五感を活用した、心に響くコミュニケーション術
五感のクセ「優位感覚」とは
人には利き腕があるように、その人にとって使いやすい感覚(五感)があります。それは、視覚・聴覚・身体感覚(触覚・味覚・嗅覚を含む身体の感覚)のどれかで、その人の「優位感覚」と呼びます。
この優位感覚は人それぞれ違うもので、各タイプの特徴を理解することによって、プロのコミュニケーターが使っている特別なスキルを手に入れ、相手の心に響くコミュニケーションが可能になります。
ここで、各タイプの特徴と見分け方をご紹介しましょう。
「優位感覚」タイプの特徴と見分け方 ≪書式参照≫
例えば、「海辺」の様子を思い浮かべてみてください。
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あなたは次のどれが思い浮かびましたか?
(1) 海や空や砂浜の映像
(2)波や風の音、海辺の話し声
(3)日差しの暖かさ、海水の温度、砂の感触
中心的に思い浮かべた内容が(1)なら、あなたは視覚優位タイプ。(2)なら聴覚優位タイプ。(3)なら身体感覚優位タイプの可能性が考えられます。
(1)視覚優位タイプの特徴は、絵やイメージでものごとを捉えやすいことから、外見を大事にしたり、話し方のテンポが早いという傾向があります。
(2)聴覚優位タイプの特徴は、音や言葉を大切にすることから、響きのよいブランドや肩書が好きだったり、論理的に筋道立てて考えるという傾向があります。
(3)身体感覚優位タイプの特徴は、感触や直感を大切にすることから、居心地の良さを大事にしたり、落ち着いたテンポでゆっくり話すという傾向があります。
≪詳細は、「書式」を参照してください≫
「優位感覚」に合わせたトーク術
これらをどのように活用するのか、車のセールスを例にして見てみましょう。
仮にあなたが車のセールスを行っているとします。各タイプの特徴を踏まえ、それぞれのタイプに対して、例えば次のようにアプローチすると良いでしょう。
≪視覚優位タイプに対して≫
「ボディのスタイルと色をよくご覧ください。このスタイリッシュなデザインと爽やかなブルーは美しく、どこをドライブしていてもそのシーンに映えるでしょう」
≪聴覚優位タイプに対して≫
「この車種のブランド名は、ステイタス・シンボルとして米国でも大変人気があります。エンジン音が静かで、静寂なドライブ空間を楽しめます」
≪身体感覚優位タイプに対して≫
「ドアを開け閉めしてみてください。作りが頑丈なため、手にずっしり感じる重厚感が違います。シートにお掛けいただいた乗り心地も抜群です」
このように表現することで、各タイプのお客さんにフィットした影響力ある営業トークを繰り広げることができるのです。
コミュニケーションの達人も活用した「優位感覚」
これら優位感覚タイプの違いを意識することで、相手に伝わる話し方や心に響くコミュニケーションができるようになります。各タイプの心に響く言葉を使うために、書式の「一般例」を参考にしてください。隣の空欄「他の例(記入欄)」には、各優位感覚タイプで使用されうる他の例を考え、記入してみてください。
歴史に名を残している名演説の多くは、すべての優位感覚タイプの人の心に届く言葉づかいをしています。例えば、キング牧師の「私には夢がある(I have a dream)」演説の中には、視覚・聴覚・身体感覚タイプの心に響く言葉がまんべんなく入っています。だからこそ、多くの人々の心を捉えたのでしょう。
人はそれぞれ自分の優位感覚を通して、独自のやり方で周囲の世界を認識しています。優位感覚を理解するメリットは、人によって異なる固有の世界観を知る手掛かりが得られることです。相手の「見て」「聞いて」「感じて」いる世界をともに楽しみ、相手のタイプに合わせて向き合うとき、あなたはすでに卓越したコミュニケーターの仲間入りをしていると言えるでしょう。