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ロックアウトとは? 意味や条件、事例などをわかりやすく解説!

ロックアウトとは? 意味や条件、事例などをわかりやすく解説!

ロックアウトとは、労働者による労働争議の対抗手段として、使用者が実行する争議行為です。労働条件をめぐる争議行為や、争議行為が発生する恐れがある状態のことを「労働争議」といい、ロックアウトは労働争議の一部です。

本記事では、ロックアウトの意味や条件、事例などをわかりやすく解説します。ロックアウトについて詳しく知りたい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
きた社労士事務所  代表 

ロックアウトとは?

ロックアウトとは、どのようなものなのでしょうか。定義や条件を見ていきましょう。

ロックアウトとは労働争議に対する手段のこと

ロックアウトとは、労働者による労働争議の対抗手段として使用者が実行する争議行為です。作業所閉鎖や工場閉鎖、店舗閉鎖、就労拒否などの行為がロックアウトにあたります。

なお、ロックアウトは、次の条件にあてはまる場合のみに認められる行為です。

  • 労働組合側による労働争議に大きな圧力がある
  • 使用者側が打撃を受けている
  • 労働者側の争議行為に対する防衛手段として相当と認められる

このような場合は正当な争議行為とされ、使用者は賃金支払い義務を免れることができます。

参考:裁判所「最三小判昭50年4月25日民集29巻4号481頁

労働争議とは

労働争議とは、労働者と使用者の間で労働条件をめぐって争議行為が発生している、または発生する恐れがある状態のことです。

また、争議行為とは、ストライキ・サボタージュ・ロックアウトなどの行為で、業務の正常な運営を阻害するものを指します。争議行為は日本国憲法第28条で保障されており、法律で認められています。

前述のように、ロックアウトも争議行為の一部であり、次の行為も争議行為に該当します。

  • ストライキ
  • ボイコット
  • サボタージュ

それぞれを詳しく解説します。

参考:e-Gov「労働関係調整法

参考:厚生労働省「スト規制法と争議権の保障について

ストライキ

ストライキとは、労働者が集団で労働力の提供を拒否する行為です。日本語では「同盟罷業(どうめいひぎょう)」とも呼ばれています。

ストライキを行うためには、組合規約にしたがって組合員(または代議員)の直接無記名投票を行い、その過半数の賛成を得て開始することになります。

参考: 政府の行政改革「労働争議の種類

ボイコット

ボイコットとは、従業員が自社の製品やサービスを利用するのを止める不買運動のことです。 使用者に対して経済的圧力を加えることで、労働条件の改善を要求します。

ボイコットは企業の直接的な利益に影響するため、規模や期間によっては企業に大きな損害を与えます。

サボタージュ

サボタージュとは、労働者が団体で意図的に業務の量や質を低下させる行為です。日本語では「怠業(たいぎょう)」とも呼ばれています。

サボタージュには、労働の能率を低下させる消極的な怠業(スローダウン)と、故意に廃品を作ったり、生産設備に損傷を与えたりする積極的な怠業(サボタージュ)があります。

参考: 政府の行政改革「労働争議の種類


ロックアウトの条件やルール

ロックアウトには、条件やルールが明確に定められています。

ロックアウトできる条件

ロックアウトの必要条件は、次の3つです。

1. 労働組合による圧力が存在することが必要

ロックアウトは、労働組合からの争議行為によって使用者側が著しく不利な圧力を受ける場合に、圧力を阻止する対抗防衛手段として使われる行為です。

労働組合からの圧力がない状態で、単に賃金の負担を軽減する意図で行われたロックアウトは、争議行為として認められません。

参考:裁判所「最三小判昭50年4月25日民集29巻4号481頁

2. 使用者が著しく打撃を受けていることが必要

ストライキやボイコットなどの争議行為は、使用者側に経済的な損失を与えることで、労働者側の要求を受け入れてもらう行為です。

そのため、使用者側の損失が比較的少ない場合、ロックアウトで対抗することは使用者側の争議行為として正当性が認められません。

参考:裁判所「最三小判昭50年4月25日民集29巻4号481頁

3. 労使間に勢力均衡を回復する防衛手段であることが必要

ストライキなどの争議行為は、労働者側に発生する損失の程度が比較的少ないのに対して、使用者側に生じる損失は大きいため、ロックアウトが認められています。

しかし、対抗手段として実施されたロックアウトでも、その後、労働者側の対抗力が失われて、勢力均衡が回復した状態では、そのロックアウトは正当性を欠くとされます。

あくまでロックアウトは防衛のための手段であり、使用者側が著しく不利な状況に陥っている場合にのみ正当性が認められた行為です。

参考:裁判所「最三小判昭50年4月25日民集29巻4号481頁

ロックアウトのルール

ここでは、ロックアウトのルールをわかりやすく解説します。ルールが定められているのは、ロックアウトの乱用を防止するためです。

賃金支払いのカットには、正当性が必要

ロックアウトなどの争議行為中の賃金カットには、正当性の有無が重要です。正当性が認められる場合は、使用者側の賃金の支払義務が免れますが、正当性が認められない場合には支払義務が生じます。

例えば、一部の労働者が起こした争議行為の対抗手段として、すべての作業所をロックアウトした場合は、争議行為に参加していない労働者に対する賃金の支払義務(休業手当の支払義務)は免れません。

公益事業のロックアウトには、予告通知が必要

郵便や水道、電気などの公益事業に係わる事業の使用者がロックアウトを行うためには、少なくとも10日前までに労働委員会と厚生労働大臣、または都道府県知事に通知する必要があります。予告通知をする際には、争議行為の日時・場所・概要を記載した文書で通知します。

なお、公益事業の争議行為は日常に大きな影響を与えるため、争議行為の目的や争議行為を行う期間・場所などを、できるだけ詳しく記載する必要があります。

争議の目的によっては届け出が受理されないことがあるので、注意しましょう。

参考:厚生労働省「争議行為の予告通知について


日本におけるロックアウトの事例

ここでは、日本におけるロックアウトの事例を3つ紹介します。使用者に賃金支払いが命じられたケースや、ロックアウトの正当性が裁判で認められた事例などを見ていきましょう。

日本原子力研究所事件

日本原子力研究所事件は、ロックアウトを行った使用者の賃金の支払義務が認められた事例です。

勤務時間制の変更をめぐる争いで、ストライキをしていた労働組合に対抗して使用者がロックアウトを実施したため、労働者側が就労できなかった期間の賃金の支払を請求しました。

本事案はロックアウト後にストライキを解除したにも関わらず、使用者側がロックアウトを続けたため、正当性が認められず、使用者側に賃金の支払いが命じられました。

参考:全国労働基準関係団体連合会「日本原子力研究所事件

西日本新聞社事件

西日本新聞社事件は、ロックアウトによる賃金カットの正当性について争われた事例です。

本事案では、労働組合のストライキに対抗する手段として使用者がロックアウトしました。判決ではロックアウトの正当性が認められ、労働者側の賃金支払請求は棄却されました。

参考:全国労働基準関係団体連合会「西日本新聞社事件

丸島水門事件

丸島水門事件は、最高裁判所がロックアウトの正当性を認めた事例です。

本事案では、労使間の交渉態度と、組合側の争議行為の様子や、それによって使用者が受ける打撃の程度などを考慮し、防衛手段としてロックアウトの正当性が認められました。

また、本事案のロックアウトは正当な争議行為として、その期間中の対象労働者に対する賃金支払義務を免れるとされました。

参考:全国労働基準関係団体連合会「丸島水門事件


ロックアウトについてのまとめ

ロックアウトの意味や条件、事例などをわかりやすく解説しました。ロックアウトは、起きないに越したことはありません。労働条件を書面で提示し、働きやすい環境を整えるなど、ロックアウトの予防策をしっかり取りましょう。

万が一、ロックアウトに踏み切る必要に迫られた場合は、予告通知が必要です。ロックアウトが認められる条件も明確に定められているため、いざという時のために把握しておくことをおすすめします。

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監修者プロフィール

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北 光太郎

きた社労士事務所 代表

2012年に社会保険労務士試験に合格。

勤務社労士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。

2021年に社会保険労務士として独立。

労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。

法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアでも労働法や社会保険の情報を提供している。

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