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オンボーディングの意味や目的とは?入社前から入社後までのプロセスを紹介

監修者:officeたまこぶ 代表 / 国家資格キャリアコンサルタント  宗像 陽子

オンボーディングの意味や目的とは?入社前から入社後までのプロセスを紹介

オンボーディングは新たに採用した社員の離職防止につながるサポートとして、注目されている取り組みです。日本ではまだ馴染みがない言葉ですが、どのようなプロセスで行われるものかご存じでしょうか。

今回は、人材採用や育成のコスト削減が期待できる、オンボーディングの意味や実施する際のポイントについて解説します。社員のモチベーションアップや企業の生産性向上にもつながる取り組みですので、導入をお考えの経営者の方は参考にしてください。


ビジネスにおけるオンボーディングとは

まずはビジネスの分野において、オンボーディングが持つ意味について解説します。

オンボーディングの意味

オンボーディングとは、新たに採用した社員に対して行われる教育・育成プログラムを指す言葉です。欧米ではすでに様々な企業が採用している取り組みで、新加入のメンバーが企業や職場にいち早くなじんで活躍できるようにサポートし、離職防止につなげます。

新卒だけでなく、転職してきた若手・中堅、幹部クラスのエグゼクティブ人材まで、対象が幅広いのが特徴です。社員が早期に戦力となるように、長期的なプログラムとして行われます。

オンボーディングを言い換えると?

オンボーディングは、「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」から派生して生まれた造語です。そこから「新たな乗組員が現場に慣れるようサポートをする」意味に転じ、ビジネスの世界に持ち込まれました。

日本ではまだなじみの薄い言葉ですが、実際には企業ですでに取り入れられている取り組みもあります。

たとえば、「飲み会で新入社員と親睦を深める」「担当スタッフが新入社員をサポートする」といった取り組みも、実はオンボーディングの一部です。

オンボーディングの目的

オンボーディングが注目されるようになった背景には、新しく入社した社員の定着率の低さが挙げられます。

大学などを卒業して就職した新入社員の3年以内の離職率は約3割に達しており、若年層の早期離職は以前から企業側の悩みの種となっていました。また、中途採用者でも企業文化になじめず、簡単に退職する人材が一定数いる状況です。

参考:厚生労働省|新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況 

新卒や中途で入社した社員に対して、企業は採用や教育に費用と時間を投資します。終身雇用制度が崩れて雇用の流動化が進み、労働人口の減少で優秀な人材を確保しにくい今、企業にとって入社後のミスマッチでの離職をいかに減らすかが、大きな課題となっています。

オンボーディングは早期に離職するリスクを防ぎ、人材の定着率アップにつなげることが最大の目的です。


オンボーディングを実施するメリット

オンボーディングは企業と従業員の双方にメリットがある取り組みです。ここからは、オンボーディングを実施する3つのメリットについて解説します。

採用・人材育成コストの削減

オンボーディングを実施するメリットの1つが、採用・人材コストの削減です。新入社員の場合、戦力になるまでは育成のための投資期間とみなされます。また、転職者の場合は即戦力としての活躍を期待し、ある程度の費用をかけて採用しています。

しかし、投資を回収する段階で離職されてしまうと、企業にとって損失は大きくなります。オンボーディングを通じて採用した人材の定着率がアップすれば、人材の採用や育成にかかるコストの大幅なダウンが可能となるでしょう。

企業の生産性・品質の向上

オンボーディングは、企業の生産性や品質の向上につながるというメリットもあります。

どの企業にも独自のルールやシステム、社風や人的交流の仕方など、担当業務以外に覚える内容は多岐にわたります。それらに対する教育や支援の役割をオンボーディングが果たすことで、新しく加わった社員を早期戦力化できるのです。

特に、放置されがちの中途採用のメンバーがいち早く職場に溶け込み、本来の実力を発揮できれば、業績の向上にも貢献します。

モチベーションアップ・従業員満足度向上

オンボーディングでは、社員のモチベーションアップも期待できます。社員間の交流やメンターの指導を通じて、「自分は組織の一員として受け入れてもらえている」と実感できるからです。

また、オンボーディングのプロセスを通じ、組織全体のコミュニケーションが活性化し、従業員同士が助け合う雰囲気が生まれます。従業員同士の相互理解が深まると、人間関係や職場環境が改善され、従業員満足度の向上といった効果につながるでしょう。


オンボーディングのプロセス

企業にとってメリットが大きいオンボーディングは、3つの段階に分かれます。ここからは入社前から入社後にかけてのオンボーディングのプロセスについて解説します。

入社前のオンボーディング

組織に新加入するメンバーは、不安や緊張を感じています。だからこそ、入社前のオンボーディングでは、ストレスを取り除くために、人事担当者と頻繁に連絡が取れるような環境を整えましょう。

実際に、入社後にパフォーマンスを発揮した中途採用者の8割が、入社前に人事担当者とコミュニケーションを図り、入社を決めるのに十分な情報提供を受けているというデータがあります。

参考:株式会社リクルートキャリア|「中途⼊社後活躍調査」 第2弾

たとえば、面接で説明できなかったことや、メンバーが聞きたかったことを話す機会を設けるなど、会社についての情報を積極的に提供します。配属先が決まっている場合、同じ部署の人や先輩社員と実際に会う機会を設定するのも効果的です。

入社直後のオンボーディング

入社直後は職場になじめるか、不安が最も大きくなる時期です。特に、即戦力として期待される中途入社者は意外と放っておかれがちになってしまうものです。社内で孤立しないように、新人を歓迎できる体制を整えることが重要です。

まずは職場や仕事に慣れてもらうために、企業独自の文化やルールのほか、業界や業務内容に対する理解を深めてもらいましょう。同時に、上司や先輩を中心にコミュニケーションを図るといったサポートを行います。

人事担当者の役割も大きく、こまめなケアが不可欠です。入社後5カ月以内に人事と面談を行った7割が、パフォーマンスを発揮しているという調査結果があるほどです。入社後も継続して実施されるサポートは、新メンバーに安心感をもたらします。

参考:株式会社リクルートキャリア|「中途⼊社後活躍調査」 第2弾

入社後のオンボーディング

入社数カ月後は少しずつ職場に慣れる一方、理想と現実のギャップを含め、自分のキャリアの方向性が見えてきます。早期離職の危険性もあるだけに、オンボーディングによるサポートが必要です。

職場では上司を中心に、コミュニケーションが取りやすい環境をつくりましょう。上司から積極的に声をかけるなどして、ある程度のコミュニケーション量を確保できるようにします。

配属先で相談できない内容は、人事面談でのフォローが必要です。上司と人事が役割分担し、不安や悩みを解消できるように働きかければ、離職防止だけでなく、仕事のパフォーマンス向上につながります。


オンボーディングを実施する際のポイント

オンボーディングによる効果を得るためには、事前の準備が欠かせません。ここからは、オンボーディングを実施する際のポイントについて解説します。

目標を細分化する

入社当初からいきなり大きな目標を掲げると、達成までの具体的なイメージが持てなかったり、目標を見失ったりと、モチベーションが下がる原因になりかねません。

目標を細分化して、小さな目標達成を積み重ねながら、最終目標を目指す「スモールステップ法」を取り入れるなど、「組織に貢献している」と感じられるような工夫が必要です。

また、上司や人事は新人が出した結果に対して、適切にフィードバックします。なぜなら、仕事の出来に対するフィードバックが、組織や職場の役に立っている実感を得るのに有効だという調査結果があるからです。そのためにも、フィードバックがしやすい職場環境づくりが不可欠です。

環境の構築・整備

オンボーディングを軌道に乗せるためには、環境の構築・整備が大切です。新加入のメンバーの定着を目的とする以上、企業や職場に慣れて戦力となるまで、継続的に行う必要があるからです。

たとえば、面談やSNSなどのコミュニケーションを通じたサポート環境、チーム内の受け入れ環境や研修後のフォロー環境の整備が挙げられます。

そのためにも、受け入れる側でもある既存の社員にも丁寧に周知することが必要です。社員の協力なくして、オンボーディングは機能しません。目的や取り組みをしっかりと伝えるだけでなく、上手く仕組みが動いているのか適宜チェックするなど、効果を上げるための働きかけを行います。


オンボーディングについてのまとめ

オンボーディングは、新たに採用した社員の離職防止や早期戦力化を目的とする取り組みです。企業側には人材採用・育成コストの削減や生産性の向上などのメリットがあり、従業員にとっても満足度向上というメリットがあります。

入社前から入社後にかけて3つのプロセスに沿って行うため、事前の環境の構築・整備は不可欠です。人材がなかなか定着しないとお悩みの会社経営者の方は、オンボーディング実施のポイントをしっかりと理解したうえで、導入を検討してみてください。

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監修者プロフィール

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宗像 陽子

officeたまこぶ 代表 / 国家資格キャリアコンサルタント

大学卒業後、地方新聞社のスポーツ記者などを経て、キャリアコンサルタントに転身。

公共機関や都内私立大学で学生や既卒者の就職支援に当たった後、フリーランスとして独立。

現在は、「その人のありのままを受け止める」姿勢を大切に、複数の大学で学生のキャリア支援に従事するほか、氷河期世代や高校生向けの講座への登壇、ライティングと幅広い活動を展開している。

新聞記者経験で積み上げた文章力を活かした応募書類作成や講座が得意。

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