フリーアドレスの電話対応はどうする? 代表電話の課題を解決する5つの方法

フリーアドレスは導入コストが低く、柔軟な働き方につながる一方で、固定席がないことから、電話対応が困難になりやすいです。しかし、工夫次第では、フリーアドレス特有の課題を克服することができます。
本記事では、フリーアドレスで電話対応が困難になる理由やその解決策、フリーアドレスの電話システムのメリットや選び方などを詳しく解説します。
フリーアドレスによる電話対応が課題になる理由
働き方改革の一環として、フリーアドレスを導入する企業は多いです。しかし、従来の固定電話による電話対応との相性は良くありません。
フリーアドレスによって生じる電話対応の問題は、以下のとおりです。
- 担当者の居場所が分からず、取り次ぎできない
- 電話番が固定化され、不公平感が生まれる
- 取り次ぎの非効率さが生産性を下げる
ここでは、上記の問題について詳しく見ていきましょう。
担当者の居場所が分からず、取り次ぎできない
フリーアドレスでは、従業員が固定の席を持たず、毎日異なる席に座ります。そのため、電話を受けた人が担当者の居場所を把握するのが難しく、スムーズな取り次ぎができません。
オフィス内を歩き回って担当者を探す時間が発生し、取り次ぎ担当者の本来の業務が中断されてしまいます。大規模なオフィスでは、担当者を見つけるまでに5分以上かかることも珍しくありません。結果として顧客を長時間待たせてしまい、顧客満足度の低下や商談機会の損失につながるリスクがあります。
電話番が固定化され、不公平感が生まれる
フリーアドレス環境では、電話機の近くに座っていたり、たまたま出社していたりする従業員が「電話番」として固定化されやすいです。特定の人に電話対応が集中すると、業務負担に偏りが生じ、従業員の間に不公平感や不満が蓄積される原因となります。
電話対応の多い従業員は、1日に何十回も業務を中断させられ、集中力の低下と生産性の悪化を招きかねません。加えて、総務部や管理部門など、電話対応が多い部署の従業員は「電話番」として出社を余儀なくされ、フリーアドレス制度の恩恵を受けられない問題も発生しています。
取り次ぎの非効率さが生産性を下げる
電話の取り次ぎという本来価値を生まない業務が増えることで、従業員一人ひとりの業務効率が低下し、組織全体の生産性に悪影響を及ぼします。担当者を探す時間、取り次ぎメモの作成、担当者への連絡といった作業が要るため、1件の電話対応に10分以上かかることも珍しくありません。
また、テレワーク中の従業員への取り次ぎはさらに複雑です。チャットやメールでの連絡、折り返し電話の調整など、二重三重の手間が発生します。
フリーアドレスの電話問題を解決する方法
ここまで紹介したフリーアドレスによる電話対応の問題は、工夫次第で解決することができます。
フリーアドレスの電話問題を解決する方法は、以下のとおりです。
- クラウドPBXで会社の電話をスマホで受ける
- 個人の携帯電話を内線化する
- 電話代行サービスに一次対応を依頼する
- 代表電話そのものを廃止・縮小する
- 受付システムを導入する
ここでは、上記の解決方法について詳しく解説します。
クラウドPBXで会社の電話をスマホで受ける
クラウドPBXを導入すれば、個人のスマートフォンで会社の代表番号や部署番号宛の電話を直接受けられます。インターネット回線を利用するため、オフィス、自宅、外出先など、場所を問わず、どこにいても会社の電話として使用可能です。
従業員がどこにいても、自分のスマホで直接電話に対応できるので、煩わしい取り次ぎ業務が一切不要になり、業務効率が向上するでしょう。専用アプリを利用すると、内線通話も無料で使えるため、テレワーク中の人とも場所を問わず、スムーズな連携を行えます。
個人の携帯電話を内線化する
FMC(Fixed Mobile Convergence)サービスを利用することで、従業員個人の携帯電話を会社の内線電話として活用できます。このサービスでは、個人の携帯電話から会社の代表番号で電話をかけられるため、プライベートの番号を取引先に知らせる必要がありません。
携帯電話会社が提供するサービスのため、音質が安定しており、既存の携帯電話網を活かせる点が大きなメリットです。ただし、BYOD(Bring Your Own Device)のルール策定や通信費用の公私分計、セキュリティポリシーの整備など、厳密な管理体制の構築が求められます。
電話代行サービスに一次対応を依頼する
電話代行サービスは、会社の代表電話にかかってくる全ての電話を、外部の専門オペレーターが一次対応するサービスです。プロのオペレーターが用件を正確に聞き取り、その内容をチャットやメールで担当者に直接通知するため、社内での取り次ぎが必要ありません。
営業時間外や休日の電話対応も可能で、24時間365日の対応により、ビジネスチャンスを逃さずに済みます。従業員が電話対応から完全に解放されることで、本来の業務に集中でき、組織全体の生産性が向上するでしょう。
代表電話そのものを廃止・縮小する
思い切って会社の代表電話番号を廃止し、問い合わせ窓口をWebフォームやチャットボットに一本化する方法も選択肢の1つです。電話による突発的な業務中断がなくなることで、従業員は自分のペースで業務を進められるようになります。
問い合わせ内容がテキストで記録されるため、情報の正確性が向上し、対応履歴の管理が容易になるのもメリットです。ただし、電話での問い合わせを希望する顧客も多いため、取引先への丁寧な事前アナウンスと、代替手段を十分に周知することが欠かせません。
受付システムを導入する
来客対応用の受付システムを活用し、電話の取り次ぎ依頼も含めてSlackやTeamsなどのチャットツールへ直接通知する方法もおすすめです。受付システムと連携すれば、来訪者情報と電話の要件が担当者のデバイスに即座に通知されるため、迅速な対応が実現します。
システムが自動的に担当者を特定して通知を送信するので、受付担当者は従業員の座席を探し回る必要がありません。担当者はPCやスマホで通知を確認できるため、会議室にいても、別フロアにいても、タイムリーに要件を把握することが可能です。
フリーアドレスの電話対応におけるメリット
フリーアドレスの電話対応におけるメリットは、以下のとおりです。
- 場所を選ばず、会社の電話に対応できる
- 固定電話機が不要になり、コストを削減できる
- 取り次ぎの手間をなくし、業務に集中できる
- 多様な働き方に対応しやすくなる
ここでは、上記のメリットについて詳しく解説します。
場所を選ばず、会社の電話に対応できる
クラウドPBXなどを活用すれば、オフィス、自宅、カフェ、出張先など、働く場所を問わず、会社の電話に出られます。これにより、テレワークやハイブリッドワーク、ワーケーションなど、従業員の多様な働き方を実現できるでしょう。
従来は「電話番」のためだけに出社を余儀なくされていた従業員も、在宅勤務に変更することが可能です。そのため、全従業員が公平にフリーアドレス制度の恩恵を受けられるようになります。
固定電話機が不要になり、コストを削減できる
クラウドPBXは物理的な固定電話機やPBX(構内交換機)が不要なため、機器の購入費用や設置工事費を大幅に削減できます。従来型のビジネスフォンシステムでは、初期投資に数百万円かかることも珍しくありません。一方、クラウドPBXなら、費用をほぼゼロに抑えられます。
電話回線の敷設や機器のメンテナンス、故障時の修理費用なども不要となり、ランニングコストを大幅に減らすことが可能です。オフィスのレイアウト変更やフロア移転の際に、配線工事を気にしなくて良いのも魅力でしょう。
取り次ぎの手間をなくし、業務に集中できる
担当者のスマートフォンやPCに直接着信するシステムを導入すれば、電話を取り次ぐという業務が完全に不要です。電話の呼び出し音や取り次ぎの声が減ることで、オフィスが静かになり、集中しやすい環境が生まれます。
従業員は自身の業務を不意に中断されることがなくなり、クリエイティブな作業にも集中して取り組めるでしょう。取り次ぎメモの作成や、伝言の伝達ミスがなくなるのもメリットです。
多様な働き方に対応しやすくなる
電話対応における場所的な制約が完全になくなることで、テレワーク、時短勤務、フレックスタイムといった、多様な働き方を推進しやすくなります。育児や介護、病気療養などの事情を抱える従業員も、在宅での業務継続が可能となり、離職防止や定着率の向上にもつながるでしょう。
また、居住地を問わず人材を採用できるようになるのもメリットです。地方在住の優秀な人材や、海外の専門家などとも連携が取りやすくなるので、企業の採用競争力が格段に強化されます。
フリーアドレスの電話システムを選ぶ際のポイント
フリーアドレスの電話システムを選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。
- 自社の業務内容と規模に合っているかを確認する
- 初期費用と月額費用を比較検討する
- クリアな音声品質とセキュリティを確かめる
- 無料トライアルで操作性を試す
ここでは、上記のポイントについて詳しく解説します。
自社の業務内容と規模に合っているかを確認する
電話システムは、自社の業務実態と規模に合った機能を持つシステムを選ぶことが重要です。電話の発着信頻度、コールセンター業務の有無、外線・内線の利用比率などから、自社に必要な機能を洗い出してください。
営業部門が多い企業では発信機能や通話録音機能が、サポート部門が中心の企業では着信振り分けやIVR機能が必要となるでしょう。
また、現在の従業員数だけでなく、今後の事業拡大や組織変更の可能性を考慮し、アカウント数の増減に柔軟に対応できるサービスを選ぶべきです。加えて、既存のCRM(顧客管理システム)やグループウェア、チャットツールとの連携可否も必ず確認しましょう。
初期費用と月額費用を比較検討する
電話システムにかかるのは、導入時の初期費用だけではありません。月額基本料金、通話料、オプション料金といった、総合的なコストを算出して複数のサービスを比較しましょう。
自社の通話パターンを分析し、内線通話、市内通話、市外通話、携帯電話への通話、国際電話など、それぞれの通話料を試算します。
この際、基本プランに含まれる機能の範囲と、録音機能やAPI連携など追加料金が必要なオプション機能を把握しておきましょう。また、番号ポータビリティ費用、サポート費用、解約時の違約金なども事前に確認しておくべきです。
クリアな音声品質とセキュリティを確かめる
ビジネス利用において、音声の途切れや遅延、ノイズのない安定した通話品質は、顧客満足度に直結するため、極めて重要です。インターネット回線を利用するVoIP技術では、ネットワークの品質が通話品質に影響するため、十分な帯域幅の確保が欠かせません。
また、通信の暗号化、不正アクセス防止、なりすまし防止など、企業の情報資産を守るための万全なセキュリティ対策が実装されているかを確認しましょう。サービス提供事業者がISO27001などのセキュリティ認証を取得しているか、SLA(サービス品質保証)を提供しているかも信頼性の指標となります。
無料トライアルで操作性を試す
本格導入の前には、無料トライアルを活用し、管理画面の使いやすさやスマートフォンアプリの操作性を実際に試すことが重要です。ITに不慣れな従業員が利用することを想定し、マニュアルを見なくても直感的に基本操作を行えるか確認しましょう。
さらに、着信時の操作、保留・転送の方法、履歴の確認方法など、日常的に使用する機能がスムーズに操作できるかも検証します。実際に利用する複数の従業員、特に電話対応が多い部署の社員に試用してもらい、現場目線でのフィードバックを収集してください。
最適な電話環境を構築し、フリーアドレス導入を成功させよう
フリーアドレス環境での電話対応は、取り次ぎが困難になるほか、電話番が固定化され、不公平感が生まれやすくなります。これらの課題の解決には、クラウドPBXや受付システムの導入、携帯内線化、電話代行サービスの活用などが効果的です。
また、適切なシステムを導入すれば、コスト削減と業務効率につながるほか、場所を選ばずに電話対応ができて多様な働き方が可能になります。
システム選定では、自社の業務内容と規模に合っているか判断したうえで、コスト、音質、セキュリティ、操作性を総合的に評価することが重要です。本記事の内容を参考に、自社に最適なフリーアドレスの電話システムを導入しましょう。