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計画的偶発性理論とは? 3つの骨子や5つの行動特性についてわかりやすく解説

計画的偶発性理論とは? 3つの骨子や5つの行動特性についてわかりやすく解説

計画的偶発性理論はキャリア形成理論の一種で、近年多くの企業から注目されています。

3つの骨子で構成されており、5つの行動指針を中心としているのが最大の特徴です。企業で活用するためには深い理解が欠かせません。

この記事では、計画的偶然性理論の概要やキャリアアンカー理論との違い、企業に注目される理由を人事部の社員に向けてまとめました。

また、記事の後半部分では、重要な5つの行動指針を解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。


この記事の監修者
  キャリアコンサルタント / 外国人雇用管理士® 

計画的偶発性理論とは

計画的偶発性理論とは、心理学者のジョン・D・クランボルツが1999年に提唱した、キャリア形成に関する考え方です。

成功したビジネスパーソンのキャリアの変化の多くが、偶然の出来事によって生じるという調査結果に基づいています。

クランボルツ教授は、成功への道筋を計画することよりも、予測や意図をせずに自らに起こる出来事にチャンスが潜んでいる可能性があると捉え、積極的にそのチャンスを掴む姿勢が大切だと説いています。

3つの骨子から構成される

計画的偶発性理論は、次の3つの骨子に基づいています。

  1. 偶然起きる8割の事象が、キャリア形成の大部分を占める
  2. 偶然に出会った機会を活用し、自身の行動力と努力で新たなキャリアの道を開く力になる
  3. 偶然の出来事を待つだけでなく、自分から動いて周囲の変化をポジティブに捉えることで、キャリア形成の機会を増やす

自分の周りで起きる変化に目を向け、積極的に応じることでキャリアの道が開く考え方が示されています。

自分のキャリアの志向に沿って計画し進むことに固執せず、一見すると不遇や不都合に見えるような出来事や機械に対しても、何か新しいチャンスへのきっかけである可能性に気づくことが求められます。

また、その機会を柔軟におもむろに計画を立てるだけでなく、出会ったチャンスに気づき、それを柔軟に活用することが必要です。

キャリアアンカー理論との違い

キャリアアンカー理論とは、自分が妥協できない価値観を基にキャリア選択するという理論です。形成されたキャリアインカーは生涯を通じてあまり変わらないとされています。

組織心理学者で有名なエドガー・シャインが、この理論を1978年に説きました。

キャリアアンカー理論は、自身が大切にしたい価値観をもとにしてキャリアを計画し実行していくという考え方に基づいているため、企業の事業方針や組織の進む方向と一致しない場合があります。

それに対して計画的偶発性理論は、キャリアアンカー理論のその部分を補う意味で有効なキャリア理論の一つであるといえます。

計画的偶発性理論が企業に注目される理由

計画的偶発性理論が企業に注目される理由を、3つ紹介します。

IT技術の大幅な進歩

ビッグデータやAIなどの最先端技術は、数年前まで実用化のステージにはなく、一部の人々が研究する対象でした。

しかし、2000年代に突入した途端にこれらの術は急速に発展し、今日においてはビジネスの中核を担うほどになっています。

このような状況では、新しく必要になる知識と不要になる知識を予測することが難しく、5年後、10年後を考えた明確なキャリアプランを計画すること自体があまり現実的ではなくなってきています。

社会情勢の急激な変化

新型コロナウイルスのパンデミックなど、小さな変化が世界全体の状況を大きく変えることがあります。

このような大きな感染症が、世界をどれほど変えるかを予測できた人は2019年ではほとんどいませんでした。

また、東日本大震災(2011年)や、熊本地震(2016年)のような自然災害も突如として起きます。

そうした状況の中でキャリアを形成するためには、あらかじめ計画していたキャリアプランに沿って道を進んでいく能力だけではなく、予期せぬ出来事や新しい情報を柔軟な姿勢で受け入れ、対処する姿勢とスキルが求められます。

ライフキャリアに対する価値観の多様化

近年のパンデミックは、個々が自分らしく豊かな人生を生きるという意味のライフキャリアに対する考え方に大きな影響を与えました。

これまでの仕事中心のキャリアから働くこととそれ以外の自分の生き方全般(ライフ)に対する価値観が変わり、一人ひとりの価値観の多様化が進んでいます。

つまり、未来が見えるキャリアを計画して追い求めるよりも、自身に起こる予期せぬ出来事やチャンスをより積極的につかんで生きていくという考え方が、以前よりも広く人々に受け入れられやすくなっています。


計画的偶発性理論に必要な5つの行動指針

計画的偶発性理論に必要な5つの行動指針をまとめました。ぜひ参考にしてください。

①好奇心:Curiosity

計画的偶発性理論を生かすためには、本来は興味がない対象や未知の分野に対しても好奇心を持って、恐れずに新たな挑戦を受け入れましょう。何か新しいことに手を出すことで、予想外の機会に出会う可能性が高まるためです。

好奇心を育むためには、新しい学びの場を探すことも重要です。

  • 新聞やニュースをチェック
  • セミナーや講座に参加
  • 普段は積極的にかかわらない人達の考え方や行動を観察して学ぶ

また、企業側は、FA制度や副業許可、再教育制度などを通じて、従業員が社内外で新しい挑戦をする環境を整えるとよいでしょう。

②持続性:Persistence

何かに興味を持ったことに対して、情熱を持ち続けることも重要です。

何か新しいことに挑戦するときには、失敗や挫折もあるでしょう。必ずしもすべてがスムーズに進むわけではありません。

しかし、難しさや挫折に直面したときでも、諦めずに持続的に努力を続けることで、自身のキャリアをさらに成長させるきっかけを作れるでしょう。

③柔軟性:Flexibility

物事に対して自分の考えや正しい見方を持つことも大切です。しかし、既存の考えに固執せず、新しい視点や考え方に対して柔軟になることで、より良い機会に巡り合うことにつながるでしょう。

④楽観性:Optimism

何かに取り組むとき、失敗や課題に対する不安や心配な気持ちからいろいろな対策を講じることは大切です。

しかし、できる範囲の準備をしたら、これから起こることに対してポジティブな思いを持つことも大切です。

⑤冒険心:Risk Taking

予想外の出来事に出会うためには、リスクを取って行動する勇気も必要です。未知の結果を恐れず、チャレンジすることで、思いがけないチャンスに出会える可能性があるためです。

失敗するかもしれないというリスクを背負っても、自分で行動を起こすことで得られる経験や学びがあるはずです。企業側は、従業員が冒険心をもって挑戦する意欲を支えましょう。

失敗してもやみくもに責めることなく、必要に応じて再チャレンジできる体制と環境を提供することが大切です。

そのような環境があれば従業員の冒険心を刺激し、新しいチャレンジに前向きに取り組む姿勢を育むことができます。


計画的偶発性理論の活用におけるポイント

計画的偶発性理論の活用におけるポイントをまとめました。ぜひ参考にしてください。

社内の環境が整っているかを確認する

5つの行動指針を従業員に促すためには、そのような行動を社内で好意的に受け止め支援する環境が必要です。

冒険心をもってチャレンジしようとする従業員の発言や行動が、上司や同僚から否定されたり無視されたりするような職場環境では、この理論を活用して新人教育や人材育成プログラムに取り入れることは難しいでしょう。

計画的偶発性理論を活用するにあたって、社内の各職場に心理的安全性が確保されているかなどは事前にしっかり確認しておきましょう。

偶然の出来事が及ぼす影響に気づかせる

従業員のなかには予定外の出来事によって、自分のキャリアが大きく動かされてきた経験を持っている人がいるはずです。

そのようなリアルの先輩社員の振り返りの体験談を本人に語ってもらうことで、いかに偶然の出来事や出会いが自身のキャリアにポジティブに影響する可能性があるかを知ってもらうことができます。

自分にもそのような機会が訪れる可能性があることにも、気づいてもらいやすくなるでしょう。

今考える理想的なライフキャリアを言語化させる

理想のキャリアビジョンのイメージを持っている人でも、明確に言語化できていない人も少なくありません。

従業員自身が、現時点で理想とするキャリアの全体像をシンプルに言語化してもらうことは、計画的偶発性理論を活用するうえでとても有効です。

従業員自身がどのようなキャリア志向を持っているのかを知らなければ、会社側が計画的偶発性理論を効果的に活用する方法がわからないためです。

行動するために足りないものを一緒に考える

キャリアプランに対して従業員自身がどれほど良いイメージをもっていたとしても、その実現に向かって行動できない場合があります。

そのような状況にある従業員に対しては、できない理由を聞いても行動を起こせない自分が責められているような気持ちになり、ポジティブな反応は得られないでしょう。

行動を起こすのに足りないものや行動を起こすのに必要なものを、上司やメンターと一緒に考えてもらうのが良いでしょう。

小さな具体例を示して実践を歓迎する

計画的偶発性理論のメリットを理解できていたとしても、従業員が自身の行動の結果をこの理論に基づいて享受できるまでは、ある程度の時間を要します。

したがって、行動を習慣化させるためには、望ましい行動の小さな具体例を示して同様の行動を日々の業務の中で奨励し、実践者に対して小さなインセンティブを提供するなどの仕組みづくりを工夫しましょう。

5つの行動指針が日常的に実践できるように組織全体でサポートする必要があります。


計画的偶発性理論についてのまとめ

偶然に起こる出来事をチャンスとして捉えてキャリア形成するためには、日々の業務における計画的偶発性理論を実践することが効果的です。

従業員の新たな一歩を後押しするためにも、企業は計画的偶発性理論を参考にするとよいでしょう。


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監修者プロフィール

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木村 千恵子

キャリアコンサルタント / 外国人雇用管理士®

2度のアメリカ留学経験をはさみ、20年以上外資系IT企業を渡り歩きグローバルプロジェクトに従事したのち、2016年にキャリアコンサルタントとして活動を開始。

現在は中小企業の従業員のキャリア、メンタルヘルス、テレワークに関する課題解決支援、外国人留学生の就職支援、個人向けキャリアセミナーなどを中心に活動中。

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