コーチングとは? 意味や効果、手法を解説
コーチングは、スポーツなどで指導者を意味する「コーチ」に由来しています。
ビジネスにおけるコーチングは、ビジネスパーソンの育成やチームビルディングに用いられ、相手が持つ可能性を最大限に引き出し、主体性を高めることが目的です。
コーチングを成功させるには、コーチとなる上司やマネージャーがコーチングの本質を理解し、適切に実施することが重要です。
この記事では、コーチングの意味や効果、手法を解説します。
コーチングとは?
コーチングとは、一般的にスポーツなどで指導者としての立場にあるコーチが、選手などを指導する際に用いられる言葉です。
ビジネスにおけるコーチングは、ビジネスパーソンの育成やチームビルディングに用いられます。
上司やマネージャーがコーチになり、部下が抱える問題の解決を支援したり、成長につながるようなコミュニケーションを取ったりします。
成長につながるような答えはあくまでもコーチングを受ける人の中にあることが前提であり、相手のやる気を引き出して自己成長のきっかけを与えるのがコーチングです。
コーチングの由来と歴史
コーチングは、馬車の有名な産地だったハンガリーの「kocs」という地名に由来しているという説があります。
「コーチ(coach)」は、「馬車で目的地に連れて行く」という意味合いで用いられていました。
人材マネジメント術としてのコーチングは、1971年にティモシー・ガルウェイが発見し、著書『インナーゲーム』でビジネスコーチング術について語られたとされています。
コーチングとティーチングの違い
コーチングとよく混同されるティーチングは、特定の知識や技術を習得しているティーチャー(先生)が、その経験と知識を相手に直接教えながら成長を促すという指導方法です。
相手に対して指示・アドバイスをすることで、短期間でスキルなどを習得させるのが目的となります。
対してコーチングとは、相手が持つ可能性を最大限に引き出すためにコーチが質問型の関わりを行い、自ら行動するという自発性を促進し、掲げた目標の達成を支援するというコミュニケーション技法です。
コーチングの効果
コーチングには、次のような効果が期待できます。
- 自分で考えて行動できるようになる
- 潜在能力を引き出せる
- モチベーションを高められる
- オープンマインドで接することができるようになる
コーチングの目的は、目標を達成するために個人の中に既にある考えから自発的に解決策を導き出せるようサポートすることです。それにより、相手は自分で考えて行動できるようになります。
ティーチングと異なり、コーチングでは指示やアドバイスを一方的に伝えるわけではありません。
そのため、相手は自分の意思で決断し、その決断を尊重されていると感じるため、モチベーションを維持しやすいというメリットがあります。
また、コーチとの間はもちろん、チーム内での信頼関係を醸成することができ、お互いがオープンマインドで接することで結束力が高まることが期待されます。
コーチングに必要なスキル
コーチングに必要なスキルには、大きく分けて次の3つがあります。
傾聴
傾聴とは、相手の言葉に心から耳を傾けて、相互理解することです。
心理学者でカウンセリングの大家であるロジャーズは、傾聴には「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」が重要だといいます。
相手の話を聞くときには、まず相手の立場に立って共感を前提として関わります。
そして、相手の話の内容については、善悪や好き嫌いなど個人的な価値観で判断して否定せず、ありのままを受け入れて肯定的な関心を持って受け止めます。
また、わからないことはそのままにせず、その考えの真意を汲み取ることで、お互いの認識を一致させなければなりません。
質問
コーチングでは質問の仕方にも注意が必要です。
質問には大きく、限定質問・拡大質問・否定質問・肯定質問の4種類があります。
初対面の相手など、相手が緊張して関係性を築けていない場合は、イエスかノーで答えられるような「限定質問」で緊張を解きます。
そのあとは、答えを限定させずに相手の自由な発想で、さまざまな答えを引き出す「拡大質問」を行います。
答えに行き詰まることが多ければ、「否定質問(なぜできないのか? など)」「肯定質問(どうすればできるようになるのか? など)」などを織り交ぜながら、徐々に深く考えてもらうように接しましょう。
承認
承認は、相手のことを褒めるという意味で用いられますが、コーチングにおける承認は、それよりもさらに深い関わり方です。
相手の考え方や行動、存在そのものを認めたうえで、ちょっとしたプラスの変化や成果などにいち早く気づいて、そのことをポジティブなフィードバックとして伝えます。
人は他者から認められたいという欲求を持っており、コーチから承認されていることを実感できることで、目標達成に向けたやる気が高まります。
承認の重要な要素としては「共感する」「委譲する」「感謝する」などがあり、実際に言葉に出して相手に伝えることが大切です。
コーチングの手法
ここでは、コーチングの主な手法を解説します。
GROWモデル
GROWモデルとは、4つの単語の頭文字を組み合わせたものです。
- G(目標の明確化):Goal
- R(現実の認識、資源の把握):Reality、Resource
- O(選択肢の創出):Options
- W(目標達成の意志):Will
GROWモデルはコーチングの流れを表しており、4つのプロセスを経て自ら目標に向けて行動することを促します。
それぞれのプロセスと、コーチングの際に実践するための質問例などをついて詳しく解説します。
Goal(目標の明確化)
コーチングを通してどうなりたいのかを具体的にイメージします。現状の目標を言語化しましょう。
質問例)
- 今の仕事の目標はなんですか?
- 今の仕事で達成したいことはありますか?
Reality、Resource(現実の認識、資源の把握)
目標と現実とのギャップについて考え、活用できるリソースをチェックします。
目標に対しての現状を把握しましょう。
質問例)
- 今課題に思っていることはなんですか?
- 目標に対して、今は何%くらい達成できていますか?
- 今あなたが持っているスキルはなんだと思いますか?
Options(選択肢の創出)
目標達成のためにどのような選択肢があるかを考えます。
質問例)
- 目標達成のために、今の自分はどんな行動ができそうですか?
- まだ試していない方法はありませんか?
Will(目標達成の意志)
具体的な行動目標と計画を立てて、実際に行動します。
質問例)
- まずこの1カ月以内に何をしますか?
- いつからその行動を始めますか?
社内コーチングの実施方法
コーチングを自社で実施する際には、何よりもまずコーチングを行う側であるマネジメント層がコーチングの仕組みについて学ぶ必要があります。
コーチングに関する研修に参加するのはもちろん、実際にプロのコーチングを受けてみて、その有効性や進め方を理解しましょう。
コーチングを受ける側にも、自分で考えることの重要性などを認識させる必要があります。
最初から意識づけができていなければ、どのようなコーチングを行っても効果を得られません。
コーチングを行う際には、定期的な「1on1ミーティング」が一般的ですが、普段の日常会話の中でも意図のある質問を投げかけることで、相手の自発的な発言をうながすこともできるでしょう。
コーチングについてのまとめ
コーチングの意味や効果、手法を解説しました。
コーチングでは相手の主体性を重視するため、ときには相手の考えがまとまるまで、じっくりと待つ必要があります。
また、相手との関係性もコーチングの結果を左右するでしょう。
コーチングをする側は、広い心で相手を受け入れる気持ちを持ちましょう。
そうすれば、コーチングを受ける側が本音を言いやすくなり、効果が高まります。
まずはコーチングをする側が、自らコーチングを受ける側になり、本質を理解するところから始めてみましょう。
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