総務の仕事。「総務の業務改善テクニック その2」
総務から会社を変えるシリーズ
業務改善のポイント
業務改善には留意すべき「三つのポイント」があります。そして、改善を進める上で重要な「三つの視点」があります。これらを理解して、その手順に沿って行えば、ムダなく効率的に業務改善を進めることができます。それをこれからご説明しましょう。
業務改善を進める際には、留意すべき三つのポイントがあります。
❶組織的に取り組む
業務改善は個人の工夫や努力に任せるのではなく、組織的に行います。個人の工夫も大切ですが、それでは効果は限定的になり、改善効果を組織全体で共有することができません。
➋正しい手順、手法で行う
業務改善を我流で進めると非効率でムダが発生するので、正しい手順、手法で行ってください。これから説明する定石ともいえる手順を参考にして取り組んでください。
❸「やりっぱなし」にしない
業務改善は一度行ったら終わりではありません。やりっぱなしにすることなく、改善プロセスを振り返り、評価するとともに、改善効果を測定して継続的改善を行ってください。改善を続けていくと、スタッフの仕事に取り組む意識が変わり、改善意欲とコスト意識の高い組織風土が醸成されます。
業務改善の視点
業務改善は三つの視点「①やめる」➙「②減らす」➙「③変える」の順番で考えます。この順番は、「効果の大きさ」の順番でもあります。改善(変える)を行う前に、「その仕事は本当に必要なのか、仕事自体をなくすことはできないのか(やめる)」「仕事の発生を減らす方法はないか(減らす)」を考える必要があります。
三つの視点を簡単に説明すると次のようになります。
❶やめる
業務そのものをなくす、社外ヘアウトソーシングする、など
➋減らす
業務の発生量を減らす、簡素化する、集約する、統合・結合する、など
❸変える
業務の進め方を変える、人のスキルを高める、手作業から自動化へ変える、など
三つの視点をどのように業務改善プロセスに生かすか、後ほど説明します。
アウトソーシングのメリツト
外部の専門性を有効に活用することができるアウトソーシング。多くのアウトソーシング業務は、福利厚生、給与計算、採用、寮社宅管理、社内報の作成など、一部に限っている場合がほとんどです。また、アウトソーシングを検討する場合は、アウトソーサーのサービスに自社の業務を適合させる方法で考えがちですが、これでは自社にマッチするアウトソーシング先が存在しない場合、その業務を外部に委託することができなくなります。そのようなときには、自社の業務をキーとして、アウトソーシング先に新たなサービスを考えてもらうのも解決の一つです。総務業務には何らかの外部の企業が関係しており、その企業をアウトソーシング先とする方法もあります。また、現在取引をしている企業に委託している業務の範囲を拡大することも、アウトソーシングの一形態と考えられます。それにより委託コストが多少増えたとしても、社内の業務負担が軽減されるのであれば、検討する価値はあります。徹底的に業務を分解し、自社で行わなくとも良い業務や外部に任せた方が費用対効果の高い業務を抽出し、それらを外部委託できないか打診してみましょう。
PDCAを活用した業務改善
経営、事業、業務をスムーズに効率的に進めるためには、PDCAサイクルを活用します。PLAN→DO→CHECK→ACTIONの頭文字を取ったものです。業務改善を行う全体像をPDCAの各ステップに整理して説明します。
細かく分かれている業務改善の進め方は一見複雑に見えますが、PDCAで整理、分類して考えるとわかりやすいでしょう。計画➙実行➙評価・検証➙見直し・対策と進めたのち、それで終わらせずに継続的に改善を行うという業務改善のステップはまさにPDCAサイクルそのものです。
PLAN:計画
(1)業務改善の目的の明確化、目標の設定
(2)推進プロジェクトの編成
(3)スケジュール設定
DO:実行
(1)業務の棚卸し、業務の整理、一覧化
(2)改善
(3)標準化
CHECK:評価・検証
(1)改善プロセスの振り返り、評価、反省
(2)改善効果の測定(コスト、業務量、処理時間など)
ACTION:見直し・対策
(1)改善プロセスのブラッシュアップ
PLANのステップで行うべきことは三つあります。一つ目は目的・目標の明確化、二つ目は推進するプロジェクトチームの編成、三つ目はスケジュールの設定です。
(1)目的の明確化、目標の設定
まず、業務改善の目的、目標を明確にします。何のために業務改善を行うのか、目標、ゴールを明確にします。そして、業務改善された後の状態を具体的にイメージし、共有することです。それにより、「業務改善を行って確実に成果を出そう」というモチベーションが高まります。定量的効果と定性的効果の説明でも述べましたが、あれもこれも求めずに、目標を絞り明確にすることが大切です。
(2)推進プロジェクトの編成
次は、推進体制(プロジェクトチーム)の編成です。実行の責任を負うプロジェクトオーナーには通常、部門管理者がなります。そして、業務改善を実質的に推進するプロジェクトリーダーには、部門業務の全体を把握し、かつプロジェクトマネージメントを行なえるリーダーシップを持つスタッフが適任です。そして、業務改善を行うメンバーは仕事への問題意識が高く、ゼロベースで改善案を考えられるスタッフを選びます。業務をよく知っている中堅スタッフと、部門や仕事の常識にとらわれない若手スタッフ(もしくは部門歴が浅いスタッフ)が適任です。業務改善の成否を分けるのはプロジェクトリーダーといっても過言ではありません。プロジェクトを編成したら、キックオフミーティングを開催します。ここで目標、目的を共有し、プロジェクトの体制、それぞれの役割分担を明確にします。また、基本的なスケジュール、改善手法、手順などを共有します。プロジェクトオーナーは、リーダーやメンバーが業務改善を進めやすいように環境を整え、支援します。部門内でプロジェクトの趣旨、目的を伝え、業務改善活動に積極的に協力するように呼びかけます。 またリーダー、メンバーに選ばれるようなスタッフは優秀で通常業務も忙しい人たちのはずですから、プロジェクト期間中は通常業務量を減らします。通常業務で忙しい状態が続き、その上、さらに業務改善の仕事が追加されたのでは、改善業務に注力できませんし、モチベーションも高まりません。
次回に続く