽度の記憶障害から徐々に進行し、やがて時間や場所の感覚がなくなっていきます。


2 脳血管性認知症

全体の19.5%を占め、二番目に多い認知症となります。脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られずに、脳細胞が死んでしまう病気です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因です。症状としては、脳血管障害が起こるたびに段階的に進行します。また障害を受けた部位によって症状が異なります。


3 レビー小体型認知症

全体の4.3%の割合となります。脳内にたまったレビー小体という特殊なたんぱく質により脳の神経細胞が破壊され起こる病気です。症状として、現実にはないものが見える幻視や、手足が震えたり筋肉が固くなったりするなどの症状が現れます。歩幅が小刻みになり、転びやすくなります。


4 前頭側頭葉型認知症

全体の1.0%と一番少ない割合になります。脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が減少して脳が委縮する病気です。症状としては、感情の抑えがきかなくなったり、社会のルールを守れなくなったりすることが起こります。


具体的症状の「中核症状」と「行動・心理症状」

原因によってそれぞれ症状が違うため、対応方法も異なってきます。また、脳は私たちのあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。指令がうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。各認知症の症状もそれぞれ細かな特徴がありますが、具体的な症状としては、脳の細胞が壊れることによって起こる症状の「中核症状」がもとになり、本人の性格や生活環境、人間関係などの要因が絡み合って、精神症状や日常生活における行動上の問題「行動・心理症状(BPSD)」につながります。

「中核症状」は4つあり、「行動・心理症状」は8つありますので、それぞれ紹介していきます。

まず、「中核症状」には、

  1. 理解・判断力の障害
    考えるスピードが遅くなる、家電やATMなどが使えなくなる。
  2. 記憶障害
    物事を覚えられなくなったり、思い出せなくなったりする。
  3. 見当識障害
    時間や場所、やがて人との関係が分からなくなる。
  4. 実行機能障害
    計画や段取りを立てて行動できない。

次に、「行動・心理症状」には、

  1. せん妄…落ち着きがなく家の中をウロウロしたり、独り言をつぶやく。
  2. 抑うつ…気分が落ち込み、無気力になる。
  3. 人格変化…穏やかだった人が短気になるなどの性格の変化。
  4. 不潔行為…お風呂に入らない、排泄物をもてあそぶなど。
  5. 暴力行為…自分の気持ちをうまく伝えられないなど、感情をコントロールできないために暴力をふるう。
  6. 幻覚…見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる。
  7. 妄想…物を盗まれたなど事実でないことを思い込む。
  8. 行方不明など…歩き回って帰り道が分からなくなる。

なお「行動・心理症状」では、周囲から見ると「妄想」だと思われても、本人なりの背景や理由があると言われています。この他、認知症にはその原因となる病気によって多少の違いはあるものの、様々な身体的症状を合併することもあります。アルツハイマー型認知症でも、進行すると歩行が拙くなり、終末期まで進行すれば寝たきりになってしまう人も少なくありません。

このように、一口に認知症と言っても、種類や症状だけでも奥が深いものなのです。すでに認知症の方の対応をされている方もいらっしゃると思いますが、今後はますます世の中に認知症の方が増加し、もっと身近に感じる機会が多くなってきます。まずは情報として知っておき、もし身近な方が認知症になってしまったときは、その症状を正しく理解し対応することが大切であり、対応の仕方によって介護する側(家族)の負担も減らせますので、是非覚えておきましょう!

職場でも社員の親が認知症を患い、その介護をしながら仕事をする方も増えてくるでしょうから、「介護があっても働きやすい職場」の整備が必要な時代になってくると思いますので、その準備も意識しておきましょう。

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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