コアコンピタンスとは? ケイパビリティとの違いや企業事例を解説
企業の経営戦略では、自社の強みや市場での優位性が必要と言われますが、その際にコアコンピタンスという言葉が使われます。
コアコンピタンスは、企業の核となる能力や強みのことであり、独自性の高いサービスや、技術などを指します。
この記事では、ビジネスの世界で欠かせないコアコンピタンスについて、活用の仕方や企業事例を交えて解説します。
自社の経営力向上のためにぜひ参考にしてください。
コアコンピタンスとは?
コアコンピタンス(Core competence)とは、他社に真似できない「企業の中核的能力」のことを指すビジネス用語です。
企業の中核的能力とは、他社と比較して勝っている能力や強みのことであり、コアコンピタンスによって競合他社との差別化を図ることができ、優位性を保つことができます。
コアコンピタンスの起源
コアコンピタンスとは、G.ハメルとC.K.プラハラード著「コア・コンピタンス経営(日本経済新聞社 1995年)」で提唱され広がった概念です。
コアコンピタンスの定義としては、以下の3つの能力が挙げられます。
- 顧客に対して何らかの利益をもたらすことができる能力
- 競合相手が真似できない・真似されにくい能力
- 複数の商品・市場に推進できる能力
つまりは、独自性と応用度の高い有益な能力があることが、コアコンピタンスには必要になります。
コアコンピタンスを見極める5つの要素
G.ハメルとC.K.プラハラードは、著書「コア・コンピタンス経営」でコアコンピタンスを見極める5つの要素として以下の要素を挙げています。
模倣可能性(Imitability) |
模倣しにくい商品は、競争優位性を保つことができます。 |
移転可能性(Transferability) |
ほかの分野へ応用すること(移転する)ができれば、市場の変化にも対応できるでしょう。 |
代替可能性(Substitutability) |
他の技術で代替できないものは、独自性が高くなります。 |
希少性(Scarcity) |
希少性の高い商品は、普遍的な商品に比べて優位と言えるでしょう。 |
耐久性(Durability) |
長期に競争優位が保てず、すぐに不要になってしまうものでは、コアコンピタンスとは言い難いです。 |
これらの5つの要素から、自社のコアコンピタンスを絞り込んでいくことができるでしょう。
コアコンピタンスを評価する3つのステップ
コアコンピタンスは以下の3ステップで評価します。
- ステップ1.強みを洗い出す
まず、強みの洗い出しから始めます。この段階では、特に制限を設けず、自由な発想で多くの強みを挙げていくことが望ましいでしょう。
- ステップ2.強みを評価する
次に、洗い出した強みに対して、コアコンピタンスの3つの条件を備えているかどうかの視点で評価をし、整理していきます。
- ステップ3.強みを絞り込む
強みの評価が完了したらコアコンピタンスを見極める5つの要素を基準として、自社の強みの中でコアコンピタンスになり得るものを絞り込んでいきます。
コアコンピタンスとケイパビリティの違いと関係性
コアコンピタンスとよく似た概念にケイパビリティがあります。双方ともに「強み」という意味を持ち、よく比較される言葉です。
ほぼ同義語として使われる場合も多いですが、ケイパビリティの提唱者であるジョージ・ストークスらは、以下のように「ケイパビリティとコアコンピタンスは異なるもの」だと述べています。
- コアコンピタンス
バリューチェーンにおける個別の技術や製造能力などの中核的な強み
- ケイパビリティ
バリューチェーン全体に関連する組織能力の強み
つまりは、ケイパビリティは、コアコンピタンスよりも広い視点で語られるものです。
この比較の例として挙げられているのが、オートバイ事業におけるエンジン技術が「コアコンピタンス」で、ディーラー管理などの販売戦略が「ケイパビリティ」です。
コアコンピタンスを活かした経営とは
企業の中核的能力であるコアコンピタンスは、経営にも活用できます。そのような経営手法をコアコンピタンス経営と呼びます。
コアコンピタンス経営は、他社に真似することができない技術や製造能力によって市場での競争優位性を保ちます。
コアコンピタンスを主軸として事業を展開していく経営戦略になるため、目先の対応だけでなく広い視点を持つことも必要とされます。
コアコンピタンス経営のメリット
コアコンピタンス経営は、具体的な「モノ」に着目した経営手法ではなく、中核的な「能力」に着目した経営手法です。
そのため、市場の変化に対応しやすいことが大きなメリットとして挙げられます。
製品の場合、流行やトレンドによって売上が大きく増減する可能性があります。
しかし、コアコンピタンス経営については、自社の核となる強みを考案し、それを市場動向やニーズに合わせて製品に反映させていく手法のため、市場変化に左右されにくいと考えられます。
コアコンピタンス経営のデメリット
市場の変化に強いコアコンピタンス経営ですが、コアコンピタンスの獲得についての難易度は上昇しています。
技術やノウハウが飽和している近年では、コアコンピタンスと呼べるような能力の確立が難しくなっているのは事実です。
また、自社が確立したコアコンピタンスに固執することで時代の変化にも取り残されるというケースもありうるため、見極めが大切でしょう。
コアコンピタンスを取り入れた企業の事例
実際にコアコンピタンスを取り入れている大手企業の事例について紹介します。
誰もが知っている企業のためイメージしやすいでしょう。
これから取り組みを考えている方はぜひ自社での活かし方を参考にしてください。
シャープ
コアコンピタンスを取り入れた具体例として良い面と悪い面の両方が分かりやすいのがシャープの事例です。
シャープは「世界の亀山モデル」ブランドとして液晶テレビの一貫生産体制を構築して、強いコアコンピタンスを獲得し、売上も大きなものとなりました。
しかし、リーマンショックや他社の技術開発により液晶競争が激化し、業績は悪化。
その後、スマートフォンなどの中小型液晶がヒットし、経営は改善しましたが、さらにその後、小型液晶の競争激化により再び経営悪化を経験するといった、まさに時代の流れに左右された事例です。
コアコンピタンスは企業成長の大きな原動力となりますが、時代の流れを読んで適切に扱う難しさを感じさせる事例といえます。
富士フィルム
時代の変化に合わせてコアコンピタンス経営を成功させた事例として「富士フィルム」の経営が挙げられます。
富士フィルムはフィルムカメラのフィルムメーカーとして大きなシェアを持っており、このフィルム製造技術こそ、コアコンピタンスといえるものでしょう。
カメラのフィルム製造をコアコンピタンスとしていた富士フィルムですが、カメラのデジタル化が進み、フィルムの需要は大幅に減少しました。
そこで、フィルム製造で培ったナノテクノロジーなどのコアコンピタンスをうまく転用し、ヘルスケア領域に進出することで大きな成功を収めていることが窺えます。
コアコンピタンスのまとめ
コアコンピタンスとは、自社の核となる能力や強み、他社には真似できない独自のノウハウや技術のことを指します。
コアコンピタンスの取り組みは、時代の流れに併せながら、長期的に経営戦略を立てていくことが重要です。
コアコンピタンスを見極めるためには、5つの要素を軸に考えていきましょう。
自社のコアコンピタンスと、長期的な経営方針やビジョンを照らし合わせ、イメージしながら設定してください。
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