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はじめての事業計画書作成!事業再生プランの立て方【後編】

著者: 中小企業診断士  牧野 孝治

はじめての事業計画書作成!事業再生プランの立て方【後編】

今回は事業再生プランの【後編】ということで、具体的にどういった事業計画を立案すれば良いかを解説していきます。

経営を改善するための計画では、自社に問題を抱えているケースがほとんどです。そのため、機会に対する計画だけでなく、自社の抱える問題点をどのようにして改善するかが重要になるのです。

また、この事業計画書は自社の事業を見直すだけではなく、銀行などからの金融支援を受けるために使用されることも多いため、十分な現状分析と実現可能性の高いプランが必要となります。

それでは、具体的な事業計画書の作成方法について順番に確認していきましょう。


1.現状の事業の状況

まずは、自社の状況をしっかりと記載していきましょう。ここでの記載のポイントは以下の通りです。

1 創業からの歴史

自社の沿革について、創業のきっかけや理念など、自社の歩みをしっかりと伝えることが大切です。長年積み重ねてきた事業であればあるほど、現状の業績が低迷している状況であったとしても、大きな強みを有している可能性があります。

また、株主や役員構成や従業員数、本社の所在地や他にも営業拠点があるのであれば明記していきましょう。

2 事業の内容

ここでは自社のビジネスモデルを簡潔に記載しておきましょう。どういった商品やサービスを、どういった顧客に対して、どういった手法で販売しているのか、強み(他社との違い)もしっかりと考えることが大切です。事業を立て直すために完全に新しい事業を始めることも検討はできますが、自社の強みを強化するほうが成功確率が高いためです。

3 取引先との関係性

得意先はどういった企業か、また得意先ごとの売上比率も確認しておきましょう。特定の取引先に売上を依存している場合は、得意先の不調がそのまま自社の不調に繋がっている可能性もあるからです。また、仕入先からの取引フローも記載しておきましょう。


2.環境分析(問題点の抽出)

次に、なぜ業績が悪化してしまったのか、問題点を抽出していきます。

ここでは外部環境と内部環境の2つの切り口から考えると問題を抽出しやすいでしょう。ただし、外部・内部のどちらか一方だけといったケースは少なく、どちらにも問題点がある場合がほとんどです。

1 外部環境から生じている問題点

ただ、漠然と売上が低下したということだけではなくて、外部の環境を分析して自社の業績が悪化した原因を明確にしていきましょう。

例えば、直近であれば新型コロナウイルスの影響を受けた飲食店を例として挙げると、ほとんどの飲食店が売上減少の影響を受けている状況ではないでしょうか。しかし「コロナだから売上が減少している、仕方ない」と考えることをストップしてしまうのではなく、逆境でも深掘りをして考えていきましょう。コロナ禍でも売上減少の影響が小さい事業者や、売上を伸ばしている飲食店も存在します。そういった事業者と自社を比較して、自社に何が不足しているのかといった問題を明確にすることです。

2 内部環境から生じている問題点

内部環境の問題点を抽出します。特に経営改善が必要な企業では、売上が減少しているにもかかわらず、固定費の見直しを行っておらず、利益を圧迫している状況が多く見受けられます。

そういった場合は、固定費の中でもどういった費用(人件費、賃料など)がかさんでいるのかを分析しましょう。

また、固定費だけでなく変動費が同業他社(業界標準)と比較して高いケースも存在します。そういった場合は、製品を製造する際に廃棄などのロスが生じていることや、価格競争に巻き込まれ、気付かないうちに採算が取れない商品を販売していることが考えられます。


3.問題点に対する具体的な施策を立案する

自社の経営が悪化している問題点が抽出できたら、次は、それを解決するための具体的な施策を提示していきます。

1 事業面での施策

前項でも例に挙げた飲食店で考えると「コロナ禍で店内飲食ができないため、店内飲食以外の販路を開拓する」ことが課題であれば、「デリバリー、テイクアウトの展開」や「催事への出店」「通販の開始」など販路を広げることが必要となります。

また、それらに対応するためにも、宣伝手法をしっかりと検討しなければなりません。加えて、販路を開拓できたとしても、デリバリー・テイクアウト・催事など複数に対応することになった場合、既存の調理設備では大量生産ができないことも考えられます。このように新たな設備投資が必要になる場合もあり、自社の経営状況次第では絵に描いた餅となるため、十分な検討が必要です。

2 固定費を可能な限り削減する

経営を改善するためには、筋肉質の経営体質にならなければなりません。そのために無駄な経費はとことん削減しましょう。より良い事業を展開し、売上を伸ばす施策は、100%成功するとは限りません。ですが、固定費といった費用を削減することは、100%成果がでるからです。場合によっては、人件費を削減するために厳しい決断をしなければいけないかもしれません。


4.行動計画に落とし込む

次に行動計画(アクションプラン)に落とし込みます。どういった社内体制で臨むのか、また、誰がいつまでに何をするのかなど、工程表を作成し明確にしておきましょう。

誰が何をするのかが決まっていないと、時間だけがズルズルと経過する可能性があるからです。


5.数値計画に落とし込む

最後に具体的な数値計画に落とし込みます。「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つに加えて、借入金返済表も併せて作成します。

ここでは、特に売上の根拠をしっかりと詰めておきましょう。事業を立て直すためには当然売上の増加が必要不可欠でしょう。しかし、なぜ売上が伸びるかに具体性が無ければなりません。「ポスティングなどで顧客を獲得する」だけでは根拠が薄いので、「当社のターゲットとなる見込み客が多く住む住宅エリアにチラシを3,000枚配布し、そこにクーポンを付けてそのうち5%が来店する」といった様に、売上増化の要素をしっかりと細分化して考えていきましょう。


まとめ

いかがでしたでしょうか。事業が苦しくなった状況で事業計画書(経営改善計画書)を作成することは精神的にも時間的にもかなり苦しいと思います。

しかし、自社の状況を見直すだけでなく、自社だけで改善が難しい状況であれば、外部の関係者にも協力を求めなければなりません。そういった際にも事業計画書は役立つので、本記事を参考に早急に作成いただければ幸いです。

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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