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通年採用とは? 実施する目的やメリット・デメリット、導入事例を紹介

通年採用とは? 実施する目的やメリット・デメリット、導入事例を紹介

従来の新卒一括採用ではない採用方法として注目されているのが、「通年採用」です。採用活動の時期を定めず、1年間いつでも応募を受け付ける方法で、一括採用より多様な人材の獲得がしやすいと言われています。

しかし、一括採用とは異なるデメリットや注意点もあるため、企業はその必要性やメリット・デメリットを把握したうえで導入を検討すると良いでしょう。

通年採用の概要を、実際に導入している企業の事例と共に紹介します。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

通年採用とは

通年採用とは、特定の時期だけではなく、一年を通じて新卒・中途を問わず採用活動を行うことです。

従来の採用活動は、「新卒一括採用」の方法が一般的でした。新卒の学生を毎年決まった時期に採用し、大学卒業と同時に就職先に入社させる形式です。

しかしこの形式では、何らかの理由で卒業の時期がズレる学生を受け入れることが難しくなります。通年採用はそうした課題を解決し、幅広い就職希望者を受け入れるために生まれた方法なのです。

通年採用をおこなう目的

通年採用をおこなう目的としては、企業の人材確保に尽きます。

近年は少子化が進んでいることもあり、新卒者の人数は減り続けています。企業は人材の確保が困難になり、従来の時期に採用を行うだけでは十分な人数が集まらなくなってきているのです。

対策として、新卒の学生だけではなく、第二新卒や中途採用者の採用も積極的に行っている企業が増えてきています。

また、留学生・帰国子女が秋に大学に入学することを踏まえて、新卒採用の時期を限定しない動きも見られます。

こうしたことから、採用時期・対象が多様化し、通年採用を行う企業も増えてきているのです。

通年採用の現状

通年採用を導入している企業の数は増えてきており、通年採用という制度はどんどん身近な制度になっています。

就職情報サイトを複数運営している株式会社学情が2023年4月、全国約530社を対象に行った調査によると、通年採用を実施している企業は約半数に上りました。また、「導入を検討している」と答えた企業も約23%に達しています。

今後も、通年採用に関心のある企業は増えていくと考えられます。そうした状況下で就職希望者を多数受け入れられるようにするためにも、検討の価値は十分あるでしょう。

参考:株式会社学情「「2024年卒採用」に関する企業調査(2023年5月)


通年採用とその他の採用方法との違い

通年採用には従来の採用方法とは異なる点も多いものです。まずは、他の採用方法との違いを知っておきましょう。

一括採用

一括採用は、新卒の学生を毎年決まった時期に採用し、大学卒業と同時に就職先に入社させる形式です。

年間を通じて採用活動を行う通年採用とは、採用活動期間が大きく異なります。企業により多少異なりますが、一括採用を導入している企業は毎年3月〜7月ごろに採用活動を行います。

一括採用は日本特有の形式ですが、この形式での採用に馴染みのある学生も多いことから、大半の企業が取り入れています。

ただし前述の通り、卒業時期がズレる学生や留学生・帰国子女を受け入れづらい点がネックです。

中途採用

中途採用とは、新卒の学生以外、つまり既卒や第二新卒、そのほかの職務経験者の採用をすることです。

通年採用と異なるのは、採用の対象となる層です。通年採用も既卒や第二新卒などをターゲットにしていますが、さらに新卒の学生も対象となります。

新卒の学生を対象外としている中途採用に比べると、通年採用のほうがより多様な人材を受け入れられるでしょう。


通年採用によるメリット

通年採用には、企業側・就職希望者側の双方にさまざまなメリットがあります。通年採用に興味のある方は、ここから紹介する内容も参考に、導入を検討してみてください。

企業側のメリット

企業側のメリットとしては、大きく以下の3つが挙げられます。

一括採用では出会えない人材を採用できる

まず何より、多様な学生と出会えるチャンスがあります。

先に述べたように、一括採用では留学生・帰国子女を始めとした秋入学をした大学生や大学院生、一括採用の時期に就職活動をしなかった新卒の学生なども受け入れられます。

加えて新卒の学生に限らず既卒や第二新卒も対象にできる点も魅力的です。年齢やキャリアの都合で就職活動ができなかった優秀な人材が、集められるかもしれません。

余裕を持った採用活動と選考ができる

企業側が採用活動を行う時期もズレるため、一括採用よりも余裕をもって準備や選考ができます

一括採用の場合、学生も企業もみな同じ時期に活動しなければなりません。その結果、非常にタイトなスケジュールでの準備や選考が求められる、他者の選考の都合で辞退する学生が増えるといったこともあります。

一方、通年採用には明確な採用活動・選考の期日がありません。採用活動の準備に焦る必要がなく、選考も時間をかけて行えるでしょう。その分、就職希望者とのミスマッチも防ぎやすくなるはずです。

内定辞退者の欠員補充もしやすい

内定を出した就職希望者が辞退した場合に、欠員補充が容易であることも魅力的です。

一括採用のピークの時期以降になると、就職先が決まっていない新卒の学生はかなり少なくなります。そのため内定辞退が起きると、代わりの学生を見つけることがとても難しくなるのです。

しかし通年採用であれば採用活動の時期は限定されないため、もし内定辞退があっても早急に欠員補充がしやすくなります。

就職希望者側のメリット

就職希望者側のメリットは、以下の2つです。

無理のないスケジュールで就職活動ができる

通年採用であれば、就職希望者にとって都合の良いスケジュールで、負担なく就職活動ができます。

新卒の学生で一括採用の企業に就職活動をしようと思うと、非常に短い期間で説明会への参加や応募書類の作成、面接対策をしなければならず、負担も大きいでしょう。

そのため、通年採用であれば、就活準備と学業の両立を図りやすいというメリットがあるのです。

一つひとつの企業に向き合える

ある程度時間をかけて就職活動ができる分、就職希望者は興味のある会社についてよく調べたり、選考対策を丁寧に行えます。

一括採用の時期にあわただしく就職活動をし、企業のことを良く把握せずに入社してしまうと、ミスマッチによる早期退職につながる恐れがあります。


通年採用によるデメリット

通年採用には、企業側・就職希望者の双方にデメリットも存在します。

企業側のデメリット

まず、企業側には以下のようなデメリットがあります。

新人教育や社内体制整備のタイミングが合わなくなる

通年採用の場合、新入社員が入ってくる時期が分散してしまいます。そのため、新人教育を複数回行わなければなりません。

また、新入社員を受け入れるための社内体制の整備も、都度行う必要があるでしょう。

多くの企業は一括採用で採用した学生を受け入れることを前提に、4月からの新年度に備えて社内体制を整えたり、新入社員の教育プログラムを組みます。

短期間でさまざまな準備をしなくてはならないものの、そうした準備が一度で済む点は一括採用の強みだと言えます。

採用活動にかかる時間・手間とコストが増える

採用活動が長期化する分、かかる時間と手間、コストは一括採用よりも多くなります。

一括採用の場合、採用活動は数ヵ月間のみ集中的に行います。しかし通年採用はいわば、1年中採用活動をしていることと同じであり、いつ就職希望者が応募してくるか分かりません。

そのため、どのタイミングで応募があっても対応できる体制づくりが求められます。

また、求人についてのコストだけでなく、新人研修についても複数回行わなければならなくなるため、コストもそれに比例して高くなることが考えられるでしょう。

良い人材を採用できない可能性も

優秀な人材が、すでに一括採用を行っている企業に採用されていることも十分考えられます。

通年採用を行う企業は増えてきてはいるものの、社会的に見ればまだ一括採用を行っている企業のほうが多いものです。それはつまり、一括採用の時期に就職活動をする新卒の学生も多いということでもあります。

そのため、いくら自社が通年採用を導入したとしても、良い人材が残っていない可能性もあるのです。また、一括採用の時期に就職できなかった学生がやむを得ず応募してくるケースもあります。

就職希望者側のデメリット

デメリットがあるのは、就職希望者にとっても同じです。たとえば、以下のような点がネックになります。

情報収集が難しくなる

周囲と異なる時期に就職活動をする分、情報収集も難しくなるでしょう。理由としては、次のようなことが考えられます。

  • 採用活動のスケジュールが会社ごとに違う
  • 企業も一括採用の時期ほど積極的に情報発信をしていない
  • そもそも通年採用をしている企業を見つけることが難しい

一括採用の時期に就職活動をする場合と比較して、就職希望者にはより正確なスケジュール管理や、能動的な情報収集が求められます。

自ら積極的に活動しないと就職できない

一括採用に比べると、通年採用は採用人数が少なく、採用基準は高めです。一括採用の時期であれば大目に見てもらえたようなことも厳しくチェックされ、なかなか採用されないかもしれません。

就職希望者には、一括採用の時期以上に、書類作成・面接対策を丁寧に行う姿勢が求められるでしょう。


通年採用を成功に導くためのポイント

これまでお伝えしたとおり、通年採用には一括採用とは異なる点が多数存在します。そのため一括採用と同じように取り組んでしまうと、うまく採用ができない可能性もあるのです。

通年採用を成功させるためには、以下のポイントを意識しましょう。

学生の理解を深める

まずは、学生の大まかなスケジュールや動向を知りましょう。

通年採用は一括採用のように、実施する時期が定まっていません。そのため、学生が応募したり選考を受けやすかったりする時期を把握しておかないと、思うように募集が集まらないかもしれません。

加えて、新卒の学生や就職希望者がどういったことを就職先に求めるのか、内定率や内定辞退率はどの程度かもリサーチしておくと良いでしょう。

採用活動の方法や、採用活動をしていることを告知する媒体を選ぶ際の参考になります。

便利なツールやWebサービスを活用する

ITツールやWebサービスを活用すれば、採用活動もより効率的に実施できます。

よく使われているものは応募者管理ツールですが、近年はオンラインで説明会や面談ができるツールも普及してきています。また、AIを活用して採用可否を判定できるツールも登場してきているのです。

これまで採用担当者の勘や経験に頼っていたことも標準化でき、今後の採用活動にも良い影響を与えるかもしれません。

採用エリアやターゲットを拡大する

もし一部のエリアにしか求人を出していなかった場合は、採用エリアを拡大しても良いでしょう。都道府県レベルに留めていたエリアに近隣県も含め、国内外のどこからでも応募できるようにするといったことです。

エリアの都合で募集を諦めていた就職希望者から、応募があるかもしれません。

また、年齢や学年などの条件を緩和して、ターゲット層を拡大する方法もあります。

通年採用をする職種や入社時期を絞る

通年採用をする職種を、社内の一部だけにすることも効果的です。全ての職種を通年採用で募集してしまうと、新入社員が来る度に社内全体の体制を見直す必要が出てくるでしょう。

しかし、募集する職種を絞ってしまえば、新入社員が来た際の対応もしやすくなります。

あるいは、「応募は通年受付、入社は4月だけ」と、入社時期を限定することも良いでしょう。この方法であれば、新入社員の足並みを揃えられるうえ、企業側の新人教育の負担も減らせます。


通年採用を導入している企業事例

通年採用を導入している企業は全国に多数ありますが、特によく知られている企業の例を紹介します。

リクルート|全ての業種で通年採用を実施、入社時期は限定

リクルートは募集を業種ごとの6つにコース分けし、全てのコースで通年採用を行っています。

詳しい募集内容はコースにより異なりますが、応募条件は「4月に入社できること」「入社時に30歳以下であること」の2つのみ。新卒・既卒や、就業経験の有無なども一切問わないとしています。

条件はとても寛容ですが、入社時期を絞っている分、教育の手間はある程度抑えられているのでしょう。

なお、海外の大学に在学中などで4月入社が難しい場合は、入社時期を個別に相談できる体制も整えています。

ネスレ日本|年齢や学年、時期も問わない採用を実施

ネスレ日本では、全職種を対象に「ネスレパスコース」という採用方式を設けています。これは「企業に選ばれるのではなく、学生が主体的に就職活動をしてほしい」という願いのもと実施しているもので、2013年度の採用から取り入れられています。

ネスレパスコースでは、年齢や学年、国籍といった採用条件は一切設けていません。そのため、大学1年生や既卒者、就職後に大学院に入学した人もエントリーが可能です。またエントリーは1回のみならず、何度でも可能としています。

ただし募集は年に数回、不定期で行っており、具体的な募集スケジュールは公開していません。

清水建設|第二新卒も新卒扱い&毎月入社ができる

大手建設会社である清水建設は、2022年4月から通年採用を開始しました。

特徴としては、第二新卒であっても新卒の学生と同様に扱うと明言している点が挙げられます。入社後も就業経験を考慮せず、新卒の学生と同様の処遇となります。また、学部や職種にも制限を設けておらず、対象者に該当する人であれば誰でも応募できるとしています。

また、入社時期は毎月1日とし、年間で12回もの入社のタイミングがあります。学生の就職に対する意識や就職スタイルの多様化を汲み、いつでも新しい社員を受け入れる体制を整えているのです。


通年採用についてのまとめ

採用の時期を定めない通年採用は、企業だけでなく就職希望者にとってもメリットがあります。ただしその分、採用担当者の負担が増える、コストがかさみやすいといったデメリットも存在します。

また、ただ単に通年採用を導入するだけで、良い人材が集まるわけでもありません。メリット・デメリット、企業として対応すべき内容などをよく把握した上で、導入の可否を検討してみてください。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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