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[コンプライアンス] 第2話:夜の街における接待を伴う飲食店

[コンプライアンス] 第2話:夜の街における接待を伴う飲食店

この記事の著者
永世綜合法律事務所  弁護士 

第2話:夜の街における接待を伴う飲食店

ベンチャー企業の社長

新型コロナウイルス感染症の影響で、今やすっかり接待がなくなり寂しい次第です。繁華街にも人が増えてはきましたが、最近はまた感染者人数も増えてきましたし、先が見えなくて不安ですね。

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

そうですよね。私も自粛してからというもの家飲みがすっかり定着してしまい、接待マナーを忘れてしまいました(笑)。

ベンチャー企業の社長

その関係で、「接待を伴う飲食店」において、クラスターが発生しているから、行くのを控えるようにという話がありました。これって、お客さんと食事に行くということも接待ですから、接待を伴う飲食店といえそうなのですが、一切の接待をしちゃいけないのでしょうか。

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

その発言がどこまで法律的な定義を意識したものなのかわかりませんが、接待というのは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、いわゆる「風営法」に定められています。2条で次のように定められています。

(用語の意義)

第二条
この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

一 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の
接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業

・・・以下略・・・

三 この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法
により客をもてなすことをいう。

ベンチャー企業の社長

2条3項に接待とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと、と書いてありますね。わかるような、わからないような・・・

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

これではわからないですよね。警察庁から出されている「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」という通達に具体的に書いてあります。これによると、「接待」とは、例えば、特定少数の客の近くにはべり、継続して、当該客の談笑の相手となり、当該客に酒等の飲食物を提供するなどの行為があたるとされるようです。いわゆる、談笑、酌等ですね。また、特定少数の客の近くにはべり、当該客に歌うことを推奨し、当該客の歌に手拍子・拍手をし、当該客の歌をほめそやし、当該客と一緒に歌うなどする行為もあたるとされています。

ベンチャー企業の社長

ということは、「一瞬」ならいいんですかね。

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

するどいですね。酌をし、水割りを作るなどするが、速やかにその場を立ち去る場合や、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供する場合、酌、水割り、待機、酒類提供等に付随して社交儀礼上の挨拶を交わし、若干の世間話をする場合は、「接待」にあたらないとされています。

ベンチャー企業の社長

なるほど~。だから、カウンターを挟んだガールズバーは許可がいらないけれど、キャバクラ(ナイトクラブ)は許可がいると言われるのか。

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

本当はそう簡単に割り切れるものではありませんよ。「カウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供する場合」が許されているだけであって、そこで「若干の世間話」を超える会話をすると、これは「接待」にあたるわけですからね。

ベンチャー企業の社長

そういうことですか。だから、お酒を出した後、ちょっと会話すると交代しているんですね。

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

他にも、客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たります。もっとも、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は接待に当たりません。客の口許まで飲食物を差し出し、客に飲食させる行為も接待に当たるとされています。

ベンチャー企業の社長

私には縁のない話ですが(笑)、従業員にも周知させておきます。ちなみにこれ、違反するとどうなるのですか?

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

営業主体に対しては2年以下の懲役か200万円以下の罰金、又はこれらが併科されます。また、違反行為を理由に許可取消しとなるおそれもあります。客が罪に問われるわけではありませんが、その場にいたとなれば目撃者になりますので、警察から事情を聴取される事はあると思います。事情を聴取されれば、供述録取書という書面を作成しますので、それに署名押印をして・・・とあまりいい気分ではないですね。

ベンチャー企業の社長

違反行為をしているお店には行かないほうがいいということですね。

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

君子危うきに近寄らずです。

ベンチャー企業の社長

先生はこういった事案も取り扱っているのですか。

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

風俗営業を営んでいる営業者の方の事件は何件か取り扱ったことはありますね。21日間も勾留されて非常につらそうでした。ところで、営業している時間にも注意してくださいね。キャバクラは、深夜営業ができないので0時になったら閉店しなければなりません。条例で延長できるところもありますが、基本は0時です。

ベンチャー企業の社長

たしかに0時前になると閉店ですと言って蛍の光が流れますね。あれ、でも、ガールズバーに行ったときは深夜まで飲んでいた記憶が・・・

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

それは、接待を伴うキャバクラの業態と、そうでないガールズバーの業態との違いが影響しています。風営法の13条に次のように書かれています。

(営業時間の制限等)

第十三条 風俗営業者は、深夜(午前零時から午前六時までの時間をいう。以下同じ。)においては、その営業を営んではならない。ただし、都道府県の条例に特別の定めがある場合は、次の各号に掲げる日の区分に応じそれぞれ当該各号に定める地域内に限り、午前零時以後において当該条例で定める時までその営業を営むことができる。

・・・以下略・・・

(深夜における酒類提供飲食店営業の届出等)

第三十三条 酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。

・・・以下略・・・

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

この「風俗営業」というのは、「客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」のことをいうので、キャバクラの業態はここに入ってきますから、0時までしか営業できないのです。一方、ガールズバーの業態は、「バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業」をしているものなので、「酒類提供飲食店営業」にあたります。この営業をする者が、深夜に営業しようとする場合は、届け出が必要になります。

ベンチャー企業の社長

つまりどういうことだ・・・?

法律事務所BIZの熊谷弁護士
弁護士

図解するとこんな感じでしょうか。条文に書いてあるとおり、「酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとするものは・・・」とあるように、キャバクラの業態(風俗営業)だと、深夜営業は届け出ができないのですよね。ガールズバーの業態は、あくまでお酒を提供するのが目的ですから、届出さえすれば深夜営業ができるということです。だから、ガールズバーでは深夜までお酒を飲めたというわけですよ。

深夜営業についての図解
ベンチャー企業の社長

今日も勉強になりました。では、実地調査もまだできる状態ではないので、今日は解散といたしましょう!

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著者プロフィール

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早乙女 宜宏

永世綜合法律事務所 弁護士

早稲田大学法学部卒業後、日本大学大学院法務研究科卒業。
顧問先等の企業法務に関する相談を多く受ける一方で、日本大学大学院法務研究科にて、刑事系科目(刑法・刑事訴訟法)の教鞭をとる。その他、警察大学校等の公的機関で講義をするなど教育業務も多い。また、スマートフォン向け六法アプリ、And六法の開発も行う。

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