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第三回 読まれてなんぼの社内報。そのために注意したいこと

効果のある社内広報メディアの構築

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

第三回 読まれてなんぼの社内報。そのために注意したいこと

読みたくなるような切り口とは

次に考えることは、読みたくなるような切り口かどうかということです。身近な従業員を登場させ、親近感を持たせ、そして当事者意識を持たせることです。自分のこととして読んでもらわないと、その後の共感、行動には結び付かないのです。

共感を持ってもらうためには、登場している従業員が本音で語ることが大切です。部署を背負うのではなく、「自分自身としてどう感じているのか」を発言してもらうのです。事実を知らせるだけのニュース記事も従業員に語らせると、そこに思いが表れ、共感を得ることができます。ゲーテが「人間が最も興味を持つものは人間である」といったように、身近な従業員を登場させることが読ませるフックとなります。多くの社内報がたくさんの従業員を登場させているのは、そういう理由からなのです。

また、身近な従業員が身近なところで実行していることを掲載することで、「自分にもできる」と思わせる効果があります。そして従業員が登場していると、本人は必ず読みますし、家族に見せることもあるでしょう。同じ部署の人や知り合いは興味を持って読んでくれるでしょうし、同期は刺激を受けることになるでしょう。つまり、ある階層に当事者意識を持たせ共感してもらうには、その階層と同じ階層の従業員を登場させると効果があるのです。同じ境遇、同じ立場、同じ職種、同じ階層、同じ年代など「同じ○○」につながり感を持ち、興味を示すのです。

最後に、読みたくなるような見せ方をしているかどうかということです。

扱っているテーマはおもしろそうで、自分と同じ立場の従業員が数多く登場しているけれど、文字がぎっしりだと読む気にならない……。このようなことにならないためにも、忙しい従業員でも読みやすい、親切な誌面構成が必要となります。読者の関心事にリンクしたタイトルで、わがことと感じさせるリードが付いていて、小見出しを追うだけである程度内容が理解できる誌面構成が望まれます。全文を読まないと内容がわからない記事は、読まれない可能性が高いと考えていいでしょう。かっこいいデザインより、読者に親切な誌面であることを優先させましょう。


価値観が異なる従業員を知り、企画ごとにターゲットを絞る

先に、読者の関心事にリンクしていないと読まれないと記しました。そのためには、読者(=従業員)のことを知らなければいけません。いま、読者はどのような気持ちで仕事をしているのか。読者の抱えている仕事上の不安や課題、問題意識を、現場を歩いてキャッチしていくのです。デスクに座っているだけでは、このような情報は決して集まりません。

そして、従業員は一人ひとり異なる価値観を持って生きている「一市民」であることも忘れてはなりません。そして、一人ひとり情報の受け取り方が異なることから、読者に寄り添い、読者にいかに迫れるかが大事なのです。

また、社内報を担当するみなさんは、本社の中枢部門で働いています。会社のさまざまな情報に日々接していますが、現場は必ずしもそうではありません。社長の名前すら知らない場合もあります。広報部視点で編集しないように気を付け、従業員目線、現場目線で企画、編集していきましょう。

次に、読者ターゲットを定めることが大事です。社内報として、どの階層をメインの読者として編集していくかということです。ターゲットにすべきは、ここが動けば会社が動くという、影響力のある階層です。たとえば、これから会社を背負っていく若手リーダーであったり、会社の主戦力であるパート・アルバイトの方であったりと、メイン読者を意識して企画編集していくことが必要となります。

もう一つのターゲットは、号ごと、企画ごとに設定することです。というのも、同じ会社の従業員といえども、知識の前提条件が異なります。また職場環境や価値観は、すべてが一人ひとり異なります。深く剌さる企画にしようとすればするほど、ターゲットを絞らないと共感を得ることは困難です。ニュース記事や会社の概況を理解してもらう企画は別ですが、共感を得る、そして行動に結び付ける企画は、全員に読ませることは無理と考え、その企画ごとに明確なターゲットを絞って編集していくと良いでしょう。


「どうしてほしいか」を明確にすることが大事

社内報の企画は、次の公式で考えることができます。ここで大切なことは、読者に「どうしてほしいか」という思いを明確にすることです。

社内報の企画は、社内報の上で実現したいコミュニケーションそのものです。先に記した「コミュニケーションは要求である」とは、かのP・F・ドラッカーの言葉です。「どうしてほしいか」という要求によりコミュニケーシ

ョンが成立するのであれば、そこを明確にすることが大前提となるのです。よって、企画の立案は次の二つが軸になります。

  • ❶【誰が×何を×誰に伝えて×どうしてほしいのか】=企画【どのようなテーマとするか】
  • ➋【誰が×誰に×どうしてほしいから×何を伝えるのか】=企画【どのようなテーマとするか】

それぞれについては、以下の項目に分解できます。

  •  【誰が】
    経営者、部長、課長、メンバー(ベテラン、中堅、若手、新人)等々十社内報担当者
  •  【誰に】
    経営者、部長、課長、メンバー(ベテラン、中堅、若手、新人)等々
  •  【どうしてほしいか】
    ○○について知ってほしい、○○について理解してほしい、○○の事実に共感して、○○と同様に行動してほしい、など

企画、テーマが決まると、次にその料理方法が問題となります。いわゆる編集作業です。

次回に続く

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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