入退室管理システムの費用相場は? 料金の内訳から選び方まで徹底解説

入退室管理システムの導入を検討する際、最も気になるのが費用面ではないでしょうか。システムの費用は、提供形態や認証方法によって大きく異なります。予算オーバーや機能不足に陥らないためにも、それらの種類別に費用相場を知っておくことが肝心です。
本記事では、入退室管理システムの費用相場やその内訳、費用を抑える方法などを解説します。入退室管理システムの導入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
【提供形態別】入退室管理システムの費用相場を比較
入退室管理システムの費用は、提供形態によって大きく異なります。特に、クラウド型とオンプレミス型、認証方法による費用感の違いを把握することが、適切なシステム選定のうえで欠かせません。
ここでは、それぞれの提供形態における費用相場と特徴について詳しく紹介します。
クラウド型の費用
クラウド型の入退室管理システムは、自社でサーバーを構築・管理する必要がありません。そのため、初期費用を数万円から数十万円程度に抑えられます。機器代と簡単な設置工事のみで導入でき、大規模なシステム構築が不要なため、特に中小企業やスタートアップ企業に人気です。
システム利用料として、月額数千円から数万円のランニングコストが発生しますが、常に最新のセキュリティ対策や機能アップデートが適用されます。管理するドア数や登録ユーザー数に応じた従量課金制が多く、事業規模に合わせて柔軟にプランを変更できる点も魅力です。
オンプレミス型の費用
オンプレミス型は、自社内に専用サーバーを構築しなければいけません。そのため、初期費用が数十万円から数百万円、大規模施設では1,000万円を超えることもあります。サーバー機器、ソフトウェアライセンス、ネットワーク構築、設置工事にお金がかかり、導入時にはまとまった予算が必要です。
クラウド型と異なり、月額費用は基本的に発生しません。そのかわり、システムの維持管理や故障対応は自社で行わなければならず、IT部門の専門知識が求められます。独自のセキュリティポリシーを適用できるため、大企業や他システムとの連携が必要な場合に適した形態です。
認証方法による費用の違い
認証方法によって必要な機器が異なるため、システム全体の費用にも影響します。ICカードやスマートフォン認証は、既存の社員証や個人のスマートフォンを活用できるため、1ドアあたり5万円〜15万円程度で導入可能です。
指紋認証や顔認証などの生体認証は、専用の高精度リーダーが必要なため、1ドアあたり20万円〜50万円と高額になる傾向があります。セキュリティレベルと利便性、予算のバランスを考慮し、場所ごとに認証方法を使い分けることも有効です。
入退室管理システムの費用を構成する主な内訳
入退室管理システムにかかる費用は、どのような内訳なのでしょうか。
入退室管理システムの費用の主な内訳は、以下のとおりです。
- 機器や工事にかかる「初期費用」
- システム利用料などの「月額費用」
- 機能追加で発生する「オプション費用」
ここでは、上記の費用について詳しく解説していきます。
機器や工事にかかる「初期費用」
初期費用は、カードリーダー、電気錠、コントローラーなどの機器購入費と、それらを設置するための工事費で構成されます。小規模オフィスで数ドアの場合は、10万円〜50万円程度です。一方、大規模施設で数十ドアとなると、数百万円に達することもあります。
既存のドアに後付けできる電池式の簡易型製品を選べば、配線工事がいりません。そのため、工事費を削減したい場合には、簡易型製品の設置を検討するのも1つの手でしょう。
システム利用料などの「月額費用」
月額費用は、主にクラウド型で発生します。システム利用料、データ保管料、サポート料などが含まれ、安定した運用に欠かせない費用です。
基本プランは月額5,000円〜3万円程度が相場で、管理するドア数や登録ユーザー数に応じた従量課金制が一般的となっています。24時間365日のサポートや定期的なセキュリティアップデート、障害時の復旧対応なども月額費用に含まれることが多いです。
オンプレミス型の場合、システム利用料は発生しませんが、任意加入の保守サポート契約で月額1万円〜5万円程度かかるケースがあります。
機能追加で発生する「オプション費用」
オプション費用は、基本機能以外に勤怠管理連携、監視カメラ連携、来訪者管理機能といった、追加機能を利用する際に発生します。特定のエリアのみ認証レベルの高い生体認証を導入するなど、柔軟にセキュリティ強化をしたい場合、視野に入れるべきでしょう。
導入時に不要でも、後から追加できる場合が多いため、将来的な拡張性も考慮して確認することが重要です。
入退室管理システムの導入費用を抑える方法
入退室管理システムの導入費用は、工夫次第で抑えることができます。
入退室管理システムの導入費用を抑える方法は、以下のとおりです。
- 補助金や助成金を活用する
- 複数の業者から相見積もりを取る
- 必要な機能を見極める
- 既存の設備を活用できるかを確認する
ここでは、上記の方法について詳しく解説します。
補助金や助成金を活用する
中小企業のIT化を支援する「IT導入補助金」を活用すれば、導入費用の最大3分の2(上限450万円)の補助を受けられます。入退室管理システムは、業務効率化や生産性向上に寄与するITツールとして補助対象となることが多いです。
補助金の対象となるシステムや申請期間が定められているため、公募要領をしっかりチェックする必要があります。多くのシステムベンダーが補助金申請のサポートを提供しているので、導入相談時に活用可能な補助金について確認するとよいでしょう。
複数の業者から相見積もりを取る
複数の業者から見積もりを取ることで、自社の要件に対する適正な費用相場を把握できます。単なる価格比較だけでなく、提案内容の充実度やサポート体制まで、総合的に評価しましょう。
見積もり依頼時は、管理するドア数、必要な機能、既存設備の状況など、要件を明確に伝えることで、正確な比較が可能になります。また、他社の見積もりを提示すると、初期費用の値引きや無償オプションの追加など、価格交渉を有利に進めやすいです。
必要な機能を見極める
多機能なシステムは、魅力的に見えるかもしれません。しかし、使わない機能が多いとコストが無駄になるため、本当に必要な機能を見極めることが重要です。
まずは「セキュリティ強化」「勤怠管理連携」など、導入の主目的を明確にしましょう。そのうえで、管理したいドアや最低限の機能に絞って導入し、運用しながら必要に応じて拡張していくのが賢明です。
従業員アンケートや各部門責任者へのヒアリングを通じて、現場のニーズを正確に把握し、過不足のない要件定義を行いましょう。
既存の設備を活用できるかを確認する
すでに使用している電気錠、ICカード、社員証などを新システムでも流用できれば、ハードウェア費用を大幅に削減できます。特に、FeliCa対応の社員証や交通系ICカードは多くのシステムで利用可能なため、新たにカードを発行する必要がありません。
ただし、システムによっては特定メーカーの機器にしか対応していない場合もあるため、互換性を事前に確認する必要があります。また、配線工事が不要な電池式やワイヤレスタイプの製品を選ぶのも、費用を抑えるのに有効です。
費用だけで決めない! 入退室管理システム選びのポイント
入退室管理システムの選定では、初期費用や月額料金だけでなく、多角的な視点でシステムを評価しましょう。
入退室管理システム選びのポイントは、以下のとおりです。
- 確保したいセキュリティレベルを明確にする
- 導入後のサポート体制を確認する
- 拡張性や外部システムとの連携性を確かめる
ここでは、上記の選定ポイントについて詳しく解説します。
確保したいセキュリティレベルを明確にする
入退室管理システムは、「誰が」「いつ」「どこに」出入りしたかの記録だけでなく、不正侵入を確実に防げるセキュリティレベルが必要です。一般的なオフィスエリアと、サーバー室や役員室などの重要エリアでは、求められるセキュリティレベルが異なります。そのため、エリア別の対策が欠かせません。
高セキュリティエリアには、なりすましが困難な生体認証や複数の認証を組み合わせた、多要素認証の導入を検討すべきです。また、システムの脆弱性対策や、通信の暗号化など、物理的なセキュリティ以外の対策も確認しておきましょう。
導入後のサポート体制を確認する
機器の故障やシステムトラブルは、企業のセキュリティを脅かします。そのため、迅速で的確なサポート体制も重要な選定基準です。
24時間365日の電話サポート、リモート診断、現地への駆けつけ対応など、自社の運用時間に合わせたサポート内容を選びましょう。加えて、導入時の初期設定支援、管理者向けトレーニング、従業員への操作説明会といった、スムーズな運用開始のためのサポートも充実していると、スムーズに運用を開始できます。
拡張性や外部システムとの連携性を確かめる
企業の成長に伴う従業員数の増加や新拠点の開設に、システムが対応できるかを確認しましょう。ユーザー数やドア数の追加が簡単にでき、追加費用が明確なシステムを選ぶことで、将来的な拡張時のコストを予測しやすくなります。
また、勤怠管理システムと連携すれば、入退室記録をそのまま出退勤打刻として利用でき、業務効率化も図れるでしょう。会計システム、人事システム、ビジネスチャットなど、既存システムとのAPI連携に対応していれば、業務全体の自動化が進みます。
費用と機能を理解して、最適な入退室管理システムを導入しよう
入退室管理システムの費用感は、提供形態によって異なります。クラウド型は初期費用が安く、オンプレミス型なら月額費用がかかりません。また、認証方法も費用に影響し、ICカード認証は安価で導入しやすく、生体認証は高額ながらもセキュリティレベルの高さが特徴です。
導入費用を抑える方法には、IT導入補助金の活用、複数社での相見積もり、必要機能の見極め、既存設備の活用などがあります。そして、費用だけでなく、セキュリティレベル、サポート体制、拡張性などもシステム選定に欠かせない要素です。
本記事で紹介した費用相場やポイントを参考に、自社に最適な入退室管理システムを導入しましょう。