ストレスチェックの方法とは? 導入から実施方法、注意点まで解説
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ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。
労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。
労働者のストレスの程度を把握し、高ストレス者に対して医師による面接指導などを実施することで、メンタル不調の未然防止を図ります。
本記事では、ストレスチェックの導入準備から実施手順、実施後の対応、注意点まで、実施方法を詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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- 基本方針を策定する
- 実施体制を確立する
- 従業員へ周知する
それぞれの準備内容について見ていきましょう。
基本方針を策定する
まずは、ストレスチェック実施に向けた基本方針の策定と実施規程を作成します。衛生委員会等で調査審議を行い、ストレスチェックの目的や実施時期、方法などを定めた実施規程を作成しましょう。
策定した基本方針と実施規程は、全ての労働者に周知徹底することが大切です。ストレスチェック制度の趣旨や目的を労働者に理解してもらい、適切な実施につなげるためには、丁寧な説明と周知が欠かせません。
実施規程は、労働者がいつでも確認できるよう、社内イントラネットへの掲載や配布資料の作成など、周知方法を工夫しましょう。
実施体制を確立する
ストレスチェックの実施には、実施者と実施事務従事者の選定により実施体制を整えなければなりません。実施者は医師、保健師等の医療専門職が務め、労働者のストレスの程度を評価します。
一方、実施事務従事者は、実施者の指示のもと調査票の配布・回収等の事務作業を担当しますが、人事権を有する者は不可とされています。
実施体制を下記の表にまとめました。
名称 |
実施者 |
実施事務従事者 |
ストレスチェック担当者 |
人事権の保有 |
NG |
NG |
OK |
従事内容 |
ストレスチェックの実施 |
実施者の補助 |
ストレスチェック実施計画の策定、実施計画などの通知 |
実施体制の確立には、社内の産業保健スタッフや外部機関の活用も検討すべきです。特に、実施者の選定は慎重に行いましょう。
専門的知識を有し、労働者の心身の健康に関して中立的な立場から関与できる人材を選ぶことがポイントです。
従業員へ周知する
ストレスチェック制度の目的や実施方法を従業員に周知します。受けるか否かは労働者の判断に委ねられており、受検が任意であることも合わせて説明しましょう。
ストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調の未然防止を図ることを目的としています。
従業員への周知は、ストレスチェックの目的や意義への理解を深めるとともに、プライバシーの保護や不利益取扱いの禁止についても丁寧に説明してください。
特に、ストレスチェックを受けなかったことで不利益を被ることはないことを明確に伝えることが大切です。経営者自らが制度の重要性を発信し、積極的な受検を促すことも効果的でしょう。
ストレスチェックを実施する方法
ストレスチェックの実施手順は、以下の流れに沿って進めていきます。
- 調査票を選択する
- 実施時の注意点を守る
- 高ストレス者を選定し通知する
ここでは、ストレスチェックを実施する際の具体的な方法を見ていきましょう。
調査票を選択する
ストレスチェックに用いる調査票は、必要な項目が含まれているものを選択してください。調査票には、仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートに関する項目を含むことが求められます。
厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」などを活用するのが望ましいでしょう。調査票の選択は、実施者が中心となって行いますが、事業場の特性や労働者の属性も考慮すべきです。
また、調査票の設問数や回答方式は、回答負担や集計作業の効率性にも影響するため、適切なものを選びましょう。調査票の妥当性や信頼性が確認されたものを使用し、適宜見直しを図ることも大切です。
実施時の注意点を守る
ストレスチェック実施時は、プライバシー保護と本人同意のない結果の提供禁止に十分注意しなければなりません。調査票の回答内容は機微な個人情報であり、その取扱いには細心の注意を払う必要があります。
ストレスチェックの結果は、実施者から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供してはならないのです。
労働者のプライバシーを守るためには、調査票の配布・回収方法や保管方法を工夫することが望ましいです。
封緘可能な回収ボックスを設置したり、実施事務従事者への守秘義務を徹底したりするなど、情報管理体制を整備しましょう。
また、ストレスチェックへの不参加を理由とした不利益取扱いの禁止を、労働者に繰り返し伝えることも忘れずに行ってください。
高ストレス者を選定し通知する
実施者はストレスチェックの結果から高ストレス者と評価された労働者について、医師の面接指導が必要かどうかを確認します。医師の面接指導が必要と認めた人には、その旨を本人に通知することが求められます。
高ストレス者の選定基準は、実施者の専門的判断に委ねられますが、各設問の点数化によって判定する方法が一般的です。
高ストレス者本人への通知は、実施者から直接行われ、通知方法は手紙や電子メールなど、本人の希望に応じて決定します。通知の際は、プライバシーに十分配慮するとともに、相談窓口など必要な情報の提供を行うようにしましょう。
ストレスチェックの高ストレスについて、以下の記事で詳しく紹介しています。
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ストレスチェックの高ストレス者とは? 企業の適切な対応方法を解説ストレスチェック実施後の対応
ストレスチェックの実施後は、以下のようなフォローが求められます。
- 医師による面接指導を実施する
- 集団分析結果を把握し職場環境を改善する
- 結果を保存し報告する
詳しい対応内容について見ていきましょう。
医師による面接指導を実施する
高ストレス者に対して、医師による面接指導を実施します。高ストレス者が面接指導の申出を行った場合、事業者は医師による面接指導の機会を提供する義務があるのです。
面接指導の結果、医師から必要な措置に関する意見聴取を行い、適切な就業上の措置を講じなければなりません。
また、事業者は面接指導の申出を理由とした解雇や配置転換など、労働者に対する不利益な取扱いを行ってはならないことにも留意しましょう。
面接指導を円滑に実施するには、申出方法の周知や、面接指導を行う医師の確保、面接指導の実施場所の整備など、体制づくりが重要です。高ストレス者のプライバシー保護を徹底しつつ、安心して面接指導を受けられる環境を整えましょう。
ストレスチェックの義務化について、以下の記事で詳しく紹介しています。
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ストレスチェックの義務化とは? 背景や目的、義務化の労働対象を解説集団分析結果を把握し職場環境を改善する
実施者が行うストレスチェック結果の集団ごとの分析結果は、職場環境の改善に活用することができます。
部署や職種等の集団ごとに結果を分析することで、ストレスの高い集団を把握し、職場環境の改善につなげることが可能です。
集団分析を行う際は10人以上の集団に分けるなど、個人が特定されないよう配慮しましょう。実施者から事業者に通知された集団分析の結果を衛生委員会等で十分に審議し、職場環境の改善につなげることがポイントです。
管理職に分析結果を共有し、具体的な改善策を検討・実施するとともに、改善状況を定期的にモニタリングすることも効果的でしょう。
ストレスチェック制度を、メンタルヘルス不調の未然防止と職場環境改善のための有効なツールとして活用していくことが求められます。
結果を保存し報告する
労働安全衛生法により、ストレスチェック結果を定められた方法で保存し、労働基準監督署へ報告しなければなりません。
ストレスチェックの結果は、実施者または実施事務従事者が5年間保存することが義務付けられています。結果の保存は、個人情報保護に十分留意し、適切に行いましょう。事業場外で保存する場合は、安全管理措置を講じることが望ましいです。
また、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、毎年一回、所轄の労働基準監督署長に対してストレスチェック結果の報告を行う必要があります。
労働基準監督署への報告は、「ストレスチェック結果報告書」を提出することで行います。報告内容に不備がないよう、十分に確認しましょう。
ストレスチェック実施における注意点
ストレスチェック実施では、以下のような注意点があります。
- 労働者の情報は個人情報として厳格に保護し、適切に取り扱う
- 受検は労働者の判断に委ねられていることを理解する
- 受検の有無によって不利益な取扱いを行ってはならない
- 派遣労働者やアルバイトなどにも実態に応じた対応をする
また、派遣元事業主や、常時50人未満の小規模事業場においても、可能な範囲でストレスチェックを実施し、労働者の心の健康確保に努めることが大切です。
ストレスチェック実施の際は、制度の主旨を正しく理解し、適切な運用を心がけましょう。ストレスチェックを実施する意味について、以下の記事で詳しく紹介しています。
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ストレスチェックは本当に意味がない? ストレスチェックを価値あるものにするためのポイントストレスチェック制度を活用し職場環境を改善しよう
ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調を未然に防止し、働きやすい職場環境を形成するための重要な仕組みです。
ストレスチェック制度の意義を理解し、適切な実施と集団分析による職場環境改善につなげることが、メンタルヘルス不調の防止につながります。
ストレスチェックを適切に実施し、結果を活用して職場環境の改善を図ることで、労働者の心の健康を支えましょう。この記事を参考に、ストレスチェック制度のスムーズな導入を目指してください。