総務の仕事。「オフィスでの社内コミュニケーション活性化」
総務から会社を変えるシリーズ
社内コミュニケーション活性化
コロナ禍により、オフィスに求められるものが変化してきました。全ての機能を持つ万能型オフィスから、コミュニケーションが取りやすい、コラボレーションがしやすい機能に特化した機能特化型オフィスへの変化です。働き方が多様化するということは、働く場が分散するということです。そうなると皆さんも体感した、コミュニケーションの希薄化、それに伴うつながり感の低下、さらにはモチベーションやエンゲージメントの低下という現象が起こります。それがじわじわと組織基盤に悪影響を与え、組織が弱くなってきてしまいます。
コロナ禍以前も社内コミュニケーションの活性化は求められてきましたが、今後はより一層社内コミュニケーションの活性化が組織強化のために求められることになります。今回は、オフィスにおける社内コミュニケーション活性化の仕掛けについて紹介していきましょう。
社内コミュニケーション活性化には、三つの観点があります。一つ目は、社内報、Web社内報などの社内コミュニケーションメディアによるものです。直接コミュニケーションに資するのではなく、コミュニケーションのきっかけとなる「ネタ」を提供するものです。壁新聞の進化系、デジタルサイネージを活用する企業も出始めています。
二つ目は、食事会や飲み会、勉強会やプロジェクトなど、意図ある仕掛けによる社内イベントです。これは直接コミュニケーションできる場を提供するものなのでその効果は高く、またそのイベント以降も仕事の中でコミュニケーションは継続されるので長い効果が期待されます。
三つ目が、今回紹介するオフィスのレイアウトによるコミュニケーション活性化です。オフィスは毎日利用するものなので、日常的に活性化が図られる効果の高い施策となります。最大の目的は、社員が交わる場を作ること。例えば、あえて不便な状態にすることで、社内を歩かせたり動線を交わらせたりして、会話に結び付く出会いの場を提供します。
社内コミュニケーション活性化は、以上の3つの施策を効果的にリンクさせることが大切です。
クリエイティブオフィスという考え方
オフィスにおける社内コミュニケーション活性化には、「クリエイティブオフィス」の考え方が参考になります。クリエイティブオフィスとは、社員が持っているナレッジを表に出しやすいようにレイアウトを工夫し、創造的な仕事やイノベーションが起きやすい環境を整えることです。具体的には「オフィスの見える化」です。どこで誰がどのような仕事をしているかが、一目瞭然となるオフィスのことです。優れたオフィスとして表彰されるものの多くは、執務室内に視界を遮る什器や間仕切りがありません。会議室もガラス張りとなっていて、ホワイトボードに書かれている内容や集まっているメンバーを見れば、いまどのようなことが会社で動いているのかが理解できます。
このようにして、仕事の現場が見渡せることで、自らが抱えている課題やアイデアについて、それに関連するナレッジを持っているメンバーを見つけやすくなります。さらに対話がしやすい場が数多くあれば、それだけコミュニケーションは活性化していくというわけです。
気軽に対話できる仕掛け
気軽に対話できる場として「ちょいミーティングスペース」という場が活用されています。従来なら打ち合わせや会議はしかるべき場所の会議室で行われることが多かったものです。しかし会議室が埋まっていたり、そもそも数が足りなかったりすると、いま思いついたアイデアが生かされなくなってしまう可能性があります。「ちょいミーティングスペース」が執務室内に数多く配置されていれば、打ち合わせしたいときに打ち合わせができ、また別段かしこまらなくても会話がしやすい雰囲気となります。優れたオフィスには、そのようなスペースがいたるところに配置され、ホワイトボードやモニターが常備されるなど、どのような打ち合わせにも対応できるようになっています。
「オフィスの見える化」と「ちょいミーティングスペース」はコミュニケーションを活性化するレイアウトであり、各人が保有する「知」を形式化するための工夫でもあります。見渡せるオフィスを歩くことで社内に眠るナレッジに出会い、それを素早く形式化しやすくするためにミーティングスペースを数多く配置しているのです。
人を集めて対話できる場
このほか「マグネットスペース」と呼ばれるレイアウト方法があります。これはコピー機やプリンターなどの共用機材や備品をいろいろな部署の人たちが使えるように一か所に集め、そこで偶発的な出会いや会話を生み出そうとする社内コミュニケーション上の工夫です。コピーやプリンターの出力を待つ間、違う部署の同期社員が同じように横で出力を待っていたら、「久しぶり! 元気?」というような会話がされることでしょう。つまり、通常業務ではなかなか会話がされないような人たちを、この場所で会話させようとするスペースです。あくまでも可能性でしかないのですが、各部署にコピー機やプリンターがある状態では、このような会話はほぼされることはないでしょう。
ある企業では、ゴミ箱が執務室内の一か所に集約され、さらにそのゴミ箱の上には、壁新聞やお知らせを掲示するボードが立ててあります。ゴミを捨てに来る社員間での偶発的な会話、ゴミを捨てる際に必ず掲示物が目に入るという状態、さらに掲示物をネタにしての会話、そのような可能性を提供する場として活用されています。
このように、共用スペースを一か所に集約し、あえて不便な状態にすることで、執務室内を「わざと」歩かせ、交わらせ、会話がされるようなレイアウトとするのです。日常的に利用するオフィスですから、定期的に発行される社内報や、定期・不定期に開催される社内イベントより、上手に活用されればその効果は大きなものとなるのです。
次回以降は、社内報や社内イベントの効用、効果的な仕掛けについて紹介していきます。このように考えると、オフィスとイベントを担当する総務部と、社内報を担当する社内広報部門との間に、密接なコラボレーションが必要なことがお分かりでしょう。各施策をバラバラに行うのではなく、有機的に結び付け、相乗効果を出すような取り組みが重要となるのです。