OJT研修とは?意味や導入までのやり方を詳しく解説!
座学で仕事の仕方を学ぶOFF-JT(Off the Job Training)に対し、OJT(On the Job Training)では現場で通常業務をこなしながら、仕事の仕方を学びます。
上司や先輩社員が現場で直接実務指導を行うOJTは、どのように進めるのが良いのでしょうか。
おもに新人教育として多くの職場で取り入れられているOJTの具体的な進め方と、OJT指導者として向いている人・向いていない人を解説します。
OJTとは
近年、多くの職場で導入が広がるOJTですが、その定義や誕生の背景についてご存じでしょうか。まずは、OJTの定義とOJTが生まれた背景を確認しましょう。
OJTの定義
OJTとは英語の「On the Job Training」の略で、いわゆる座学で学ぶのではなく、仕事の現場で上司や先輩社員が実務を直接指導して仕事を教えることを指します。業界を問わず、現在も良く使われている指導方法です。
OJTに対してOFF-JTがあります。これは「Off the Job Training」の略で、研修として座学で仕事の仕方を学ばせる方法です。内容によって、上司や先輩社員がトレーナー役を務めるケースと、外部講師がトレーナーを務めるケースがあります。
OJTが生まれた背景
OJTは、第一次世界大戦時代のアメリカで、造船所の作業員育成のために用いられた職業教育の方法で、チャールズ・R・アレンが開発した4段階職業指導法が基になっています。
4段階職業指導法には「やって見せる」「説明する」「やらせてみる」「確認・指導する」のプロセスがあり、新人作業員たちに短期間で技能を習得させるために編み出されました。
日本では、高度経済成長期にOJTの手法が取り入れられ、時代とともに更新され続けています。
新人教育のためのOJT研修のやり方
新人教育の場で多く取り入れられているOJT研修ですが、実際にはどのように行うのでしょうか。
ここでは、一般的なOJT研修を6つのステップに分け、それぞれのステップでの注意点とともに解説します。
現状把握
対象者にOJT研修を行う場合、その対象者がどのような状態にあるのか、まず現状把握を行うのが効果的です。
新卒の新人社員の場合は、ある程度事前のスキルや知識レベルを想像できます。
しかし、対象者が新人でも中途採用者の場合、すでに持っている知識や経験のレベルを事前に把握しなければ、適切な目的と目標の設定ができないからです。
目的の確認と目標設定
続いて、対象者の現状をもとに、これから行う研修の目的を定義します。
目的があいまいでは適切な目標設定ができないため、OJT研修の実施後には、新人がどのような状態になることを目的とするかを事前に定義しておく必要があります。
そのうえで、定義した目的を達するために必要とされる知識やスキルについて、具体的な目標を設定していきます。
OJT指導者の選出
OJT指導者には、実質的に研修対象の仕事を実行できる者を選ぶ必要があります。
ただし、仕事の遂行力がある人であっても、必ずしもOJT指導者に必要なスキルを身につけているとは限りません。
OJT指導者となる人には、研修の目的の理解と指導者として行うべきこと、控えるべき言動について事前学習した者を選ぶ必要があります。
計画作成
続いて実施計画を作成しますが、計画は「やって見せる」「説明する」「やらせてみる」「確認・指導する」のプロセスを組み入れた形となります。
可能な場合は、計画を作成する段階で研修の対象者と指導者の顔合わせも行いましょう。
対象者本人のモチベーションも上がり、話し合いによってより効果的な研修方法を確認しながら、計画を立案することができます。
計画実行
作成した計画に従って、「やって見せる」「説明する」「やらせてみる」「確認・指導する」の作業を実践していきます。
計画実行中に調整が必要と感じたら、適宜対象者と相談して、了解を得ながら軌道修正を行います。
同時に、計画の実行状況とその結果を記録しながら、目標に対する達成状況をモニターしていきます。
フィードバック(FB)
OJT研修の実施後には、必ず対象者にフィードバックを行うことが重要です。
最初にOJTの目的と目標を明確にするのは、研修の効果を確認するためです。
研修前に設定した目標はどの程度達成できたか、新人の姿勢や態度はどうだったか、今後継続的に習得に取り組むべき知識やスキルは何かといった内容を具体的にフィードバックし、その後の学習意欲向上へとつなげます。
OJT指導者に向いている人
OJT研修はステップに沿って確実に進めることが重要ですが、加えて適切な指導者を選ぶことも重要です。ここでは、OJT指導者に向いている人の5つの特徴をまとめました。
- 新人の成長を本気で応援できる
- 自分のやり方を押し付けない
- 目的に合わせて優先順位を調整できる
- 新人が相談しやすい雰囲気をつくる
- 相手が理解しやすい説明の仕方をする
詳しく見ていきましょう。
特徴①新人の成長を本気で応援できる
OJT研修で新人の指導をする役割を担当するのは、対象者の成長を本気で応援する気持ちを持てる人が向いています。
対象者のレベルや世代に関わらず、OJTでの指導には忍耐力が求められます。
そのため、本気で対象者を応援するという気持ちを持っていないと、最後まで責任を持って指導するのが難しい可能性があるのです。
特徴②自分のやり方を押し付けない
OJT指導者には、自分のやり方を押し付けず、その人にとってベストなやり方を一緒に探す手助けをしようと考えられる人が向いています。
指導者は、自分が試行錯誤を経て見つけたやり方をそのまま対象者に指導したくなってしまうかもしれません。しかし、多くの場合物事を行う際には、いろいろなアプローチがあります。
対象者は、本人にとってのベストなやり方を見つけるべきなのです。
特徴③目的に合わせて優先順位を調整できる
OJT研修は実際の業務のなかで行われるため、状況によって通常とは異なる対応が求められたり、指導する内容に変更が必要になる場合もあります。
そのため、OJT指導者には、通常業務を担う現場のニーズに応じて臨機応変にOJT研修の指導内容を変更したり、優先順位を調整する能力も必要です。
また、予定されていた研修内容が変更になる場合、対象者に状況を丁寧に説明し、優先順位の変更で混乱が生じないような配慮ができる人が、指導者には望ましいでしょう。
特徴④新人が相談しやすい雰囲気をつくる
指導者に向いている人は、新人が相談したいときにすぐ相談できるような雰囲気と環境を提供しようとします。
OJTで学ぶ内容には、通常業務を担う現場での細かいことが含まれるため、対象者にはあらゆることが疑問に思えるときもあります。
そんなときでも、気軽に細かい質問をして大丈夫だという場と雰囲気を作れる指導者は、対象者を安心させ、学ぶ意欲を後押しすることができるでしょう。
特徴⑤相手が理解しやすい説明の仕方をする
OJT指導者は、対象者の学び方の癖や傾向を意識して、本人が理解しやすい説明の仕方を優先できる人が向いています。
同じ内容を説明するのにも、人によってどこから、何から説明を始めるかといった部分に個性が出ます。
OJT研修では、相手が最も理解しやすい説明の仕方を常に考えて実践し、その効果を確かめながら、より良い方法を見つける努力ができることが望ましいのです。
OJT指導者に向いていない人
OJT指導者に向いている人がいる一方で、向いていない人もいます。OJT指導者に向いていない人の特徴は、以下の通りです。
- 相手を役職や世代で区別した態度で接する
- 自分のやり方がベストとして、相手の考えを聞かない
- 計画通りにしか対応できない
- 自分の仕事を優先する
- 最小限の説明しかしない
詳しく見ていきましょう。
特徴①相手を役職や世代で区別した態度で接する
役職や世代で人を判断する傾向の強い人は、OJTの指導者には向いていません。
新人や自分より年下が相手には上から目線で話し、世代が上の人に対してはあからさまに控えめな態度になるような人を、OJT指導者として選任することは避けるべきです。
特徴②自分のやり方がベストとして、相手の考えを聞かない
自分の方法がベストだと確信し、OJTで実際に学ぶ当人や他の人の意見・提案には耳を貸さないという人は、指導者には向きません。
自分のやり方を確立するまでの苦労もあり、同じやり方を新人に習得させることが望ましいと考えることもあるでしょう。しかし、OJTの主体はあくまで対象者であり、その考えを尊重することが求められるのです。
特徴③計画通りにしか対応できない
臨機応変に調整を行わず、あくまでも計画通りに進めようとする考えの人は、OJT研修の指導には向いていません。
OJT研修は通常業務のなかで実施されるため、予定通りに運ばないことも想定されます。
そのため、研修の計画に調整や変更が発生する可能性もあらかじめ予測できます。変更が予測できるにもかかわらず計画に固執してしまうタイプの人は、OJT指導者に適任とはいえないでしょう。
特徴④自分の仕事を優先する
OJT研修実施中にも関わらず、自分の本来の仕事を優先させ、研修対象者の学びのプロセスを停滞させてしまうことに問題を感じない人は、指導者には向いてないでしょう。
通常、対象者がOJTで仕事の仕方を覚えることは、組織全体の生産性向上や本人の成長の面から望ましいことです。
OJT指導者の立場になった以上、自分の通常業務よりも、OJT研修での成果を優先させるという考えも必要です。こうした考え方ができない人には、OJT指導者として成功するのは難しいかもしれません。
特徴⑤最小限の説明しかしない
自分の説明労力を惜しむかのように、具体的な質問をされても常に最小限のレベルの説明しかしないような人は、明らかにOJT指導者には向いていないといわざるを得ません。
OJT研修中は、対象者に指導したり、その疑問に答えたりという機会が多くなります。
細かい業務内容や質問に対し、過不足なく適切な情報を伝える必要があるでしょう。
説明が長すぎることも良いことではありませんが、相手が理解するために最低限必要なレベルの詳しい説明をすることは、大切な指導の一環です。
OJTについてのまとめ
第一次大戦時のアメリカで、造船所の作業員育成のためのメソッドを基に生まれた指導法であるOJT。さまざまな改良を重ねられ、現在ではおもに新人教育の場で広く活用されています。
OJTを成功させるためには、現状把握や目的設定から実践、フィードバックまで、ステップごとに確実に行うことが大切です。
さらに、適切な人物をOJT指導者に選任することも、研修成功をめざすためには欠かせないことになります。
ポイントを押さえて、OJT研修を成功させ、人材育成を通した生産性向上をめざしましょう。
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