このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

中小企業のための「介護離職防止」対策! 第13回 転倒予防の方法

~企業は「人」がいるから売上がある!をサポート~

中小企業のための「介護離職防止」対策! 第13回 転倒予防の方法

この記事の著者
一般社団法人 日本顧問介護士協会  代表理事 

「転倒・骨折」は要介護状態になるきっかけに

要介護状態になるきっかけの第一位は認知症ですが、認知症を発症する前段階には、転倒による骨折が原因である場合も少なくありません。

転倒・骨折は要介護状態になるきっかけとして第四位にあげられるほど、多くの方に影響があります。高齢者が転倒すると大腿骨を骨折する場合が多くあり、大腿骨を骨折すると急性期病院で治療するのですが、約一ヶ月の入院生活が必要となります。その後回復期リハビリテーション病院へ転院するなど、最大約三ヶ月の入院生活となります。急性期病院に入院している期間は安静を強いられることが多く、その間に体力面だけでなく知的機能も低下し、認知症を発症することがよくあるのです。

さらにコロナ禍では、感染防止策としてほとんどの病院は面会が禁止されています。そうなると、外部との面会(お見舞い)が閉ざされ、刺激(会話)もなくなり認知症を発症する方が増えている現状があります。


転倒は死につながる恐れも

また、高齢者の転倒は認知症に繋がるだけではなく、実は死に至る場合もあるため注意が必要となります。2018年の人口動態統計調査では、死亡届における「不慮の事故死」は41,238人で、そのうちの9,645人(23.4%)が「転倒・転落・墜落」による死亡となっています。特に、65歳以上が8,803人を占めており、交通事故による死者2,646人をはるかに凌いでいるのです。また、「転倒・転落・墜落」による死亡の要因としては、スリップ、つまずき、よろめきによる同一平面上での転倒が86.7%と最も多い結果となっています。

なお、住宅等居住場所における高齢者の「転ぶ」事故の発生場所上位5つは、以下のとおりです。

1位 居室・寝室
2位 玄関・勝手口
3位 廊下・縁側
4位 トイレ・洗面所・浴室
5位 台所・ダイニング


「内的要因」と「外的要因」

転倒して大変な状況にならないために、早い段階で予防策を考えておきましょう。
では、具体的にどのような予防策があるのかご紹介していきます。

まず転倒の原因は、身体状況に関連した「内的要因」と、生活環境に関連した「外的要因」に分けられます。

内的要因には、以下のようなものがあります。

  • 体の状態の変化…力が弱くなる、バランスが悪くなる、視野や視力が悪くなる、感覚が鈍くなる
  • 精神・心理面…焦り、不安、緊張、興奮、注意力不足
  • 服薬状況…服用している薬の種類や数

なぜ薬が転倒の原因になるのでしょうか。薬には必ずと言っていいほど副反応があります。高齢者の方は、複数または多数の薬を飲んでいることや、内臓の機能が低下していることなどが理由で、副反応が出やすい場合があります。また、薬を飲み始めてから体調の変化があっても口に出さない、または出せない場合があります。すると、体調不良や副反応によってふらつきが発生し、転倒のリスクが高くなります。


外的要因には、以下のようなものがあります。

  • 履物…脱げやすいもの、滑りやすいもの
  • 床の状態…デコボコ、(小さい)段差、滑りやすさ
  • 明るさ…夜間などの足元の明るさ
  • 床の障害物…電気コード、カーペットなどの折れ端、滑りやすいマット

その他に「最近1年以内の転倒の有無」も、将来的な転倒を予測するうえで非常に重要となっています。


転倒予防対策

転倒を予防するために、内的要因に対しては、筋力トレーニングやバランス運動など複合的な運動、服薬管理が必要となります。外的要因に対しては、環境整備(転倒しない環境づくり)などを行うことが必要となってきます。 また、きれいな歩き方を身につけることも転倒を予防するために大切なことと言われています。

複合的な運動のポイントは、バランス運動を含んでいるかどうかです。簡単にできる運動の例をあげてみます。

  1. 立位での背伸び・踵上げ(上下への重心移動)
  2. 片足立ち(バランス練習)
  3. 椅子からの立ち座り(上下への重心移動)
  4. 速歩(前後への重心移動)

人によってはこの運動では不十分な方もいますが、こういった点を意識しながら部屋の片付けなどから行ってみることもお勧めです。また、きれいな歩き方をすることでつまずきなどの転倒を予防することができ、足の筋力を強くすることもできます。きれいな歩き方をすると見た目も若々しく、健康的に見えます。


薬の副反応

内的要因の一つである服薬に関して、転倒につながる可能性の高い、よく見られる副反応を4つお伝えします。

  1. 高血圧の方が服用される「血圧降下薬」…めまい、ふらつき
  2. 風邪を引いたときに服用される「抗レスタミン薬」…眠気、ぼんやりする
  3. 睡眠障害の方が服用される「睡眠薬」…ふらつき
  4. 気分障害や認知症の方が服用される「抗精神病薬」…脱力感、筋肉の緊張低下


すぐ始められる服薬中の注意事項を3つお伝えします。

  1. 使用上の注意をよく読み理解する…使用上の注意をよく読み、服薬の指示にしたがう。
  2. 服薬履歴をつける…どんな薬を、いつから、どのくらい飲んでいるか「お薬手帳」に記録する。
  3. 薬を飲み始めてからの変化を確認する…薬を飲み始めてから変化がないか(ろれつがまわらなくなる、ボーッとするようになった、意欲がなくなる、だるいといった症状)を周囲の目で確認しましょう。様子がおかしいと感じたときは薬剤師や医師に相談するようにしましょう。


住み慣れた家でも、転倒の原因となるものはたくさん存在します。そのため、環境整備が欠かせません。環境整備をする際のポイントを3つお伝えします。

  1. 動線を確保する
  2. 視覚的にわかりやすくする(見やすくする)
  3. 足元を安定させる

玄関、トイレ、階段、浴室には手すりを設置することをお勧めいたします。また、玄関には固定式踏み台の設置、階段と浴室には滑り止めマットを設置すると安心です。浴槽の中にも使える滑り止めマットもありますので、ぜひ活用してほしいと思います。このような環境整備のための備品は、ホームセンターやドラッグストアでも購入できるものもありますので、今から考えて予防しておきましょう!

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

著者プロフィール

author_item{name}

石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

この著者の他の記事(全て見る

テーマ/キーワードから記事を探す

カテゴリ別テーマ一覧へ

フリーワードで探す

bizoceanジャーナルトップページ