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第2回 働き方改革とは、変化への適応でもある

第2回 働き方改革とは、変化への適応でもある

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

VUCA時代、Gゼロ時代

適者生存、チャールズ・ダーウィンの言葉「生き残る種とは、最も強いものではない、最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」。変化への適応のため、スタッフ部門においては働き方改革を行う上で、いまの時代(変化)をどのように捉えれば良いのだろうか。

「VUCA時代」という言葉がある。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)、この四つの言葉の頭文字を取って表した時代のことである。何が起こっても不思議ではない時代。一寸先は闇、と言う時代を表している。

2016年の国民投票によりイギリスがEUからの離脱を決めたころから、そして、2017年のアメリカ・トランプ大統領就任から、このVUCA時代と言われるようになった。特に、政治主導で経済が引っ張りまわされ、その結果、経済、国民生活が大きく影響を受ける時代となっている。

「Gゼロ時代」という言葉もある。G7を構成する主要先進国が指導力を失い、G20も機能しなくなった国際社会を表す言葉。米国の地政学的リスクコンサルティング会社、ユーラシアグループの代表であり、政治学者のイアン・ブレマー氏が2011年より提唱している言葉である。

それはトランプ大統領のアメリカ・ファーストで加速されている。国際協調より自国第一主義、そしてポピュリズムと、国際的な枠組みが崩れ、まさにVUCA、何が起こってもおかしくない時代となっている。

未知との遭遇に対処するには

このVUCA・Gゼロ時代において想定されるのが、何が起こるか分らない、という意味での未知との遭遇である。初めての事態に対処しなければならないのだ。今回の新型コロナウイルスへの対応もまさにそうである。いきなり全社員在宅勤務、いきなり学校が休校。

未知との遭遇に対処するには、過去の経験値「Know How」が通用しない。必要なのは「Know Who」。つまり、知っている人をどれだけ知っているかである。専門家、プロフェッショナルとのネットワークをどれだけスタッフは持っているかが問われる時代なのである。

そのため、優秀なスタッフ部門のメンバーは外に出ることが多い。展示会、講演、コミュニティ等々、さまざまなところに出向き、人脈形成に励む。未知との遭遇に出会っても、知っている人(専門家)を頼り、アドバイスを受け、対処していくのだ。どれだけ手持ちの人脈カードがあり、事に及んではそのカードが切れるか。それがスタッフ部門の力量となってくる。

もう一つ大事なのが、課題管理。VUCA時代においては、日々発生するさまざまな情報、潮流の中で、自社にとってピンチとなるであろう項目、チャンスとなるであろう項目を捉え、その後の経過をWatch(観察)していくことである。課題として捉え、観察項目として管理していくのだ。

この中で、自社にとってリスクと判断されるものは、リスク管理の項目として、保険で手当てしたり、事前準備、予防措置を取り、万が一発生したとしてもリスクを最小限にすることが必要となる。そして、不幸にもそのリスク管理項目が実際に生じた場合は、危機管理として定められた手法で対処していくこととなる。この危機管理、リスク管理の前段階としての課題管理が重要となってくる。

この課題管理を行うスタッフ部門に求められる要件がある。それは、全社のことをどれだけ知っているかということである。全社のことを知っていなければ、自社に対して影響を与えるだろうと思われる課題管理の項目がピックアップできない。観察する対象、入手すべき情報のアンテナが立たない。したがって、スタッフ部門においては、自らの担当の専門性だけ磨くのではなく、所属する組織についても詳しく知る必要がある。

OODAループで即対応

では、課題管理として観察している項目への対処方法はどうしたら良いのだろうか。「OODAループ」という言葉がある。アメリカの航空戦術家であるジョン・ボイド氏が開発した、意思決定プロセスである。

PDCAというプロセスがある。これはしっかりと計画があり、その差分をいかに解消していくか、工場の生産管理手法である。一方、VUCA時代においては、スタッフ部門が対処しなければならない未知との遭遇では、PDCAを回せない。いきなり起こり、計画するどころではないからだ。

OODAループとは、観察(Observe)、仮説構築(Orient)、意思決定(Decide)、実行(Act)の流れである。観察とは先に記した課題管理のことであり、仮説構築とは自社事化することである。自社に置き換えた場合にどのような影響があるかを考えることである。その結果、ピンチとなることが想定されれば、すぐに意思決定をして行動を起こす。悠長に計画を立てて行動ということでは間に合わないのだ。

働き方改革を変化(人手不足)への対応として捉えれば、このような情報収集から変化への対応がそのベースとして必要なことがお分かりいただけただろう。次回では、この働き方改革の根底にある人手不足(変化)に対処する考え方を紹介していこう。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

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