職場におけるハラスメントの種類 最新の一覧や対策のポイントを紹介
職場におけるハラスメントは、企業にさまざまなリスクやデメリットをもたらします。このような状況に陥らないよう、企業は適切な対策を行わなくてはなりません。
本記事では、職場におけるハラスメントの種類や、対策のポイントを解説します。記事を踏まえて、ハラスメントのない職場づくりを進めましょう。
ハラスメントとは
ハラスメントとは一般に、「人を不快にさせる行為」「人の尊厳を傷つける言動」などを指します。詳しくは後述しますが、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなど、いくつかの種類があります。
例えば、「上司が指導と称して部下を殴る」という行為や、「部下・同僚に対して性的な発言をしたり、飲み会の席で無理にお酒を飲ませたりする」といった行為です。こうしたハラスメントは、受けた側が「不快」と感じたら成立します。
つまり行為者が「そんなつもりではなかった」としても、ハラスメントです。
職場におけるハラスメントの種類を一覧で紹介
「職場におけるハラスメント」とひと口にいっても、さまざまな種類が存在します。パワハラやセクハラは代表的です。しかし近年では、モラハラやアルハラなども問題視されています。
代表的なハラスメント
代表的なハラスメントの種類を理解しましょう。企業として対策を行うなら、「どのような行為が、どんなハラスメントに該当するのか」を明確に把握することが重要です。
パワーハラスメント
パワハラ(パワーハラスメント)とは、力関係を利用して相手を不快にさせたり、不利益を与えたりする言動や行動を取ることです。厳密には「優越的な関係が背景にある」「業務の範疇を超えている」「従業員の就業環境が害される」の3要素を満たす行為が該当します。
具体例としては、上司が部下に対して「殴る・侮辱的な発言をする・無視をする・達成不可能なノルマを課す・仕事をさせない・個人情報を周りに暴露する」ことなどです。
基本的にパワハラは、優越的な立場にある人(上司)が、力関係の弱い人(部下)に対し行います。ただ、近年では「逆パワハラ」と呼ばれる、部下が上司に行うタイプのハラスメントも問題視されています。
今日の日本では、このようなさまざまなパワハラの蔓延が、重大な社会的課題として注目されています。自社のイメージを守るためには、後述する労働施策総合推進法などへの対応を含め、積極的なパワハラ対策を行っていきましょう。
セクシュアルハラスメント
セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、性的な言動や行動によって、相手に不快感・不利益を与えることです。
例えば「性交渉の経験数を聞く・しつこくデートに誘う・卑猥な冗談を口にする」といった行為です。
これらは迷惑防止条例や刑法に則って罰が下されこともあります。また「相手の同意なく、性交渉を持つこと・身体に触ること」などについては、さらに重い刑事罰が下される可能性もあります。
またセクハラは、同性の相手に対しても成立します。これらの点をしっかり認識しつつ、防止に取り組まねばなりません。
モラルハラスメント
モラハラ(モラルハラスメント)は、直接的な暴力などは用いずに、倫理や道徳に反したいわゆる「嫌がらせ」を行うことです。
モラハラは、上司が部下に対して行うばかりではなく、部下が上司に行ったり、同僚間で行われたりすることも少なくありません。
例えば、職場の従業員たち全員で、特定の従業員に対して「無視する・人格を否定するような言葉を吐く・理由もなく不機嫌な態度で接する」といったケースです。
アルコールハラスメント
アルコールハラスメントは「アルハラ」とも呼ばれ、飲酒の席で行われる嫌がらせや迷惑行為を指します。
例えば、お酒が飲めない従業員に対して「無理やり飲ませる・一気飲みを強要する・大量に飲ませて酔い潰れさせる」といった行為です。また、「自分が酔って、他者に暴言を吐くこと」もアルハラに該当します。
アルハラは、被害者の人権侵害のみならず、健康被害も発生させる恐れがあるため、重々注意しなくてはなりません。
例えば、一気飲み強要による急性アルコール中毒や、酔いつぶれた従業員を放置することによる事故など、さまざまな被害発生が考えられます。
最新のハラスメント
最新のハラスメントとして、終われハラスメント(オワハラ)と咳ハラスメント(セキハラ)が挙げられます。職場で無意識にこのようなハラスメントが行われていないか、チェックしてみましょう。
終われハラスメント(オワハラ)
オワハラとは「就活終われハラスメント」の略です。企業が人材を確保するため、面接者に対し就活を終えるよう迫る行為です。
具体的には、採用面接中に「今後の就活を止めてくれたら内定を出す」などと口にすると、オワハラが成立します。優秀な人材を逃がしたくなく、また採用活動に費やすコスト・時間を無駄にしたくない、といった理由で、オワハラに手を染めてしまっている企業は少なくありません。
咳ハラスメント(セキハラ)
咳ハラスメントは「セキハラ」と呼ばれ、「マスクをしていない状態で、口や鼻を覆わずに咳・くしゃみをする行為」です。周りの人からすると、不衛生極まりないうえに風邪などを移されるリスクもあるため、れっきとした迷惑行為です。
特に昨今は、新型コロナウイルスの感染拡大も影響し、セキハラは問題視されています。加えて、「コロハラ」(コロナハラスメント)と呼ばれる新たなハラスメントも認識されています。咳・くしゃみをした人に対し、「感染者なのではないか」と問い詰めたり、隔離しようとしたり、過剰反応を示すことです。
ハラスメントが企業にもたらすリスク
自社内でハラスメントが発生したり、それによって裁判が開かれたりすれば、重大な損失を被ることになるでしょう。ここでは、「ハラスメントを防止しないことで生じるリスク」を、具体的にまとめました。
離職率の増加による人材不足
ハラスメントの蔓延している職場・蔓延しやすい職場では、「離職率が増加する」というリスクが生じます。その結果人材不足に陥れば、事業全体に大きな悪影響が出るでしょう。
また優秀な人材ほど、退職する可能性は高いと考えられます。優秀な人材は、求められる職場がたくさんあります。わざわざハラスメントの蔓延している職場に留まる必要がありません。
場合によっては「退職の連鎖」が起きる可能性もあります。「離職率増加問題の解決にあたっていた担当者もが、自分の精神をすり減らしてしまい、退職してしまう」というケースです。
こうした退職の連鎖によって、人材流出に歯止めが効かなくなれば、自社の存続が危ぶまれる事態にすらなり得ます。
企業イメージの低下
「ハラスメントが発生している会社」というイメージが自社についてしまえば、大きな損害につながります。
現代は誰もが情報の発信者となれるため、「ハラスメントが起きている実情」はすぐに発信・拡散され得ます。
このような状況で、なおもハラスメントを放置してれば、一般顧客やユーザーは自社から離れていきます。加えて、多くの取引先企業も離れていってしまうでしょう。結果、自社の経営に支障を来す恐れも高まります。
さらに「人材を採用しにくくなる」というデメリットも生じます。ハラスメントが蔓延しているような職場で働きたい人はいません。求人情報を出しても応募者が現れないまま、採用コストだけが増加してしまいます。
事業主が違法行為と認定される可能性
「ハラスメントの発生を認識しているにもかかわらず、適切な対処を行わなかった事業主」については、「違法行為」を認定される可能性があります。また、ハラスメントの被害者に裁判を起こされ、高額な損害賠償を支払ったケースもあります。
今後、事業主にはより厳しい目が向けられます。2019年の5月に労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が改正され、大企業は2022年6月から、中小企業は2022年4月からパワハラ防止措置が義務化されています。たためです。
法的措置が執り行われた具体例については、下記記事を参照してください。
ハラスメントの対策方法とは? 法的責任や対策事例などについて解説
厚生労働省が推奨するハラスメントの防止策については下記の記事で解説をしています。
「パワハラ防止法」にみる対策のポイント
パワハラ防止法により、企業にはパワハラ防止措置が義務付けられました。まず企業がすべきことは、「ハラスメントに該当する行為の内容」や「ハラスメント行為者に対する厳正な処分内容」などを、社内にきちんと周知することです。
また、「悩みを抱えた従業員が相談できる窓口を設置する」「パワハラへすぐに対応できる体制を構築する」なども重要です。
万が一ハラスメントが発生したときは、正確に事実を把握したうえで、被害者と行為者への措置を行います。そして、再発防止策を講じなくてはなりません。
相談者や行為者の情報は、個人情報として慎重に扱う必要もあります。また、「ハラスメントの相談をした人が降格される・左遷される」といったことが起こらないよう、十二分に配慮しましょう。
これらを徹底しながら、「誰もが安心して相談できる社内体制」を維持することが、パワハラ対策として何よりも大切です。
まとめ
職場におけるハラスメントの発生は、離職率増加を招き、結果として、人材不足や採用コストの増加まで引き起こします。さらに、企業イメージの低下などさまざまなリスクを生じさせます。
これらを回避するためにも、ハラスメントに該当する行為について理解し、しっかりと対策しましょう。
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