総務の仕事。「最適化を目指す、利用管理」
総務から会社を変えるシリーズ
ファーストユーザー
モノの管理が中心となる総務部門においては、購入した物品が本来想定されている目的に合致した使われ方をされているかどうか利用状況を管理することは、会社のお金を使っている以上必須の仕事となります。しかし、この利用管理は十分にできているでしょうか?
備品の棚に置かれた誰も使わない物品がある、良かれと思って企画した施策を誰も利用しない、従業員のためと思って設置したリフレッシュルームを誰も使用しない。よくある話です。しかし利用率は結果であり、利用されることで実現されることが目的です。前回の購買管理の際にも記しましたが、コトの実現のために物品を購入したり施策を導入したりするのであり、そのモノが目的ではありません。さらに、それを利用されることが目的でもなく、その先にあるコトの実現、課題の解決が目指すべきコトなのです。そこで、本来想定した利用のされ方を見ていくことが必要となります。その前に、その正しい利用のされ方を総務部門から、現場従業員に正しく伝えられるかが問題となります。
そうなると総務部門として重要なのは、何を解決するために、どんなモノや施策が必要であり、それらのモノや施策をどのように利用すると目的が達成されるかを、しっかりとイメージできるかです。現場の従業員に使ってもらう際に、説明が必要となります。その説明も、説得力のあるものでなくてはなりません。つまり、総務自身が使ってみて、利用者目線で説明できるかが重要なのです。新たな物品や新たな施策を、総務部門がファーストユーザーとして使うことで、説得力のある説明ができるのです。
コロナ禍での在宅勤務で課題となった、コミュニケーションの希薄化。今、様々なコミュニケーション・ツールが世に出てきています。日本においてもあっという間に市民権を得た、オンライン会議システム。それも様々なサービス会社があり、相手によってツールを変えなければならないこともあります。その使い方の問合せを受けるのが総務部門です。自ら使っておかないと、返答に窮することになります。さらに今後は、メタバースが企業内のコミュニケーション・ツールとして登場してくるでしょう。あるいは、バーチャル・オフィスなどは、既に多くの会社で導入が開始されています。
これらをいざ導入するとなると、総務部門が中心となり進めることになるでしょう。なぜなら、働く場・オフィスの代替手段としてのツールなので、総務部門が主管とならざるを得ないからです。経営や現場から導入を迫られて慌てて動くのではなく、事前にファーストユーザーとしてなじんでおくことが必要でしょう。メタバースの例もそうですが、B2Cで始まったツールが、いずれB2Bに導入されることが多いものです。普段からB2Cでの動きを注視しておき、準備しておくことが肝要です。
データ・ドリブン
コミュニケーション・ツールもさることながら、様々なテクノロジーツールが提供されています。HRTechと称して、労務管理から給与管理、採用管理からタレントマネジメント、特に人事系のツールや経理系のツールが数多くリリースされています。総務系も遅まきながら、車両管理や稟議決裁システム、物品購入や出張手配等々、今後も多くのテクノロジーツールが現れてくると想定されます。
今回お話しした利用管理。このテクノロジーツールは強力な武器になります。今までは申請書を提出してもらっての書類管理でした。その書類をめくりながら利用状況を把握する、そんな世界でした。それが、テクノロジーツールを通じて利用申請・許可・完了。そうなると、全ての動きがデジタルデータとして蓄積され、管理画面上で瞬時に利用状況を把握できます。さらに、そこから生み出されるデータに掛け合わせや分析を行うことで、様々なことが読み取れます。効果検証が容易にできるようになるのです。
データが取れることで、現状の可視化ができます。そこから、今後を予測できます。予測ができれば、それに対する対処ができます。そして対処した結果、その後の利用率をデータとして取ることで効果検証ができます。これを繰り返すことで最適化ができるのです。今までのように書類をめくるか、そもそも利用状況を把握する手段がなかった時代のことを思うと、総務部門にとって格段の進化です。まさに、鬼に金棒ではないですが、会社を変えることのできる総務部門に強大な武器がもたらされたと表現してもいいのではないでしょうか。
この武器を使うことをデータ・ドリブン(データ<利用状況>を中心にして活動すること)と表現されます。今後の総務部門はデータ・ドリブンを目指すべきであり、そのためには、デジタライゼーション、つまり紙を無くすことが必要となります。そして、テクノロジーツールを全ての業務において導入することが必要となります。データ・ドリブンのためもさることながら、今後定着すると予想されるハイブリッドワークの実現のためにも、テクノロジーツールの導入が必須の要件となります。紙があるかぎり、在宅勤務もサードプレイスでの仕事も不可能だからです。
ゼロベース
データ・ドリブンで利用率を把握する際、利用されているから大丈夫、というわけではありません。「総務パーソンは改善人間であるべきだ」という言葉もあります。常により良くするという姿勢を持つのであれば、毎年ゼロベースで、今ある物品や施策について「もしこれが無くなったらどうなるのだろうか?」と、その必要性や存在意義にまで踏み込んで見直すべきなのです。環境変化により必要性が乏しくなっているものもあるかもしれません。逆に、技術の進化によって、さらにより良いものが出てきているかもしれません。その意味でも、常にゼロベースで見直す仕組みを毎年取り入れることが重要です。
利用管理。その目的は、課題の解決が十分されているか、さらに最適化がされているかを見ていくプロセスです。そのためにも、データが取れるかどうかがポイントです。アナログ的な管理業務が存在しているのであれば、それをぜひテクノロジーツールに置き換える取り組みをして欲しいものです。