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第18回 戦略総務に必要なタスク分解とは

第18回 戦略総務に必要なタスク分解とは

経産省が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)。その中で重要な考え方が、タスク分解。「どこまでを人が、どこからがテクノロジーで、残りをどのようにBPOするか」。既存業務を可視化して、得意な人に得意なことをしてもらう、という意味だ。

大量のデータ処理を人間が行えばミスもするし、モチベーションも上がらない。そのような仕事はRPAに任せてしまう。外部にプロがいるのであれば、専門BPOに委ねる。

人は「考える」という、人本来の、人が最も得意とする部分の仕事にフォーカスする。タスク分解は、働き方改革においては必須の考え方だ。

得意な人に得意なことを任せる。このコンセプトとともに重要なことは、「空いた時間に何をするか」である。

先に記したように、人の得意分野である考えること、戦略を練ること、あるいは本来やるべき仕事でまだできなかった仕事に手を付ける。これが戦略総務でもある。

今回は、BPOについて記してみる。


この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

日本はアウトタスキング・レベル

日本のBPO(アウトソーシング)はグローバル基準から30年遅れていると言われている。日本ではアウトソーシングと言っても、単純作業の外注がほとんどで、アウトソーシングではなく「アウトタスクキング」と言われている。業務(タスク)を外に出す、業務の実行部分だけを外部に委託するレベルと言われている。

世界で言われるアウトソーシングは、戦略立案をはじめ、業務設計、管理責任、業務実行の全てを外部に委託する形態を言う。よって世界では、アウトソーシングではなく、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という言葉で表現される。アウトソーシング戦略を構築するところから、ノウハウを有する委託先にアウトソースするのだ。

日本は業務だけをアウトソースし、世界はアウトソーシング戦略から委託する。この差が30年あると言われる所以なのだ。BPOを活用している外資系企業の総務(厳密には、外資系には総務部はないが)は、本当に少ない人数で構成されている。ある従業員数3,500人の企業では、総務を一人で回している。

なぜ日本はアウトタスキングで留まり、BPOへとなかなか進まなかったのか。一つの理由として「何でも自前で対応してきた」というこれまでの経緯がある。ほとんどの社員が無限定社員で、明確なジョブ・ディスクリプションがない中、全て自前主義で対応してきた歴史があるからだ。「外部にお金を払うのであれば、何でも対応してくれる自社の社員に任せよう」という選択になり、社員もそれに応えてきたからだ。

BPOのメリットとデメリット

改めてBPOのメリットとデメリットを整理してみよう。

メリット

  • 限られたリソースをよりコアな部分に集中させることができる。
  • 専門企業に蓄積されたノウハウの活用によって業務プロセスを最適化し、効率的な業務運営が可能となる。
  • 専門知識やスキルを持つスタッフが業務を担当するので、法改正への対応や、最新のIT技術の導入などが可能となる。
  • 業務が見える化され、誰でも対応できるようマニュアルが整備され、業務の継続性が確保される。
  • ISMSやプライバシーマークの認証を取得している事業者も多く、適切なレベルのセキュリティが確保される。
  • 業務の効率化やスケールメリットにより、コストダウンが期待できる。

デメリット

  • 業務をコントロールできなくなる危険性がある。
  • 業務を丸投げしてしまい、その業務に精通したメンバーが異動などでいなくなると、アウトソーシングした業務の中身が分からなくなり、ブラックボックス化してしまうこともある。委託しても、しっかりと管理できる体制が必要。
  • 緊急対応がしにくくなることがある。内部で対応していれば何とかなることが、委託先の対応時間などにより機能しなくなることもある。
  • 情報漏えいなどのリスクが高まる(この点は実際に事件も発生している)。
  • デメリットは、アウトソーシングによる業務プロセスの分断と、外部に任せることでリスクが生じてしまうことだ。

パートナーとしてリスペクト

BPOの委託先とどのような関係を構築するかも大事なポイントだ。目的がコスト削減のみであれば、あるいは単純作業であるならビジネスライクな関係で良いだろうが、委託業務の改善や改革を望むのであるなら、パートナーとしての関係構築が必要だ。

必要な情報は提供しつつ、業務目的を共有しながら、ともに作り上げていく姿勢が重要。パートナーとして対等な関係で向き合うべきだ。ただ、どちらにせよ、委託先企業の厳正な評価、積極的な評価による適度な緊張感は必要となる。

業務に精通した、委託先のスタッフを管理できる人材の育成も必要だ。企業を取り巻く環境変化の激しい現在、一度委託したらその内容がそのまま、ということはあり得ない。変化に応じた要求、改善は自社の人間により的確に指示しなければならない。委託先の事業者を進化させることも、自社にとって大切なことなのだ。

アウトソーシングを考える場合に大事なのは、自部門だけの視点でアウトソーシングを考えてしまわないこと。自部門ありきではなく、企業全体から考えるのだ。自社にとって総務がやるべきことは何なのか。その業務を行うためには、総務は何を強化すべきなのか。その強化のための効率化、外部リソースの活用、そのためのBPOという流れ。決して、自部門だけの視点で考えてはならない。

そして、アウトソーサーの持つ情報やナレッジ、企業事例を活用するとともに、実際にアウトソースすることで総務にリソースを作り、会社を変える仕事に取り組むのだ。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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