休日労働の定義とは? 時間外労働との違いや割増賃金の考え方
休日出勤分の割増賃金未払いは法律に反しますので、注意しなければなりません。
労働基準法では、休日労働や時間外労働、法定労働時間など、働く時間にまつわるルールが多く定められています。
本コラムでは人事部の社員向けに、休日労働の全体像や割増賃金の考え方を解説します。また、記事の後半部分では休日労働に当てはまるケースや、違法性のある休日労働をまとめました。
最後まで読むことで休日労働についての理解が深まりますので、ぜひ最後までご覧ください。
休日労働とは
休日労働とは、一般的に、法定休日に職場で仕事することです。週休二日制の場合、土曜や日曜に勤務することを「休日労働」と定義する人もいるかもしれません。
しかし、労働基準法による「休日労働」の定義と比較すると、本当の解釈は異なります。
時間外労働との違いや具体的な休日の種類をまとめました。
時間外労働との違い
労働基準法では法定労働時間が定められており、原則的に1日8時間、1週40時間までです。
法定労働時間を超えて労働した時間分を、時間外労働といいます。一方、休日労働は法定休日に働くことです。
例えば、所属先の企業が土曜日を休日にしている場合、土曜日が法定休暇となり、その土曜日に働けば休日労働に該当します。
(出典:大阪労働局 法定労働時間と法定休日、時間外労働の基本)
「休日」は4種類に分かれる
休日は4種類に分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
法定休日
法定休日は労働者が、1週間に1日以上もしくは、4週間に4日以上休まなければならないと定めています。法定休日のみの年間休日は52日ですが、1日8時間勤務の場合、年間105日休む必要があると労働基準法で定められています。
- 法律上の年間休日の最低日数:105日
- 休みの多い企業の年間休日:120日
法定外休日
法定外休日とは企業が独自で決めた休日のことです。例えば、土日休みの場合、どちらかが法定内休日で、もう一方が法定外休日に当てはまります。また、次のような祝日も法定外休日です。
- 国民の祝日
- 会社の創立記念日
- ゴールデンウィークや年末年始の休日
振替休日
振替休日とは休日と勤務日を入れ替えることです。就業規則において、あらかじめ休日と勤務日を入れ替えることを規定したうえで行う必要があります。
また、振替休日は休日出勤とはならないため、35%の割増賃金の支払い義務は発生しません。
(出典:厚生労働省 振替休日と代休の違いは何か)
代休
代休は休日に勤務したあとで、労働者自身が代わりの日を休日にする制度です。代休の場合は先に休日に出勤しているため、休日出勤による35%の割増賃金の支払い義務が発生します。
(出典:厚生労働省 振替休日と代休の違いは何か)
休日労働に対する割増賃金の考え方
休日労働における割増賃金の考え方で重要なポイントを3つにまとめました。
基本給に休日手当が含まれている場合
基本給に休日手当を含んだ雇用契約の場合、雇用契約書には、休日労働に対する手当が基本給に含まれている時間が記載されています。その労働者には、休日出金手当が支給されません。
ただし、もし休日労働が基本給に含まれた時間を超えた場合、超過分の休日出勤手当を請求できます。
法定外休日の労働で割増賃金が支払われる事例
法定外休日に労働において、1日8時間もしくは、1週40時間を超えて労働させた際には、労働者に35%の割増賃金を支払わなければなりません。計算式は次の通りです。
- 労働者の1時間あたりの賃金(基礎賃金) × 超過分の時間 ×1.25
ただし、法定休日に労働した場合は時間外労働と同じように、割増賃金は25%になります。
(出典:労働基準法 第32条)
管理職における休日手当の扱い方
管理職の休日手当の有無を理解するには、法律における管理職の定義をチェックしましょう。法律上、管理職は「管理監督者」と表現されます。
- 経営者と同等もしくは、経営者に近い権限や責任を有する
- 勤務する時間の決定権がある
- 残業手当の必要性があるほどの高待遇(金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務など)
会社の機密を取り扱う者
これら3点のすべてに当てはまる人が、管理監督者に該当します。
- 3点すべてに当てはまる:管理監督者であるため、休日手当などの規定の適用外
- 3点すべてには当てはまらない:管理監督者という役職には該当しないため、休日手当などが適用される
(出典:労働基準法 第41条2号)
休日労働に該当するケース
休日労働に該当するケースを紹介します。いずれも見落としがちなケースですので、ぜひ参考にしてください。
家に持ち帰って仕事をする
労働者が自宅で仕事をする場合、通常の労働時間外の仕事と扱われ、休日労働に該当する可能性が高いでしょう。このような場合、労働者は適切な手当を受ける権利があります。
また、労働者が自宅で仕事すると、セキュリティの問題や日中のパフォーマンス低下などにつながりかねません。企業は労働法に基づいた適切な手当を提供したり、各労働者の仕事量を調整したりする必要があります。
強制参加の研修や懇談会
企業が労働者に対して、強制的に参加を指示した研修や懇談会などは、休日労働に当てはまります。強制的な参加は実質的な業務指示とみなされるためです。
また、任意と伝えながらでも不参加の労働者の評価を落としたり、罰則を与えたりするのは与えたりするのは強制参加とみなされ、休日労働に当てはまるケースが非常に高まります。
このように規定することは「不利益取り扱いの禁止」の規定に抵触する可能性があるため、違法とされる可能性が高いでしょう。
サービス残業
サービス残業(賃金不払い残業)は、労働者の休日労働や時間外労働などに対して、適切な賃金が支払われていないことです。仕事量の多さから発生するケースが多いでしょう。
サービス残業は違法ですので、必要な業務のために時間外労働や休日労働した労働者に対して、企業は割増賃金などを考慮して適切な額の賃金を支払わなければなりません。
(出典:厚生労働省 時間外労働の上限規制)
違法にあたる休日労働とは
違法に該当する休日労働はあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
勤務先の企業が36協定を締結していない
36協定とは、労働者と企業が次のケースに遭遇した場合、締結義務が生じる労使協定です。
- 法定労働時間である1日8時間、1週40時間を超えて働かせる場合
- 法定休日に働かせる場合
労働者が時間外労働や休日労働できる範囲や、具体的な条件などが細かく記載されています。36協定を締結しないまま、企業が労働者に対して休日労働などを指示することは違法です。
ただし、法定外休日の労働において、1週間の合計の労働時間が40時間以内なら36協定を結ばなくても違法にはなりません。
割増賃金が未払い
休日労働しているのにもかかわらず、その労働の対価に企業が割増賃金を加えていなければ、違法になります。なお、管理職(管理監督者)に休日出勤手当などの規定は適用されませんが、次の3点すべてに当てはまらなければ、法律上は管理職とならず、休日労働に割増賃金が加算されます。
- 経営者と同等もしくは、経営者に近い権限や責任を有する
- 勤務する時間の決定権がある
- 残業手当の必要性があるほどの高待遇
- 会社の機密を取り扱う者
休日の種類 |
割増賃金の内訳 |
休日労働 |
休日手当:35% (時間外手当は合算しない) |
時間外労働 |
時間外手当:50%(1月当たり60時間を超える部分) |
時間外労働の上限規制を超えた休日労働
36協定を結んでいても月45時間、年360時間、時間外労働や休日労働をさせれば違法になります。企業には、時間外労働の上限を遵守する義務があるためです。なお、臨時的で特別な事情があり、労使が合意した際には、問題ありません。
ただし、労使が合意したとしても、次の労働時間の上限を守らなければなりません。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と、休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と、2ヵ月~6ヵ月のいずれかの平均時間外労働の時間数が80時間以内
上限を守らなければ、企業には6か月以下の懲役または、30万円以下の罰金が科されます。
(出典:厚生労働省 時間外労働の上限規制)
休日労働についてのまとめ
休日労働は法定休日に働くことで、休日労働した際には1.35倍の割増賃金が加算されます。36協定を締結しない時間外労働や休日労働、上限時間の超過、割増賃金の未払いは法律違反です。
労働トラブルの火種とならないよう、企業の担当者は休日労働のルールや扱い方をしっかりと確認しましょう。
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