総務の仕事。「オフィスの作り方」
総務から会社を変えるシリーズ
オフィス作りはどう進めていけば良いか
コロナ禍により、オフィスのあり方が大きく変化してきています。当初はオフィスか在宅かの二元論でしたが、いまはオフィスも在宅も、そしてサードプレイスも。働く場の多様性は、そのような流れになってきています。ハイブリッドワークという言葉も定着しそうです。すると、オフィスは役割を変えたとしても、存在していくと思われます。そして、このタイミングでオフィスのレイアウトや役割を見直そうとしている企業も多いでしょう。しかし、オフィスレイアウトを考える、オフィス什器を選ぶ……。専門の部署でもない限り、そうそうない経験でしょう。一体全体、オフィス作りはどのように考えていけば良いのでしょうか?
「自分でレイアウトを作らないといけない。どうしよう?」
まずは、他社のオフィスレイアウトを見てみましょう。オフィス家具・什器メーカーでは、自社のオフィスを展示場にして見学を受け入れているところが多くあります。あるいは、オフィスレイアウトのコンテストで受賞した会社なども、見学を受け入れているところがあります。まずは、世の中でどんなレイアウトが流行っているのか、図面や写真だけではつかめない空間作りを実際に見てみましょう。
それとともに、自社内のヒアリングも欠かせません。オフィスを実際に使うのは現場の社員です。現状の不都合を解消するための良いきっかけともなりますので、多くの社員に現状の不満やアイデアを聞いてみましょう。そのヒアリング結果を、他社のレイアウトを参考にしながら解消できないか検討します。
「予算に限りがあるけれど、家具を安く手に入れるには?」
中古のオフィス家具・什器の販売会社に当たってみましょう。サブスクモデルで提供している企業も出始めています。新品に比べ格安で揃えることができます。ただ、在庫数によって色や種類が揃えられない可能性はあります。新品で揃えられる場合は、家具の基準を作ります。机・椅子・テーブル等を使用場面ごとに統一しておくと、レイアウト変更があっても社内で流用できます。家具や什器の種類は極力種類を少なめにしておくことがポイントです。
「おしゃれオフィスにしたいけれど、デザイナーってどう選ぶの?」
デザイナーを選ぶというよりも、レイアウト変更・移転を事業とする「プロパティマネジメント(Property Management=PM会社」を選ぶことになります。当然、オフィス家具・什器メーカーでもレイアウト設計はできますが、自社製品を使うという制約があります。それを避けるのであれば、独立系のPM会社を選びます。どの会社も施工の実績をサイトに掲載していますから、イメージに近い実績を持つ会社を選びます。
「業者に丸投げはしたくないけれど、総務はどこまで関わればいいの?」
総務の役割は、オフィス・コンセプトを定め、それを元に決定していくことです。また、大きな役割として社内調整もあるでしょう。施工会社が提示してきたレイアウトやアイデアを関係部署と討議し、最終決断をするのです。判断軸をしっかりと定め、ぶれないことが重要です。
「コミュニケーションを良くしたいけれど、パーティションや仕切りをどうしよう?」
現状、多くのオフィスでは仕切りを作らず、オフィスを一望できるレイアウトが多いようです。間仕切りやパーティションを置かずに、どこからでも見渡せるオフィスです。誰がどこで何をしているかが丸見えにはなりますが、コミュニケーション活性化のためには、極力仕切らない方が良いでしょう。
働き方から考えるオフィス作り
レイアウトにまつわる疑問を解説してきましたが、オフィスレイアウトを考えるとき、机や椅子、キャビネットの種類から選ぶ方はいないでしょう。まずは、レイアウト変更後にどのような働き方を演出したいのか、そのイメージから考え始めるのではないでしょうか? いまの働き方をどのように変えたいのか、自社にとって必要な新たな働き方はどんなものか。それをイメージし、その実現をサポートするオフィスのあり方を考える、という順番でしょう。「ワークスタイル変革をワークプレイス変革がサポートする」という図式です。
社員の理想は、ヒアリングしないことにはイメージできないでしょう。現場社員も巻き込みながら、イメージを膨らませていきます。移転プロジェクトチームには各部から参加者を募りましょう。そこで、どのような働き方をしたいのか、どのように働くと成果が上がるのか、ということを議論します。いま不都合なことは何か、どうすればより良くなるのか、という「コト」に焦点を絞ります。つまり、オフィスレイアウトは、家具や什器などの物理的な「モノ」から発想するのではなく、それを利用して行われる「コト」を実現するツールとして捉えることが大切なのです。
働き方をイメージする
一般論として必要な「コト」は二つ考えられるでしょう。それは、「効率性」と「創造性」の向上です。本業が効率良く進められ、アイデアが豊富に湧いて創造性が高まる働き方です。この二軸、効率性と創造性を具体的なオフィスに結び付けていきます。
働き方をもう少しブレイクダウンすると、「定型業務を行う場面」と「企画書作成・ブレストのような創造的な場面」の二つに分けられます。そして、それぞれを一人で行うのか、複数人で行うのかにより、以下の4つのパターンが想定されます。
定型業務 × 一人で集中
定型業務 × 複数人でコラボ
創造業務 × 一人で集中
創造業務 × 複数人でコラボ
一人で集中して行うべき仕事を雑然とした喧噪の中で行うことは難しいですし、みんなでワイワイブレストしたいのに周りを気にしながらではアイデアも湧いてこないでしょう。それぞれのワークシーンに適した働く場があることで、効率性は高まります。
上記の4パターンを実現する場を、適正数揃える必要があります。
- 定型業務 × 一人で集中 → 集中ブース、個室、通常の自席
- 定型業務 × 複数人でコラボ → ちょいミーティングスペース、オープンスペース
- 創造業務 × 一人で集中 →集中ブース、個室
- 創造業務 × 複数人でコラボ →リフレッシュルーム、区切られたミーティングルーム
創造性の向上のための場作りには、二つの軸があります。「創造的な仕事をする目的のために集まる場」と「偶発的な出会いにより創造的な会話がされる仕掛けとしての場」です。それを整理すると以下のようになります。
- 集めて交わる「場」 → リフレッシュルーム、ちょいミーティングスペース
- 偶然交わる「場」 → マグネットポイント、フリーアドレス、内階段
マグネットポイントとは、コピー機や文房具を一か所に集めた場などのことで、集まった人の間に会話を生み出します。このような偶発性は、仕掛けないとなかなか実現しません。他部門のメンバーと話すためには、それ相応の理由が必要になります。
以上のような働くシーンをイメージ・議論してから、ようやくオフィス家具・什器を選定する段階になります。大事なのは、常にその場の目的を最大限実現できる什器であることです。先の4つの利用シーンで必ず必要となるのが、椅子とデスクです。椅子はその場の目的が達成できるようなスペックが必要となります。集中業務であれば、長時間座っていても腰が痛くならない等の快適性を重視するべきでしょう。逆に、オープンスペースの回転率を上げるのであれば、あえて固い椅子、背もたれのない椅子、長時間座るには居心地が悪いものを選ぶことになります。
デスクに関して言えば、盤面の広さと形状があります。多くの書類やサンプルを並べるのであれば、大きな盤面が必要となります。逆に、ミーティングスペースを数多く設置したいのであれば、小さな盤面のテーブルを数多く設置するという選択になります。
ミーティングスペースでは、机の形状は長方形だけでなくても良いでしょう。会議ごとに机の設置をさまざまに配置できれば、気分も変わりアイデアも豊富に出てくるかもしれません。また、デスクを頻繁に移動できるようなオープンスペースであれば、キャスターは欲しいところです。ある研究によると、場所作りから自由に施せると会議の効率が良い、ということのようです。
とかくカタログから入り、デザインのかっこ良さで選んでしまうこともあると思いますが、オフィス什器は使ってなんぼ、それを使って仕事をする人の成果があがってなんぼ、です。常に場の目的、その利用イメージを頭に描きながらオフィス什器を選びたいものです。