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インクルージョンとは? ダイバーシティとの違いや導入事例を解説

監修者: 2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格) キャリアコンサルタント(国家資格)CDA(career development adviser) ハラスメント対策認定アドバイザー  五十嵐 美貴

インクルージョンとは? ダイバーシティとの違いや導入事例を解説

近年ではビジネスにおいてインクルージョンという概念が重要視されています。

実際に多くの企業で導入されていて、現代社会に必要な考え方です。

そもそもインクルージョンはEUで生まれた言葉で、現代では日本にも浸透しつつあります。

この記事では、インクルージョンの意味や歴史、ビジネスにおけるインクルージョンについて解説します。

導入のメリットや具体的な事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。


インクルージョンとは?

インクルージョンとは、直訳すると「包括・包含」です。

ビジネスにおいては、個性や価値観、考え方の違う多様な人々がそれぞれを認めあい、一体感を持って働いている、平等に機会が与えられている状態を指します。

ここでいう多様な人々とは性別や国籍、障がいの有無など、社員の属性をいいます。

違いを受け入れて認めあい、一体感を持って働いている状態がインクルージョンです。


インクルージョンの歴史・成り立ち

インクルージョンという概念はなぜ重要視されているのでしょうか。

ここでは、インクルージョンの歴史や成り立ちを紹介します。

インクルージョンの語源

インクルージョンという言葉は、1960年代にフランスで使われていた「社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)」の対語として生まれました。

社会的排除は、施設に入っている児童やアルコール・薬物の依存者などを指す言葉です。

1980年代に入ると、フランスでは長期失業や不安定就労など雇用に関する問題が出現し、社会保障を受けられない人が増えました。

これにより、新たな貧困層が生まれ社会的に排除された人々と認識され始めます。

同時期に同じ問題を抱えるEUでも「社会的排除」が注目されるようになり、排除された人々を社会で支える必要性が唱えられます。

そして社会的排除の対語として、インクルージョンという概念が生まれました。

日本におけるインクルージョン

日本では、インクルージョンは教育分野において「インクルーシブ教育」という名でよく見られます。

インクルーシブ教育システムは、障がいのある人とない人がともに学ぶ仕組みです。

人間の多様性を尊重し、障がいのある人が精神的・身体的な能力を可能な限り発達させて、自由に社会に参加できるようにすることが目的です。

インクルーシブ教育では、障がいのある人が一般的な教育制度から排除されないこと、自己の生活する地域において、初等中等教育の機会が与えられることが必要とされています。

ビジネスにおけるインクルージョン

1990年代になると、ビジネスの世界でもインクルージョンという言葉が使われるようになります

ビジネスにおけるインクルージョンは「社会的弱者を排除するのではなく、組織で受け入れ支援をしながら、その能力に期待する」という概念です。

インクルージョンは、多様性を持った人々がともに働いている状態を指す「ダイバーシティ」と区別するために、使われるようになりました

日本では2010年代ころから、ビジネスシーンでインクルージョンという言葉が広がっています。


インクルージョンとダイバーシティの違い

ダイバーシティとは、直訳すると「多様性」です。ビジネスにおいては、多様性を持った人材がともに働いている状態を指します。

インクルージョンはその「多様性」を認めて活かしあい、さらなる発展や相乗効果を目指す考え方です。

ダイバーシティは組織として人材の多様性を認め参加する機会を与えること、インクルージョンは参加した多様な人材が認めあい、一体感を持って働いている状態です。

多様な人材が活躍する企業であるためには、インクルージョンとダイバーシティの両方が必要とされています。


インクルージョン導入のメリット

それでは企業においてインクルージョン導入のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

優秀な人材の獲得・離職率低下

働き方の多様性や、個性を発揮できる職場を求めている求職者が増えています。

その点でインクルージョンを導入しているという点をアピールすることは、採用の際に有利に働くでしょう

また、個性を活かせる職場という点から離職率の低下にも期待できます。

従業員のモチベーション・エンゲージメントの向上

先述のように、個性が活かせる職場は、従業員のエンゲージメント(愛社精神)にも繋がります。

従業員エンゲージメントが向上すると、従業員の会社への貢献度にも期待でき、職場に一体感が生まれ、チーム強化といった効果ももたらすでしょう

業務改善・生産性向上

さまざまな知識、経験、スキル、価値観、文化を持つ人材が活躍することで、新たなアイデアや製品、サービスが生み出されやすくなります

そのため、業務改善や生産性向上が起きやすい職場になると考えられます。

企業のイメージアップ

インクルージョンを導入しているということは、社外にもアピールできるポイントです。

先述のような採用活動にも繋がりますし、顧客・ユーザーからのイメージアップにも期待できるでしょう。


インクルージョン導入のデメリット

それでは、一方でインクルージョンを導入するデメリットもあるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

取り組みの効果がすぐには出ない

インクルージョンという企業文化を作り上げていくのには、短期間での達成は難しく、すぐに効果が得られにくいという点は注意すべきです。

インクルージョン導入をする際には、成果が見えにくく、ある程度の期間がかかるものであると考えておく必要があります。

また、効果を数値で測ることが難しいため、分かりにくさがある点も覚えておいてください。

効果を測定する方法としては、従業員満足度調査や、個人面談、アンケートによるヒアリングなどが挙げられます。こういった施策も定期的に実施しましょう。

担当者の心理的負担

インクルージョン導入には、制度・仕組みの整備や、従業員の意識改革が必要になります。

また、設備投資が必要になるケースもあり、インクルージョンの担当者にとって、負担が増えたり、コストがかかる可能性は考慮しておきましょう。

また、従業員の意識改革をするにあたって、受け入れられない従業員からの不満や反発といったデメリットも考えられます。

経営者側からの発信によって従業員の理解を得られるような取り組みも合わせて行うことで担当者の心理負担を軽減することも大切です。


インクルージョン推進のポイント

それでは続いては、インクルージョンを推進するにあたって意識したいポイントを具体的に紹介していきます。

経営者からの発信による方針の浸透

インクルージョンを推進するために必要なことは、従業員からの理解と、それによる意識改革です。

ただ単に意識改革をしてほしいと伝えたところで受け入れられるという人も少ないでしょう。

そのため、企業のトップである経営者から、なぜインクルージョンが必要になっているのか、導入することでどういった企業を目指すのかといった点を伝えることは大切です

また、インクルージョン導入とだけ掲げても、あいまいなものでは従業員からの理解も得にくいでしょう。

そこで、「インクルージョン導入によって何を実現したいのか」といった点も明確にできると良いでしょう。

評価制度の整備

インクルージョン導入を目指すということは、多様な個性を認めるということですので、評価制度も対応できるものである必要があります。

これまでの人事評価制度では、不足しているという点もあるかもしれないので、見直してみてください。

従業員が意見を出しやすい環境づくり

インクルージョン導入にあたって、年齢、立場に関係なく意見を言えるような環境を作ることは大切です。

企業側からも従業員に意見が出せるように促していきましょう。

その一つとして、社内提案制度を設けることも良いかもしれません

提案を受け入れてくれる職場であることを制度にすることでアピールできます。

自社の現状把握

インクルージョン導入の前に、現状はどうなっているのかを把握することも必要です。

現状の自社の企業文化がどうなっているのかを理解してから、それをどのように変えていきたいのかを考えてみましょう。

推進専門部署の開設

インクルージョン導入をスムーズに行うためには、きちんと担当者を設けて推進することが必要です。

可能であれば推進専門の部署を設けて、スピード感を持って推進できると良いでしょう。


インクルージョン導入企業の事例

インクルージョンを導入している企業は多数あります。ここでは、3つの事例を紹介します。

ソニー株式会社

ソニー株式会社では、ダイバーシティ&インクルージョンをコンセプトに掲げ、積極的に導入しています。

具体的には、「DiverCity Week 2020」といったイベントや「フレキシブルキャリア休職」制度です。

また、障がいのある人がいきいきと自由に働ける職場環境や、家族の介護と仕事を両立できる仕組み作りなど、多様性のある人材が能力を最大限発揮できる職場を作っています。

三井住友フィナンシャルグループ

三井住友フィナンシャルグループでは、シニア人材や障がいのある人の積極的な採用を行っています。

また、家族の介護と仕事の両立支援やLGBTの理解促進など、会社全体でダイバーシティ&インクルージョンを導入しています。

働き方改革にも力を入れていて、有給休暇所得率の数値目標を公表しているのも特徴です。

2025年度に、有給休暇取得率85%以上を目標としています。

日立製作所

日立製作所でも、ダイバーシティやインクルージョンが積極的に導入されています。

多様な個性を尊重するという考えから、2030年度までに役員層に女性・外国人が占める割合をそれぞれ30%に引き上げると発表がありました。

ジェンダー平等を実現するために、グローバル女性サミットの公開や労働組合との意見交換も行っています。


インクルージョンについてのまとめ

インクルージョンはさまざまな個性や価値観などの多様性を認めあい、活かしあう考え方です。

現代社会において重要視されている概念で、企業をよりよいものに発展させるために必須と言えるでしょう。

ダイバーシティやインクルージョンを積極的に導入し、成果を上げている企業はすでにいくつもあります。

そのような事例を参考にしながら、ぜひ自社への導入を検討してみてください。


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監修者プロフィール

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五十嵐 美貴

2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格) キャリアコンサルタント(国家資格)CDA(career development adviser) ハラスメント対策認定アドバイザー

フリーランスのキャリアコンサルタントとして、高校生から中高年までの幅広い年齢層の就職・転職支援、相談業務に従事。

高校や大学での面接指導、職業訓練校や就労移行支援事業所での講師兼キャリアコンサルタント、就職・転職フェアでの相談コーナーにて、求職者を支援。新卒・中途採用、次世代リーダー選別のアセスメント業務歴25年。適性診断テスト(文章完成法テスト)を用いての人物像把握など、これまで10数社の判定に携わる。

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