利息制限法(出資法)の概要
今回は、企業が資金調達する際に留意しなければならない利息制限法を取り上げ、解説します。
利息制限法とは、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約について、その利率の上限(制限利率)を定め、それを超える部分は無効であることなどを定めた法律です。同法は、金銭の貸主による暴利や搾取から債務者である消費者を保護するための法律です。
なお、利息を制限する法律には、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資法)も存在します。
企業が借入れなどによって資金を調達する際には、利息制限法の上限利率を超過していないかどうかなど、同法の内容の理解と対応が必要となります。
1 利息制限法の上限利率
まず、利息制限法の定める上限利率を表に整理します。
利息制限法 |
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(第1条) 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。 |
元本の額が十万円未満の場合 年二割 |
元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分 |
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元本の額が百万円以上の場合 年一割五分 |
上表の通り、利息制限法は、元本の額に応じて上限利率を定めています。
①元本額が、10万円未満の場合 ⇒年20%まで
②元本額が、10万円以上100万円未満の場合 ⇒年18%まで
③元本額が、100万円以上の場合 ⇒年15%まで
このように、利息制限法は消費者保護の観点から、元本の額が多くなればなるほど、上限利率が低く設定されています。
また、利息制限法は、利息の天引きをした場合において、天引額が債務者の受領額を元本として1条に規定する利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分は、元本の支払に充てたものとみなされ(2条)、元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなされます(3条)。
利息制限法は、遅延損害金についても制限を課しています。
まず、金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が1条に規定する率の1.46倍を超えるときは、その超過部分について、無効となります(4条1項)。また、違約金は、賠償額の予定とみなされます(同条2項)。
従って、利息制限法は遅延損害金につき、以下の制限利率が課されていることとなります。
①元本額が、10万円未満の場合 ⇒年29.2%まで
②元本額が、10万円以上100万円未満の場合 ⇒年26.28%まで
③元本額が、100万円以上の場合 ⇒年21.9%まで
なお、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年2割を超えるときは、その超過部分について、無効となります(7条)。
2 利息制限法違反と超過部分の取扱い
1では利息制限法の内容を概観しました。
それでは利息制限法に違反した契約がなされた場合、かかる契約はどうなるのでしょうか。また、利息制限法上限利率超過部分への対応はどのようにすればよいのでしょうか。次に、それらについて説明します。
利息制限法は強行法規である(最大判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁)ため、同法違反の契約は無効となります。
具体的には、利息制限法のいう「超過部分について、無効とする」は、仮に当事者間で、利息制限法が定める上限利率を超過することにつき合意が存在していたとしても、契約としては超過部分につき無効とされることを意味します。無効な行為は追認されたとしてもその効力を生ずることはない(民法119条)ため、利息制限法は契約自由の原則を制限・変更していることを意味します。
制限利率を超える契約部分が無効となるため、借入人は制限超過していない分の利息を払えばよく、また、すでに制限を超過する利息を支払っていた場合には、支払った制限超過利息分は、元本に充当されることとなります(前掲昭和39年最判)。さらに、かかる元本充当によって元本そのものは完済され、それを超える額が支払われた場合には、いわゆる「過払い金」として返還請求することができます(民法703条)。
3 利息制限法と出資法
出資法は利息制限法と同様に、貸金業者の上限金利などを定めた法律です。
出資法では、業として行う貸付けについて、年20%を超える利息の契約を禁止しています(出資法)。現在では解消されていますが、以前は利息制限法の上限金利よりも出資法の上限利率が高利率に設定されていたため、両法の隙間(グレーゾーン金利)を消費者金融が利用(悪用)し、利息制限法の上限金利以上の暴利を貪るという問題が発生していました。
出資法5条は上限金利を定めていますが、利息制限法とは異なり、出資法に違反した場合、刑事罰(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれを併科)が科されることとなります。
なお、出資法では以下のような行為が禁止されています。
出資金の受入 (1条) |
不特定多数の者に対して、誇大広告を打つなどにより出資金を受け入れてはならない |
預り金 (2条) |
銀行や信用金庫などの金融機関以外の者による、不特定且つ多数の者からの金銭の受入 |
浮貸し (3条) |
金融機関の従業員が、自分もしくはその金融機関以外の利益のために、従業員という立場を利用して、金銭の貸し付けを行う行為 |
4 おわりに
スタートアップ企業の資金調達をはじめ、企業の資金調達方法は多様化しています。中には、貸付にあたって利息とは言わずに手数料とする、あらかじめ額面から割り引いた額を支払い、後日額面通りの額を返済するといった契約形態がみられますが、それらは場合によっては利息制限法の規制に抵触する可能性があります。
たとえば、
・社債に利息制限法の適用がなされるのか(最判令和3年1月26日民集75巻1号1頁)
・手形割引に利息制限法の適用はなされるのか(最判昭和48年4月12日金判373号6頁)
・ファクタリングに利息制限法の適用はなされるのか(大阪地判平成29年3月3日判タ1439号179頁)
といった事案を挙げることができます。
上記社債の事案では、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合を除き、社債には同法1条の規定は適用されないと裁判所は判示しました。
社債については、発行会社が事業資金を調達するため必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し、自らの経営判断として募集事項を定め、引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されており、会社の資金調達に重要な役割を果たしていることを重視し、裁判所は利息制限法の社債への適用を否定したわけです。
なお、同事案は、破産管財人が、社債の利息の支払いにつき、利息制限法所定の上限を超える約定金利を社債権者に支払ったことから社債発行会社に過払い金が生じている旨主張して、社債権者に対し、不当利得返還請求権に基づき、利息制限法所定の上限を超える額の支払いなどを求めたというものです。
企業倒産時の会社債権者への配当原資確保のため、破産管財人などによって利息制限法が定める上限利息超過分を不当利得返還請求権に基づき返還請求することが実務上なされています。