第7回 スタッフ部門の働き方改革とは?
まずは足元の業務の効率化
働き方改革の司令塔、総務と人事(以降、スタッフ部門)。司令塔として満足に働き方改革を進めるのであれば、まずは自身が働き方改革を確実に遂行する必要がある。スタッフ部門における働き方改革とは、既存業務の効率化に他ならない。
既存業務を徹底的に効率化することで、人的リソース、時間的リソースを生み出し、働き方改革の施策を考える人手と時間を生み出さなければならないのだ。目の前の日々の業務に追われていては、正直それどころではない。全社の働き方改革の前にスタッフ部門自身の働き方改革が必要となる。
まずは、既存業務の可視化である。スタッフ部門では業務の属人化がはびこりやすく、誰がどのような仕事や課題を抱え、どのように進めているのかが判然としない。Aさんが休むと、「Aさんがいないので、明日Aさんが出社してからで良いですか」という会話が普通にされる。
社内サービス業としてあるまじき行為が散見される。全ては属人化が原因。また、それにより、他のメンバーの仕事のチェックができず、改善の提案もできない。担当している本人も、「先輩がやってきたので」、「昔からそのようにやっているので」と、業務プロセスに全く疑問を持たずに、旧来通り粛々とこなしている。
まずは全業務の可視化を行う。誰が、どのような業務を、どのような方法で、どのような工数を割いて、どのようなスケジュールで行っているのかを、聖域なく全て洗い出す。そして最も大事なのは、何のためにその業務を行っているのか、目的を明らかにすることである。
業務を効率化する上で、小手先の方法の改善より、その業務自体を無くしてしまえば、それは究極の業務効率化となる。そもそも価値を提供していない、誰も喜ぶ人がいない、そもそも使われていない、そのような存在意義のない業務を見つけ、即座に止めるのである。
業務改善、業務の見直しの王道は、「止める、減らす、変える」である。まずは止められないかを検討するのだ。そのための目的の可視化である。かのドラッカーも、ホワイトカラーのための生産性向上の6つのステップのいの一番に「不要な業務を止めること」、そして「本来やるべき業務に集中すべき」と言っている。
「止める」の次は「減らす」。量を減らす、質を落とす、スピードを落とす、などなど。そこまで要るのか、そこまで精緻なものが必要なのか、そのように後工程の要求レベルを確認して、それ以上のレベルでなくても良いのであれば、そのレベルを落として無駄な作り込みや努力を無くしていくのだ。
「変える」というのは、例えば正社員が行っていた業務を、テクノロジーに置き換える、BPOに委ねるということでもある。経産省が進めるデジタルトランスフォーメーションのタスク分解をして、どこまでを正社員で行い、どこからテクノロジーに置き換え、残りをどのようにBPOするかを考えていくのだ。
問い合わせの自己完結化を目指す
次にスタッフ部門の仕事改革として手を付けたいのが、スタッフ部門への問い合わせへの対応である。優秀なスタッフ部門は、これを現場従業員が自己完結できるようにしている。具体的には、スタッフ部門が対応していた依頼事項をメニュー化してイントラ上に掲載し、自身で解決できるように誘導している。
あるいは、FAQ画面をイントラ上に置き、問い合わせがある場合はそこから解決に結び付ける。全文検索のFAQを作ったり、チャット・ボットを構築して、直接スタッフ部門に問い合わせが来ないようにしている。その結果、問い合わせの八割が削減された、という事例もある。
どうしても見つけられないもの、レアな問い合わせは受けるのだが、スタッフ部門に問い合わせがあった場合は、まずはFAQ画面を見るように誘導していく。当初はそのFAQを利用する従業員は少ないため、いかに使わせるかが勝負である。根気よく誘導し続けていく。
FAQに無い問い合わせは随時FAQに追加していく、マイナーチェンジも必要だ。逆に、当初設定していたFAQであっても全くヒットしないものは、徐々に削除していく。利用状況を見ながらの地道な作業も必要となる。
また、この手のFAQで課題となるのが、スタッフ部門で使われている用語、言葉と、現場従業員が使っている用語、言葉が、同一項目であっても異なる場合だ。例えば、スタッフ部門では「出張申請書」と言っていても、現場従業員が「出張書類」と呼んでいれば、ヒットしない。そのようなことも把握しつつ、変更をかけていくのだ。
さらに、このFAQを構築しようとする場合、どのような問い合わせが日々来ているのか履歴を取っておくことも必要であるし、想定質問も考えなければならない。先の業務の可視化と同様に、始める前にかなりの苦労が伴うのだ。
端的に表現すれば、スタッフ部門の働き方改革、仕事改革は「山を越えなければ楽にならない」のだ。楽して楽にはならない。また、できるできないの議論ではなく、やるかやらないかの次元である。最初は相当苦労するが、できてしまえば余裕ができ、考える時間的リソースもでき、全社の働き方改革の司令塔として十分な活躍ができるのだ。