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一回目の緊急事態宣言、総務の働き方はどうだったのか?

データシリーズ1

一回目の緊急事態宣言、総務の働き方はどうだったのか?

『月刊総務』で、2020年6月に全国の総務担当者に、一回目の緊急事態宣言での対応についてアンケート。320件の回答を頂いた。

今回は、緊急事態宣言下の総務の実態について解説していく。


この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

緊急事態宣言下、フルリモートワークができた総務は1.6%

緊急事態宣言中の総務のリモートワーク実施状況について尋ねたところ、以下の結果となった。

・交代制で毎日ではないが週に数回出社した:40.0%

・交代制で毎日最低でも1人は出社するようにした:33.1%

・ほとんど毎日出社していた:25.3%

・完全にリモートワークだった:1.6%

多くの企業の総務が交代制で出社していたようだ。

いきなり、そして強制的なリモートワーク。既にリモートワークを実施していた企業はスムーズに移行できたようだが、過去に全くリモートワークを実施していない企業は大慌てで実施することとなった。その中で、最も慌てたのが総務部門。リモートワークができる環境整備から規程の整備、もろもろの準備に追われ、正直、リモートワークどころではなかったと思う。他の部門がリモートワークに移行してから、やっと自らのリモートワークを考え出した、そんなところが実態ではなかっただろうか。

また、他の部門がリモートワークに移行するとともに、その実施期間内においても、さまざまな問い合わせや対応に追われ、総務自身がリモートワーク状態で対応しきれず、あるいは、とても対応できるとは思えず、そのまま出社して仕事を続けたところもあったようだ。いずれにせよ、総務部のリモートワークはそもそも想定しておらず、結果、1.6%という数字になったのであろう。


総務がリモートワークできない三大課題

緊急事態宣言中のリモートワーク期間に総務が出社した理由を尋ねたところ、「郵便物の対応」が79.7%で最多、次いで「契約書等の押印」が60.3%、「代表電話の対応」が49.8%の順となった。

先に記した、総務のフルリモートワーク率1.6%。フルリモートワークを阻んだ三大課題が、郵便物、押印、代表電話である。緊急事態宣言にもお構いなしに、郵送物は届くし、代表番号に電話は掛かる。そして契約書や請求書などにハンコ文化が根強く残る日本においては、誰かが押印しなければならず、通常、押印・印章管理は総務の管轄だ。この三大課題により、他の部門がリモートワークに入ったとしても、総務の誰かが対応しなければならないのだ。

ただ、この三大課題も解消しつつある。押印については、国も重い腰を上げ脱ハンコに踏み切った。押印を不要にしたり、電子契約や電子押印といったサービスが数多く提供されはじめた。代表電話についても、転送サービスを利用することで自宅でも対応することができるようになった。郵送物の対応についても、転送サービスを利用したり、開封して中身をスキャンし電子データとして担当者にメールやチャットで転送する、そんなサービスも出ている。宅配便についても、定期的にアウトソーサーが集荷して担当者の自宅に転送する、そんなサービスもある。いち早くそのようなサービスの情報を入手し導入に踏み切った総務では、フルリモートワークが実現しているようだ。

三大課題に続いて、オフィスの環境整備や備品対応が挙げられている。現物への対応を総務が行うがゆえに出社しなければならないためだ。オフィスの環境整備は、故障対応が多いのではないだろうか。フルリモートワークであればそもそもオフィスに人はいないので、オフィスで何かが起こる、備品が足りない、壊れた、ということは生じない。つまり、一人でも出社していれば、「何かがあるといけないから、総務は出社するべきだ」という状態に陥るのだ。

現物については、テクノロジーの活用だけでは対応しきれない。モノが動く以上、誰かが対応しなければならない。もし総務が対応しないのであれば、外部のアウトソーサーにBPOすることが考えられる。修理や不足物がある場合は、出社した社員が総務に連絡し、総務から外部に発注する。あるいは、出社した社員からそのまま外部へ連絡を入れるようなフローにしておく。さらにテクノロジーを使うのであれば、故障したり一定数モノが減ったら、IoTの技術を使って自動発注されるようにしておく。いずれにせよ、この現物への対応は、総務の三大課題に比べて、解決するにはさらに一工夫が必要な課題でもあるのだ。

入社・退社に関わる対応については、一つの作業で終わるものではない。複数の作業が積み重なっての対応となる。名刺の発注、パソコンの準備、必要な備品をそろえたり、レイアウト変更もあるかもしれない。様々な作業を同タイミングで処理するがゆえにリモートでは対応しきれない。来客対応は、有人受付であれば誰かが対応しなければならない。無人受付で、かつ、来客があればそのまま面談者に連絡が入るといった一気通貫の受付システムであれば、総務が介在する必要はない。


まずはリモートワークができる環境整備から

リモートワークの導入によって総務の仕事が増えたか尋ねたところ、42.8%が「はい」と回答。増えた仕事の内容については、PCやwi-fiの手配をはじめとする社員のリモートワーク環境整備に関連する業務が多く挙げられた。とにもかくにも、社内規程よりも、まずは仕事ができる環境の整備に、最重要事項として対処しなければならなかった。

ノートパソコン、wi-fiルーター、オンライン会議のためのヘッドセットやカメラ。多くの総務担当者が手配に走り回った。家電量販店では品薄となり、環境整備がままならない企業も続出した。環境整備が整い、いざ社員が仕事を始めると、社内のサーバーの容量を超え、繋がりにくかったりサーバーが落ちた企業も多かった。結果、曜日によりサーバーアクセスできる人を限定したり、ローテーションで回すことで急場をしのぐ企業もあった。

増えた仕事の内容については、以下のような回答であった。

・社員のwi-fi・テレワークPCの手配

・全社員へのスマホ支給対応

・リモートワークの規程、制度の整備

・出社する人数が少ない分、電話や来客の応対が増えた

・郵便物などをPDFで在宅勤務の社員と共有する作業が増えた

・助成金の申請など

・勤怠管理の細密化(主勤務場所、健康状態)

・書類のPDF化

・衛生関係業務(マスクの配布、アルコール消毒液の補充等)

次回は、リモートワークで導入したITツールについて見ていくことにする。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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