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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第19回 介護施設長の体験談①~コロナ禍で感じた変化~

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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第19回 介護施設長の体験談①~コロナ禍で感じた変化~

脳血管疾患や認知症の発症、転倒や骨折、身体の衰弱などをきっかけに介護が必要な状態になったとき、これからの生活の場を自宅にするのか、それとも介護施設への入居に切り替えるのかを選択することになります。


この記事の著者
一般社団法人 日本顧問介護士協会  代表理事 

多くの方は、介護に直面したらまずはこの選択から始まり、今後の生活や介護サービスの利用を考えていくことになります。介護量によっては、働き方や仕事の職種を考え直す方もいるかもしれません。在宅での生活を選択した場合、前回までにご紹介した「介護がある生活」を読んでいただければ想像ができるかと思いますが、それまでの生活とは違ってきます。

では、介護施設への入居を選択した場合、どのような状況になるのでしょうか。

今回は、約8年間有料老人ホームの施設長として施設運営に関わった方のお話をご紹介させていただきます。


介護施設長の体験談~施設の種類と利用者ご家族の背景~

【経歴】

2年間、医療法人社団が運営する通所リハビリテーション(デイケア)にて、利用者の面談や契約、利用日の調整などの業務を担う相談員として勤務。
3年間、営利法人が運営する介護付有料老人ホームにて、入居者の見学対応や面談、入居日の調整、入居者の病院付き添いなどの業務を担う施設相談員として勤務。
8年間、営利法人が運営する介護付有料老人ホームにて、施設運営責任者である施設長として勤務。

介護施設の種類

介護施設にも様々な種類があり、大まかに説明すると、

  • 特別養護老人ホーム
    介護度3以上の介護認定を受けた方が対象となる
  • 介護老人保健施設
    在宅復帰を目的としてリハビリ病院から自宅に戻るまでの中間的役割を担う
  • 介護療養型病床
    常時医療的ケアが必要とされる方が対象となる
  • 介護付有料老人ホーム
    介護が必要であるが、ある程度自由な生活を希望される方対象
  • 住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅
    元気なうちから将来のことを考えて選択される

などが存在する。

その中でも、元気なうちから将来のことを考えて生活の場を介護施設に切り替える方はまだまだ少なく、介護が必要な状態になり自宅での生活に限界を迎えた方が仕方なく介護施設での生活に切り替えていくケースが圧倒的に多い。

後者の場合、脳血管疾患による後遺症である身体麻痺、フレイルと呼ばれる身体的な衰弱、転倒した際の骨折による歩行障害、認知症の進行などにより自宅での生活が困難になった方がほとんどである。

介護施設入居を選択する家族の背景

本人は率先して介護施設に入りたいという気持ちよりも、“家族に迷惑をかけることが増えたから施設に入った方が良いのかもしれない”、“自分は家で邪魔な存在かもしれない”と感じている方も多く、それでも本心は“いつまでも家で生活したい”という気持ちが根底にある。

一方、家族も戸惑いながら介護施設の選択をすることが多い。

本人が家で生活したい気持ちを理解していながらも、自分もしくは家族の生活環境も守らなければならない。また、主介護者が介護うつになることや体調を崩すなど、被介護者と共倒れになっては在宅介護の継続はできない。

そのような状況になる前に、介護量や家族の介護力を見極めた上で早い判断をしていかなければならない。

自宅で介護をしたい気持ちがあっても、精神的、肉体的な負担が増えていくと、心のバランスを崩すことになりかねない。

在宅介護では、このバランスを保ちながら生活している方が多く、どこまで頑張れば良いのか?どこまで自宅で介護するべきなのか?介護施設への切り替えのタイミングがわからない方も多いのが現状である。

生活の場を自宅から介護施設へ切り替える明確なラインはなく、各家庭によって様々であるため、家族も自問自答しながらやむを得ず選択するという方が多い。


施設長として

このような家族の背景がある中で、施設長としてできることは何なのか、長年模索してきた。

多くの介護相談を受けてきた中で、一昔前までは「施設で食事、入浴、身の回りのお世話をしてもらえれば良い」という方が多かったように感じるが、最近では「大事な祖父母や両親のために何ができますか?」と質問されることが圧倒的に多くなってきた。

介護施設の種類も増え、家族の選択肢は増えた。また施設ごとに特色を出し、入居者に充実した生活を送っていただけるようアピールもしている。

そのように介護施設業界の背景も変わってきている中、家族が求めることが変わってくるのは当然のこと。そうであれば、より良い施設作りをしたいと常に考えてきた。

日常生活の中で、その方に合った介護や生活リズムはもちろんのこと、やはり楽しいと思える瞬間をいかにたくさん提供できるか、施設長として率先して行動することが大切だと思っていた。

そして、楽しいレクリエーションや企画を考え、お花見・プチ旅行・外食・施設内でのパーティーやカラオケ大会などなど、多くのことを提供してきた。

選挙の時は施設内で期日前投票ができるように自治体と連携をとり、自宅で生活しているのと変わらない状況を作ることも心掛けた。結果、入居者にも家族にも大変好評をいただけるようになった。


コロナ流行後の介護施設内

一変する施設

有難いことに「ここに入居して良かった」「ここに預けて良かった」とのお声をいただくことも増え、施設長としての施設作りも形になってきた。

そんな中、突如現れた新型コロナウイルス。

それ以降、施設内は一変した。新型コロナウイルスに対し、施設としては感染対策を徹底しなければならない。そのため、外出や面会も一時期禁止。緩和後も規制は続き、入居者は家族と会う機会が少なくなった。この状況が長引くにつれ、入居者の様子が変わり、だんだん落ち込んでいく方が増えた。

「最初は息子たちが来ないねぇ」
「コロナだから来ていただくことができないのですよ」
「そうかい、仕方ないね」

と会話した方が多かった。

最初はこれで納得されている方もいたが、徐々に「なぜ会わせてくれないの?もうここを出てうちに帰ります」と荷物をまとめる方もいた。

コロナ禍で感じた家族の存在

施設内での生活に色々と工夫をしても、やはり家族との関わりが一番なのだと改めて痛感した。また家族としても、入居している祖父母様やご両親と少しでも話したい、顔が見たいと思うのは自然なことだと思った。

感染対策を取った上で、どうしたら家族と入居者が触れ合うことができるか施設みんなで考えた。結果、LINEを使ったビデオ電話で話をする、窓越しに携帯電話と施設の電話で話をするなどを行った。

しかし、タブレット越しだと「なぜ私の娘がここにいるの?」「声が違うから娘ではない」と会話をやめてしまうことや、窓越しで触れることができず大泣きされる方もいた。

長年施設での仕事に携わってきたが、このような状況に直面したのは初めてであり、文明の力を理解していただく難しさも感じた。そして、やはりぬくもりを感じる距離でなければ愛情は伝わりにくいものだとも感じた。


まとめ


この施設長は、

「介護はある日突然やってくる」ため、ご家族様もどのように対応し、どう接すれば良いのかまったくわからない状態に陥り、介護施設入居を選択されることもあります。

また、介護施設はお客様にとっては「人生最後の生活の場」となりうる可能性が高いため、お客様にとって残された時間と、ご家族様の想いに施設の職員がどう応えるかを常々考え、日々努力を惜しまないでお客様と過ごしていきたい。

と話していました。

現在は、多くの介護施設があります。

あり過ぎてどこを選択したら良いのかわからない方も少なくないでしょう。皆様にとっての「最適な施設」選びがとても大切になります。

次回は介護施設の選び方についてお話しさせていただきます。

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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