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契約ライフサイクル管理(CLM)とは? 目的からシステム導入のメリット、選び方まで徹底解説

契約ライフサイクル管理(CLM)とは? 目的からシステム導入のメリット、選び方まで徹底解説

契約管理の高度化が求められる現代において、契約ライフサイクル管理(CLM)は企業の競争力を左右する重要な管理手法です。

近年、国際取引の増加や法規制の複雑化により、契約違反が企業経営に与える影響は年々大きくなっており、契約管理のあり方を見直すことは急務となっています。

本記事では、CLMの基本概念から具体的な管理方法、システム導入のメリットや選定ポイントまで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。CLMの導入を検討している方はぜひ参考にして、自社に最適な管理体制の構築にお役立てください。


この記事の監修者
弁護士法人山本特許法律事務所  パートナー弁護士 

契約ライフサイクル管理(CLM)とは?

契約ライフサイクルとは、1つの契約が作成されてから、その効力を失い終了するまでの一連の工程のことです。具体的には、契約書の作成、交渉、締結、履行、保管、更新、そして終了までの流れ全体が含まれ、各段階には固有の管理ポイントが存在します。

契約ライフサイクル管理(CLM)とは、この契約ライフサイクル全体を体系的に管理し、業務の効率化とリスクの最小化を目指す管理手法です。契約の進め方を標準化することで収益機会を最大化し、同時に法令遵守を徹底することに役立ちます。

契約の流れを可視化し、各段階を適切に管理することが、契約業務の基本となるのです。


契約ライフサイクル管理と従来の契約書管理の違い

CLMと従来の契約書管理の最大の違いは、契約書の保管だけでなく、作成から終了までの動的な全プロセスを管理対象とする点です。

従来の管理方法は、締結済みの契約書を保管し、必要に応じて参照するという静的な「保管」が中心でした。これに対してCLMは、契約の履行状況の監視や更新時期の管理も含む能動的な「プロセス管理」に重点を置いています。

この違いにより、契約内容の履行状況をリアルタイムで追跡したり、更新時期を自動的に通知したりといった積極的なアクションが可能です。


契約ライフサイクル管理が重要視される理由

現代のビジネス環境において、契約ライフサイクル管理の重要性は急速に高まっています。

以下では、CLMが重要視される3つの主要な理由について詳しく解説していきます。

  • 契約業務の属人化を防ぐ
  • 内部統制の強化とコンプライアンス遵守を実現する
  • DX推進に一役買う

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

契約業務の属人化を防ぐ

契約業務は担当者の経験則や個人的な判断に依存しやすく、業務の属人化が大きな課題となっています。

特定の担当者しか契約の詳細や交渉経緯を把握していない状況では、その担当者の異動や退職によって重要な情報が失われかねません。

また、属人的な業務は品質のばらつきを生むため、組織として一貫性のある契約管理は困難になります。新しい担当者の育成にも時間がかかってしまい、業務の停滞やトラブルの増加といったリスクも高まるでしょう。

CLMはプロセスを標準化し契約に関する情報を組織的に管理することで、誰でも一定の品質で業務を遂行できる環境を整えられます。

内部統制の強化とコンプライアンス遵守を実現する

近年、事業のグローバル化や法規制の複雑化により、内部統制の強化とコンプライアンス遵守が求められています。特に、契約違反は企業の信用失墜や多額の損害賠償に直結するため、厳格な管理体制の構築が急務です。

CLMは承認プロセスの記録や契約内容の可視化を通じて、不正防止やコンプライアンス違反のリスクを大幅に低減します。

また、監査対応においても、契約に関するすべての証跡が体系的に管理されているため、迅速かつ正確な対応が可能です。これにより、外部監査や訴訟対応の負担も軽減するでしょう。

DX推進に一役買う

企業全体のDXを推進するうえで、契約業務のデジタル化は避けて通れない重要な要素です。

CLMは、電子契約やAIによる契約書レビューなどの最新技術と親和性が高く、法務部門のDXを加速させる効果があります。

契約データをデジタル化して分析可能な状態にすることで、リスクの予測やコスト削減の機会を特定するなど、経営判断に役立つ知見を得られます。例えば、取引先ごとの支払遅延リスクの分析や、契約履行状況に基づく優先対応案件の抽出が可能です。

また、CLMは他部門のシステムとも柔軟に連携できるため、契約情報を全社的に共有・活用する環境を構築できます。


契約ライフサイクル管理の方法

契約ライフサイクル管理を実践するには、各プロセスを明確に定義し、体系的に管理することが重要です。

以下では、契約ライフサイクルの各段階について、具体的な管理方法を詳しく解説します。

  1. 契約書の作成を依頼・起案する
  2. 作成された契約書をレビューする
  3. 相手方と交渉し、社内承認を得る
  4. 電子または書面で契約を締結する
  5. 締結済み契約書を一元的に保管する
  6. 契約内容の履行状況をモニタリングする
  7. 契約の更新・見直し・終了を管理する

それぞれの方法を見ていきましょう。

1.契約書の作成を依頼・起案する

契約ライフサイクルの最初のプロセスは、事業部門が法務部門に対し、取引内容に応じた契約書の作成を依頼することから始まります。

従来は口頭やメールでの依頼が多く、必要な情報の伝達漏れや認識の齟齬が生じやすい状況でした。しかし、CLMシステム上の依頼フォームを使うことで、契約の目的、取引条件、リスク事項などの必要な情報を漏れなくインプットでき、手戻りを大幅に削減することが可能です。

また、依頼状況や進捗がシステム上で可視化されるため、事業部門と法務部門間のコミュニケーションも円滑に進みます。

2.作成された契約書をレビューする

法務部門は、依頼内容や過去の類似事例を基に契約書案を作成し、法的リスクの有無を多角的に確認・精査します。このレビュープロセスは、契約違反や紛争を未然に防ぐ重要な工程であり、専門的な知識と経験が必要です。

その際、AI搭載のCLMシステムを利用すると、一般には、リスクの高い条項の自動検出や修正案の提示といった支援を受けることができ、レビューの精度と効率が向上します。修正履歴やコメントもシステム上で一元管理される機能を持つものが多いため、複数人での共同レビューも効率的に進められるでしょう。

3.相手方と交渉し、社内承認を得る

作成した契約書案を基に相手方と交渉を進めながら、社内の承認プロセスを並行して実施することができます。交渉過程では契約条件の変更や修正が発生しますが、変更箇所や交渉経緯をシステムに記録することで、担当者が変わっても正確な情報を引き継ぐことができます。

社内承認については、予め設定したワークフローに従って自動的に承認依頼が送信される機能を有するものが多いため、承認漏れや長期滞留のリスクを大幅に削減できるでしょう。承認状況もリアルタイムで確認でき、ボトルネックとなっている箇所を特定して対策を講じることが可能です。

4.電子または書面で契約を締結する

双方の合意と社内承認が完了した後、最終版の契約書を用いて電子契約または書面での正式な契約締結ができます。近年では電子契約の普及により、締結プロセスは大幅に効率化され、印紙税の削減や郵送コストの削減といったメリットも享受できるようになりました。

特に、電子契約サービスと連携したCLMシステムを導入することで、締結から後続の保管プロセスまでをシームレスに行うことができます。締結日、契約当事者、有効期限などの重要情報はシステムに自動で登録され、後の管理・検索に活用することが可能です。

5.締結済み契約書を一元的に保管する

締結した契約書は、検索可能な状態で、セキュリティレベルの高いデータベースに一元的に保管されるのが通常です。適切な権限管理の下で共有されるため、必要な担当者が迅速かつ安全にアクセスできる環境を構築できます。

従来の紙ベースの保管では、必要な契約書を探すのに多大な時間を要していましたが、デジタル化により、瞬時に検索できるようになりました。契約内容、取引先名、締結日、契約金額などの条件で検索できるため、必要な契約書を即座に見つけられます。

また、契約書本体だけでなく、関連する見積書や仕様書などの文書を紐付けて管理することで、契約内容の全体像を容易に把握できるようになるでしょう。

6.契約内容の履行状況をモニタリングする

契約期間中は、支払い義務や納品義務など、双方が契約内容を適切に遵守しているかを継続的に監視する必要があります。これを怠った場合、契約不履行や遅延などのトラブルの原因になりかねません。

CLMシステムを導入すれば、支払期限や納品日などの重要なタスクに対して自動でリマインダー通知を設定できる機能を一般に有することから、対応漏れを防ぐことが可能です。

また、履行状況を定期的に確認し、その記録をシステム上で一元管理することで、万が一の不履行リスクを早期に察知することもできるでしょう。

7.契約の更新・見直し・終了を管理する

契約期間の満了が近づいたら、自動更新の有無を確認し、更新、条件見直し、または終了の適切な手続きを行います。特に、自動更新の契約については、更新時期を見落とすことで、不要な契約が継続されてしまうなどのリスクが生じかねません。

CLMシステムを活用すれば、契約終了日や更新期限が近づいた際にリマインダー通知を送信できるため、対応の抜け漏れを防ぐことができます。関係者への通知や承認も自動化できるので、社内手続きをスムーズに進めることが可能です。

また、過去の契約データや履行状況を分析することで、次回の契約交渉を有利に進めるための戦略的な材料として活用できるでしょう。


契約ライフサイクル管理システムを導入するメリット

契約ライフサイクル管理システムの導入は、企業の契約管理体制を根本から変革し、多大なメリットをもたらします。

以下では、CLMシステム導入がもたらす4つの主要なメリットについて詳しく解説します。

  • 時間と手間を削減できる
  • リスクを可視化し、ガバナンスを強化できる
  • 契約情報を一元化し、データとして活用できる
  • 契約の更新漏れや失効を防止できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

時間と手間を削減できる

CLMシステム導入のメリットは、契約書の作成から管理までの定型業務を自動化し、大幅な工数削減を実現する点です。従来は手作業で行っていた契約書の作成、レビュー、承認などのプロセスが自動化され、担当者の作業負担が劇的に軽減されます。

また、ワークフロー機能により承認プロセスが迅速化するため、契約締結までのリードタイムを最大50%以上短縮できる事例も報告されています。契約書の検索や管理台帳への転記といった付随業務も不要になり、担当者はより戦略的で、付加価値の高い業務に集中できるようになるでしょう。

リスクを可視化し、ガバナンスを強化できる

契約プロセス全体をシステム上で管理することで、不正やヒューマンエラーのリスクを低減し、企業のガバナンスを大幅に強化できます。誰がいつ何を承認したかの証跡がすべて自動的に記録されるため、内部監査や外部監査への対応が容易になり、内部統制の要件も確実に満たせます。

また、AIを活用したリスク検知機能を有するシステムを使えば、コンプライアンス違反の可能性がある箇所を検出し、法務部門のチェック体制を支援することも可能です。これらの機能により、契約に潜むリスクを事前に把握し、適切な対策を講じられるでしょう。

契約情報を一元化し、データとして活用できる

紙や各部署のサーバーに散在していた契約書を1つのシステムに集約することで、契約情報を全社横断で活用できる貴重な情報資産に変えることが可能です。経営層は必要な契約情報をリアルタイムで把握できるようになり、データに基づいた迅速かつ的確な意思決定を行えます。

蓄積された契約データを分析することで、取引先ごとのリスク評価、収益性分析、コスト削減の機会発見など、経営改善につながる知見を得られるでしょう。例えば、類似契約を比較することで、より有利な条件での交渉が可能になったり、不要な契約の洗い出しによるコスト削減を実現したりできます。

契約の更新漏れや失効を防止できる

システムのアラート機能が契約の更新期限や終了期限を自動で通知するため、更新漏れや契約失効といった重大なミスを確実に防止できます。これにより、有利な条件での契約を意図せず失ったり、不要な契約を自動更新してしまったりする事態を回避できるでしょう。

更新時期を計画的に管理できるようになることで、十分な準備期間を確保し、より良い条件での交渉を試みることも可能です。また、契約の自動更新条項を事前に把握し、必要に応じて解約手続きを行うことで、不必要な支出を削減できます。


失敗しない契約ライフサイクル管理システムの選び方

ここでは、システム選定で失敗しないための5つの重要なポイントについて詳しく解説します。

  • 自社の解決したい課題に対応しているか
  • 管理したい業務範囲を網羅できるか
  • 担当者が直感的に操作できるか
  • 既存システムと連携しやすいか
  • 導入後のサポート体制が充実しているか

システム選びを誤ると、期待していた効果が得られない可能性もあるため、これらのポイントを押さえて選定しましょう。

自社の解決したい課題に対応しているか

システム選定の第一歩は、自社が最も解決したい課題を明確に定義することです。例えば、業務の属人化解消やリードタイムの短縮、コンプライアンス強化など、最も優先すべき問題を特定しましょう。

課題が明確になれば、それを解決するために必要な機能の優先順位をつけることができ、システムの機能がその要件を過不足なく満たしているか評価できます。承認プロセスの遅延が課題であれば、柔軟なワークフロー機能を持つシステムを優先的に検討すべきです。

多機能さだけに目を奪われず、自社の課題解決に直結する機能を備えているかという視点で選ぶことが、失敗を避ける鍵となります。

管理したい業務範囲を網羅できるか

CLMシステムを選ぶ際は、契約書作成から保管、更新管理まで、自社が管理したい業務プロセス全体をカバーできるかを見極める必要があります。

一部の業務しかデジタル化できないシステムでは、かえって業務が分断され、全体としての効率が低下する可能性があります。例えば、契約書の保管機能は充実していても、承認ワークフローが弱いシステムでは、結局手作業での承認が必要となり、期待した効果が得られません。

自社の業務に必要な機能を備えたシステムを選ぶことで、真の業務効率化が実現できるのです。

担当者が直感的に操作できるか

CLMシステムは法務部門だけでなく、営業や調達など多くの事業部門が日常的に使用するため、誰でも直感的に操作できる分かりやすさが不可欠です。

どんなに高機能なシステムでも、操作が複雑で使いづらければ、現場に定着せず、結局使われなくなってしまうリスクがあります。導入前には必ず無料トライアルやデモを活用し、実際の業務シナリオに沿って複数の担当者で操作感を試し、全員が無理なく使えるか判断しましょう。

画面の見やすさ、必要な情報へのアクセスのしやすさ、エラー時のメッセージの分かりやすさなど、細部まで確認することが重要です。

既存システムと連携しやすいか

現代の企業では、電子契約サービス、SFA/CRM、ERPなどのさまざまなシステムが稼働しており、CLMシステムもこれらと連携する必要があります。

API連携などにより既存システムとデータを自動的に同期できれば、二重入力の手間を省き、データの整合性を保ちながら業務全体の効率が向上します。例えば、CRMシステムと連携することで、顧客情報と契約情報を紐付けて管理し、営業活動に活用することが可能です。

システム連携ができない場合、CLMシステムが社内で孤立し、全社的なデータ活用の妨げとなってしまうリスクがあります。

導入後のサポート体制が充実しているか

システム導入時の初期設定支援や、導入後の問い合わせ対応など、ベンダーのサポート体制の充実度は導入成功の重要な要素です。特に初めてCLMシステムを導入する企業では、専任の担当者による伴走支援や、定期的な操作研修の開催など、手厚いサポートが欠かせません。

また、システムトラブルが発生した際に迅速に対応してくれる体制があると、業務への影響を最小限に抑えられます。サポートの対応時間、対応言語、サポートチャネル(電話、メール、チャット)なども事前に確認しましょう。


最適な契約ライフサイクル管理で、事業成長を加速させよう

契約ライフサイクル管理(CLM)は、契約の作成から終了まで全プロセスを体系的に管理し、企業の競争力を高める経営手法です。

これにより、契約業務の効率化やリスクの軽減、内部統制の強化が実現し、蓄積された契約データを戦略的に活用することで、企業全体の生産性向上にもつながります。

システム導入の際には、自社の課題に対応した機能の有無や管理したい業務範囲のカバー状況、操作や連携のしやすさ、さらにサポート体制の充実度を総合的に評価することが成功の鍵です。

これらのポイントを押さえて、自社に最適なCLMシステムを選ぶことで、契約管理の高度化と事業成長の加速を実現できるでしょう。


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監修者プロフィール

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上米良 大輔

弁護士法人山本特許法律事務所 パートナー弁護士

2009年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、2012年にオムロン株式会社に社内弁護士第1号として入社、以降約7年にわたり企業内弁護士として、国内外の案件を広く担当した。特にうち5年は健康医療機器事業を行うオムロンヘルスケア株式会社に出向し、薬事・ヘルスケア規制分野の業務も多数経験した。

2019年、海外の知的財産権対応を強みとする山本特許法律事務所入所、2021年、弁護士法人化と共にパートナー就任。知的財産権案件、薬事規制案件を中心に、国内外の案件を広く取り扱う。

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