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第8回 コロナ禍が残したものとは? ニューノーマルを迎えるにあたり

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

第8回 コロナ禍が残したものとは? ニューノーマルを迎えるにあたり

コロナ禍により、促進されたもの

コロナ禍の前、働き方改革は、法改正もあり、着実に進んでいた。ただそれは、IT系企業が中心であったり、意識の高い企業の話であった。日本全体では、その必要性は分かるが、いまだ高度成長時代の昭和の流れが連綿と続いていた。

例えば、テレワーク。オリンピックを目標に、テレワークデーと銘打って、国を挙げて多数の企業の実施を促進していた。但し、目の前から部下が居なくなることでのマネージメントの不安から、その実施率は低いものであった。確かに、介護や育児のために、ある条件の下ではテレワークを認めていたが、それも条件がついていた。誰でも利用できる状態にはなっていなかった。

そこに突如として新型コロナウイルス感染症が現れ、さすがに命の危険があることにより、有無を言わず強制的に在宅勤務を実施することとなった。それにより、従来は岩盤のように抵抗していた管理職も自ら体験することになり、いざ実施してみると、仕事はできるし、人によっては大きく生産性が向上した。

そして、日本的な仕事の仕方であるハンコ文化が、ここにきて消滅しつつある。国も行革という名の下に、押印の廃止に舵を切った。このように、今まで進めようにもなかなか進まなかった働き方改革の内の、テレワークとテクノロジーの活用、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が一挙に進み始めたのだ。つまり、コロナ禍により、いままで我が国で進めようとしていたものが大きく促進された、そのような一面があるのだ。

むしろ、このピンチをチャンスとして捉え、大きく変化する絶好の機会として捉える、そのように考えておくことが良いと思う。「この危機(コロナ禍)は、いつ終わるのか?」ではなく、「この危機は、私たちを、どう変えるのか?」という観点で考えることが大事なのである。

コロナ禍により、気づいたこと

一方で、コロナ禍により多くのことがあぶり出された。強制的な在宅勤務、国の補助金にまつわる申請等を通じて、我が国のIT化、DXの進み具合が、他の国々よりはるかに遅れていた、ということである。いまだにFAXが使われ、手書き、転記が横行しているという事実。アメリカでは、FAXは、スミソニアン博物館に展示されている遺物として考えられているほどである。

先にも触れたが、その事実を目の当たりにして国はデジタル庁なるものを創設し、そして押印廃止に踏み切った。オンライン診療も解禁となり、国を挙げてのDXの促進が始まった。菅内閣がどこまで岩盤規制に踏み込めるか、企業もその動きに同調して、素早くDXの実現を目指さないといけない。

このデジタル化への動きの遅さは、単に遅れているということではなく、日本の特殊性によるものだ。JOB型雇用の推進も、やっと新聞紙上で話題になり始めた。我が国のメンバーシップ型雇用は、高度成長期の人口増加という条件下で花開いた制度と言われ、グローバルにおいてはJOB型雇用が、ごく普通に昔よりなされていた。これも、日本の特殊性がゆえに、いまさらのようにJOB型が推進されているのだ。

となると、よくベンチマークという言葉が使われ、他社の優秀な事例を探し、それに倣って自社を変えていくという、そのベンチマーク先も、日本国内で探すことの危うさが存在する。所詮、ガラパゴスでの優秀事例であり、グローバルで考えると、特殊性を帯びた、遅れた事例となる可能性が大きい。

このコロナ禍を通じて、DXという面ではかなりの後進国であると判明した日本の事例を良しとするのはやめた方が良い、そのように気づいた方も多いのではないだろうか。一足飛びにグローバル級に変化するのはさらに難しい事ではあるが、その先には常にグローバルのニューノーマルを見定めたベンチマークを探すべきだろう。

コロナ禍による、原点の大事さ

コロナ禍により、リモートワークが当たり前の時代へと急速に変化した。今まで集団で仕事をしてきたスタイルから、分散して仕事をするという、日本で過去に経験したことのない働き方が浸透してきた。それにより改めて、「集まる」という事実の大事さに気づいたのではないだろうか。

その直接的な課題が、コミュニケーションの減少であり、コミュニティ意識の希薄化である。リモートでもコミュニケーションは取れるのだが、雑談、ざっくばらんな会話、すぐに聞ける・話せる、ということが難しくなり、結果、メンタルケアの重要性が、従来よりも言われ始めている。

ホモサピエンスとしてこの世に現れて20万年。このコロナが出現するまで、常に集団を形成してきた。集団で生きるがゆえに家畜からの伝染病、感染症のかっこうの餌食となってきたことは衆目の一致するところである。

リモートワークは、確かに合理的ではあるか、ホモサピエンスにとっては不自然、無理をしている、ということに気づき、改めて、集団でいること、リアルの場でコミュニケーションをとることの大事さに気づかされたのではないだろうか。

コロナ禍により、経済的苦境を迎え、ピンチとなった事実は否めない。しかし、この苦境を苦境として捉えるだけではなく、ここから何かを学び取り、その学びから変化を起こし、さらに進化していく。それが我々に課せられた使命だと捉え、繰り返すが、ピンチをチャンスとして捉え、日々の仕事に向き合いたいものである。

古くから言われている、「災い転じて福となす」。このようにしたいものである。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

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