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わかりやすい! 賃貸借契約書の書き方の実務

わかりやすい! 賃貸借契約書の書き方の実務

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賃貸借契約とは

貸主がある物の使用及び収益を借主にさせ、借主がこれに対してその賃料を支払い、契約が終了したときにこの物を返還することを内容とした契約です。典型例としては、アパートやマンション等を貸し借りする場合の建物賃貸借契約がありますが、もちろん、建物だけでなく土地や機械、車などの動産も目的物とすることができます。

民法601条に、「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」と定められています。

「契約が終了したときに返還する」というのは、当然のことなのですが、改正前の民法には、返還に関する規定がありませんでした。そこで、今回の民法(債権法)改正では、賃料の支払い義務があるだけではなく、目的物の返還義務があることについても、明文化されました。


契約書への主な記載事項について

1.目的物の特定

当然ですが、賃貸借契約を結ぶにあたって、目的物が「何」であるかを明確に特定することが大切です。特定の方法は、不動産であれば、不動産登記簿謄本に記載されている内容、動産であれば、製品名、製造番号などで目的物を特定します。

2.期間

次に、目的物を賃貸借する期間についてです。民法では、「賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。」(民法604条)とされているため、原則として50年を超えることはできません。50年を超える期間を定めたとしても、その期間は50年とされます。

しかし、これには例外があります。例えば、目的物が建物の場合です。賃貸借契約の場合、契約期間は2年に設定されることが多いですが、当事者の合意でそれよりも長くも短くも設定できます。ただし、1年に満たない期間を設定すると、期間の定めがないものとみなされるので注意が必要です。

これは、民法とは別の「借地借家法」という特別な法律により、「期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない賃貸借とみなす。」(借地借家法29条1項)と定められているからです。また、借地借家法29条2項では、「建物の賃貸借については、この民法604条の規定は適用しない。」と定められているので、民法の「賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。」という規定は適用されません。また、契約期間の更新ができるのか、契約期間の満了をもって契約終了とするのか、についても定めておくとよいでしょう。

テンプレートでは、シンプルな文言となっておりますが、更新ができる内容の場合には、これに「期間満了の〇か月前までに相手方に通知することにより・・・」や、「期間満了の〇か月前までに相手方から何らの意思表示もない場合は、本契約と同一の条件でさらに〇年間更新されるものとし、その後も同様とする。」などといった文言を付け加えることもできます。また、更新をしない場合であれば、「期間満了をもって当然に終了し、更新をしない」などといった文言を入れることもできます。

3.目的、用途、禁止事項

目的物をどのような目的・用途で使用するのか。また、禁止事項についてなど、当事者間でのルールを決めた場合は契約書にも記載しておきましょう。テンプレートでは、比較的大きめの機械を目的物とした場合の契約書となっているため、使用場所の指定のみとしておりますが、その他に定めるルールとして次のようなものが考えられます。

  • 無断転貸、賃借権の無断譲渡の禁止
  • 承諾を得ない改造、原状変更などの禁止
  • 反社会的勢力との関与や犯罪行為のための使用・供与の禁止

などです。

4.賃料

賃貸借契約で必ず定めなければならないものの一つです。無償で貸借する契約は使用貸借契約となります。賃料については、金額はもちろん、支払方法、支払期限についても定めておきましょう。

  • 金額については
    月額○○万円など、月単位なのか日、年単位なのかも明記します。
  • 支払方法について
    現金払いなのか、振り込みなのか。振り込みである場合は、テンプレートのように、単に「〇〇が指定する金融機関の口座」とすることもできますし、支店名・口座番号などを契約書に明記することもできます。また、振込手数料の負担についても、どちらが負担するのか明記しておくこともできます。
  • 支払期限について
    テンプレートでは、毎月の指定日に翌月分の賃料を支払う前払いのケースを想定しておりますが、民法では、毎月末にその月の分を支払う後払いが規定されています。(614条)そのため、特に定めなければ、民法の規定が適用されます。

また、契約期間が長期間となる場合は、経済事情や公租公課が変動することも考えられますので、一方当事者に不利益とならないよう、当事者間の話し合いで賃料の変更ができるような条項(例えば、「契約締結後、経済事情の変動により契約時の賃料が不相当となったときは、当事者が協議の上、賃料を改定することができる」など)を入れることもできます。賃料の変更をした場合は、覚書などで必ずその内容を書面に残しておきましょう。

5.その他当事者が合意した内容

借主の債務を担保するための保証金についての定めや、目的物に関する費用(修理費など)の定めなど、法律に違反しない範囲で当事者が合意した内容を記載することができます。

6.その他

法律の定めには、当事者間の合意があっても法律が優先される「強行規定」と、当事者間の合意が優先される「任意規定」があるため、合意事項を何でも記載できるわけではありません。合意事項が強行規定に反していないか確認してから記載することが必要です。

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著者プロフィール

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今村 正典

特定行政書士 行政書士のぞみ合同事務所

社会的責任に関する各種テーマ、企業コンプライアンスと法的リスク管理、外国人の在留に関するテーマを専門とし、社会的責任に関する各種の支援業務、外国人の在留に関する業務、建設業などの各種許認可に関する業務などの活動を行う。
「外国人の在留資格」、契約に関する注意点、企業内コンプライアンスセミナーなど、各業界の企業等向けにコンプライアンス関連セミナー、企業内研修など、講演、セミナーの実績多数。その他執筆活動として以下のコラムの執筆を精力的に行っている。
■ 『月刊総務オンライン コラム』次世代育成支援対策推進法の情報
■ 松本肇著『ホームページ泥棒をやっつける』にて専門家として一部執筆
■ 月刊プレイグラフ 法務相談カルテ(執筆中)
■ ブログ法務コンシェルジュ『ISO26000』(執筆中)

その他業界誌・業界向け新聞等にコンプライアンス関連記事の執筆を行う。

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