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Excelで生産管理を始める方法|メリット・デメリットも解説

Excelで生産管理を始める方法|メリット・デメリットも解説

製造業において、生産管理は収益を左右する重要な業務です。しかし、高額な専用システムを導入するのはハードルが高いと感じている方も多いのではないでしょうか。そんなときは、システムを導入する前に、まずは身近なExcelで生産管理を始めてみるのがおすすめです。

本記事では、Excelを活用した生産管理の方法や、メリット・デメリット、注意点を詳しく解説します。Excelで生産管理を始めたいと考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。


Excelで生産管理を行うことは可能

多くの企業ですでに導入済みのExcelは、生産管理にも十分使えます。日常業務で使い慣れた従業員が多いため、特別な教育コストをかけることなく、すぐに生産管理を始められるのが魅力です。

また、専用の生産管理システムの導入には、数百万円から数千万円の費用がかかる傾向があります。一方で、すでにインストールされているExcelを使うなら、新しいソフトウェアの購入が必要ありません。圧倒的に低コストで生産管理の仕組みを構築できるのが大きな強みと言えるでしょう。

関数やピボットテーブル、マクロなどの機能を活用すれば、プログラミングの専門知識は不要です。自社の業務フローに合った管理表を、柔軟に作れます。


Excelで生産管理を行うメリット

Excelを使った生産管理には、導入の手軽さや運用の柔軟性など、さまざまなメリットがあります。特に主要なメリットは、以下の3つです。

  • 導入コストをかけずに始められる
  • 特別な研修なしで運用できる
  • 管理項目を自由にカスタマイズできる

ここでは、上記のメリットについて詳しく解説します。

導入コストをかけずに始められる

多くのPCには、Microsoft Officeが標準搭載されています。そのため、生産管理にExcelを使えば、新たなソフトウェアの購入費用が一切かかりません。

高額な専門システムの場合、初期費用だけで数百万円かかることもあります。特に、資金力に限りがある中小企業にとって、費用をかけずに生産管理を始められる理想的な選択肢と言えるでしょう。

また、月額利用料などのランニングコストも発生しないため、長期的に見ても費用対効果が非常に高いです。浮いた予算は、他の設備投資や人材育成に充てられるのも大きな利点です。

特別な研修なしで運用できる

Excelは、多くの従業員が日常業務で使い慣れているため、新しいツールの操作方法を覚えるための研修が必要ありません。専門的な生産管理システムを導入する際には、大規模な研修が必要になる場合もありますが、Excelならすぐに実務での活用を開始できます。

担当者の急な異動や退職による引き継ぎが発生しても、後任者が比較的スムーズに業務を引き継げるのもメリットです。これにより、業務の継続性を確保しやすくなります。

管理項目を自由にカスタマイズできる

Excelの大きな強みは、自社の製品特性や独自の製造プロセスに合わせて、管理したい項目を自由に追加・変更できる柔軟性にあります。既成の生産管理システムでは対応が難しい、業界特有の管理指標や特殊な工程の管理も、Excelなら簡単に実現可能です。

また、現場の担当者が見やすく使いやすいように、セルの色分けやレイアウト、文字サイズなどの書式も自由に変えられます。視認性の高い管理表を作成すれば、見間違いによるミスも減らせるでしょう。


Excelで生産管理を始める方法

Excelを使った生産管理は、基本的な管理表の作成から始まります。生産管理に必要な管理表は、主に以下のとおりです。

  • 生産計画表で納期と生産量を管理する
  • ガントチャートで各工程の進捗を見える化する
  • 在庫管理表で過剰在庫や欠品を防ぐ
  • 便利な関数を活用して作業を効率化する

ここでは、上記の方法について解説します。

生産計画表で納期と生産量を管理する

生産計画表とは、受注情報を基に「どの製品を」「いつまでに」「いくつ生産するか」を一覧化した、生産管理の基本となる管理ツールです。この計画表を作成することで、生産全体のスケジュールが明確になります。その結果、原材料の手配や人員配置を適切に行え、納期遅れの防止にもつながるでしょう。

Excelでは、A列に品番、B列に製品名、C列に数量、D列に納期、E列に着手日などの項目を設定し、条件付き書式で納期が近い案件を色分けするだけで、実用的な生産計画表を簡単に作成できます。

ガントチャートで各工程の進捗を見える化する

ガントチャートは、縦軸に作業内容や工程名、横軸に日付を配置し、各工程の予定と実績を棒グラフで視覚化した、進捗管理に欠かせないツールです。これにより、各工程の進捗状況が一目で把握でき、計画とのズレを早期に発見して、必要な対策を迅速に講じられます。

Excelの条件付き書式機能を活用すれば、セルに色を付けることで簡易的なガントチャートを作れます。また、図形描画機能を使えば、より見やすいチャートも作成可能です。

在庫管理表で過剰在庫や欠品を防ぐ

在庫管理表は、原材料、部品、仕掛品、製品の在庫数を正確に記録し、適正な在庫量を維持するための管理ツールです。品番ごとに入庫数と出庫数を日々記録し、現在庫数を自動計算すれば、在庫の過不足を正確かつリアルタイムに把握できます。

在庫の見える化により、不要な在庫を抱えることによる資金の固定化や保管コストの増加を防げます。また、欠品による生産停止や販売機会の損失といったリスクを、大幅に低減させられるでしょう。

便利な関数を活用して作業を効率化する

Excelの関数を使えば、日々の管理業務を効率化できます。関数ごとの具体的な用途は、以下のとおりです。

関数 用途 具体例
VLOOKUP関数 データを自動で参照・表示 品番を入力するだけで製品名、単価、仕入先などの関連情報を別シートから自動で参照・表示させる。
IF関数 条件に応じた処理の自動化 在庫数が安全在庫を下回ったら赤字で警告を表示する。
納期が近い案件をハイライトする。
SUMIF関数・COUNTIF関数 特定条件に合致するデータの集計 特定の製品、特定の期間における生産数を効率的に集計し、月次レポート作成の時間や手間を省く。


Excelで生産管理を行うデメリット

Excelは手軽で便利なツールですが、本格的な生産管理を行ううえで、いくつかの制限があります。主な制限は、以下のとおりです。

  • リアルタイムな情報更新に対応できない
  • データ量の増加で動作が重くなる
  • 他システムとの連携や高度な分析は難しい

ここでは、上記のデメリットについて解説します。

リアルタイムな情報更新に対応できない

Excelファイルは、基本的に単一ユーザーでの編集を前提に設計されており、複数人が同時に編集することが困難です。

そのため、即時の情報共有が不可能なのが課題です。現場で発生した進捗の遅れや急な仕様変更などの情報が管理表に反映されるまでにタイムラグが生じ、正確な状況把握が遅れる傾向にあります。

また、最新情報に基づいた迅速な意思決定ができないため、急な計画変更やトラブルへの対応が後手に回りやすいです。結果として、納期遅延や機会損失につながるリスクがあるでしょう。

データ量の増加で動作が重くなる

生産実績や在庫データを数年間にわたって蓄積していくと、ファイルサイズが肥大化し、Excelの起動に数分かかったり、計算処理が極端に遅くなったりする問題が発生します。

データの入力、検索、集計といった日常的な作業に余分な時間がかかるようになり、業務効率が著しく低下し、生産性に直接的な悪影響を及ぼしてしまいます。

最悪の場合、ファイルが破損して開けなくなり、長年蓄積した貴重な生産データや顧客情報が一瞬で失われる危険性もあり、企業にとって致命的な損失となりかねません。

他システムとの連携や高度な分析は難しい

Excelでは、販売管理システムや会計システム、生産設備のIoTデータなど、他の業務システムとデータを自動で連携させることは技術的に難しいです。

蓄積したデータを多角的に分析したり、AIを活用した需要予測を行ったり、複雑な生産シミュレーションを実施したりといった高度なデータ活用には向いていません。

データ連携や高度な分析を行うには、CSVファイルでの手作業による転記や、VBAプログラミングなどの専門的な知識が必要となり、多くの手間と時間がかかります。


Excelで生産管理を行う際の注意点

Excelで生産管理を行う場合、その手軽さゆえに陥りやすい問題があります。特に気を付けるべきポイントは、以下のとおりです。

  • ファイルが属人化しないように管理する
  • ヒューマンエラーによるデータ破損を防ぐ
  • 定期的なバックアップを必ず実施する

ここでは、上記の注意点について詳しく解説します。

ファイルが属人化しないように管理する

作成者しか理解できない複雑な関数の組み合わせや、説明のないマクロの使用は避けましょう。誰でも内容を理解し、修正可能な状態を保つのが重要です。

ファイルの命名規則(例:生産計画表_YYYYMMDD)、保存場所、更新手順、承認フローといった運用ルールを明確に文書化し、チーム全体で徹底することが欠かせません。

属人化が進むと、担当者の異動や退職によって「このファイルの使い方がわからない」という事態に陥り、生産管理業務そのものが停滞するリスクを抱えてしまいます。

ヒューマンエラーによるデータ破損を防ぐ

誤ったセルへの上書き、数式の削除、行や列の誤った挿入・削除といった人的ミスは、生産計画全体に影響を及ぼす重大なエラーにつながる可能性があります。

入力規則の設定、シートやセルの保護機能を積極的に活用し、数式が入った重要なセルや、マスターデータが格納されている領域を誤って編集できないように設定しておくと安心です。

しかし、これらの対策を施しても入力ミスを完全には防げません。定期的なデータの整合性チェックや、異常値を検出する仕組みの構築も併せて行いましょう。

定期的なバックアップを必ず実施する

ファイルの破損、誤った上書き保存、PCの故障、ランサムウェア被害といった不測の事態に備え、定期的にファイルのバックアップを取る運用体制の構築が不可欠です。

誰が(担当者名)、いつ(毎日業務終了時)、どこに(共有サーバーの指定フォルダ)バックアップを取るのかを明確にルール化し、チェックリストで確実に実行される体制を構築しましょう。

クラウドストレージの自動同期機能や、Windowsのファイル履歴機能を活用することで、手作業によるバックアップの漏れを防ぎ、より確実なデータ保護を実現できます。


Excelでの生産管理から業務効率化を実現しよう

Excelを活用した生産管理は、低コストで手軽に始められる優れた方法であり、特に中小企業にとって有効な選択肢です。しかし、リアルタイム性の欠如やデータ量の制限など、Excelならではの課題も存在します。

そのため、まずはExcelで生産管理を行い、自社の成長段階に応じて適切なツールへ移行していくことがおすすめです。本記事で紹介した方法や注意点を参考に、Excelでの生産管理を業務効率化の第一歩として踏み出してみましょう。


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