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はじめての事業計画書作成! 新規出店計画(書店ビジネス編)

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

はじめての事業計画書作成! 新規出店計画(書店ビジネス編)

小売業における事業成長も、サービス業と同じように組織の成長とイコールです。モノを並べておけば売れる時代は過ぎ去り、顧客は体験に価値を感じ、お金を支払います。ですから、事業成長に不可欠なのは、人の成長です。書店は規模の経済が働くビジネスモデルではありませんので、どんどん事業拡大、新規出店すれば、収益が拡大できるわけではありません。人の成長が伴わない成長は、単なる膨張です。過剰な膨張は破裂につながります。一方で、計画的に出店すれば、人と組織の成長につながっていくことは確実です。これまでのあなたの経験を活かしたステップアップとして新規出店を目指しましょう。


1. チームの成長と出店の関係

「1店目の成功を確認できたら、さぁ新規出店!」というのがこれまでの常識でしたが、この不確実性の高い経済環境下に適応した組織となるためには、これまで以上にスピード感が求められています。スタートアップ界隈では「早く失敗して早く立て直す」ことが推奨されています。失敗をすることによって、普通では手に入れられない情報が手に入り、組織学習が進むことがわかっているからです。

(1)新規出店のデメリット

しかし、書店の新規出店はそれほど簡単なことではありません。実際、どんなデメリットがあるでしょうか?

第一に、書店というビジネスにおいての出店は、ほかの事業と同様に初期投資が発生し、回収に長期を要するため、資本効率の低下につながります。規模にもよりますが、改装費用や賃貸初期費用以外にも数百万円の在庫仕入れが必要になります。商品の返品は可能ですので、飲食店などの改装投資と比べるとそれほど高いリスクではありませんが、大きな初期投資が必要な点は同じです。

また、新規出店すれば、家賃などの固定費が二重に発生します。これは、考え方によれば、売り場面積が増えたととらえればよいのですが、レジなどの基本設備や店内作業は、どうしても二重になってしまいます。

(2)新規出店のメリット

では、新規出店によって得られるメリットにはどんなことがあるでしょうか?ケースバイケースではありますが、一般的に考えられるものを挙げていきますので、自社に当てはまることがあるか?という視点で確認ください。1点目に、お客さま視点で見た場合「近くにできたから行ってみよう」となり、顧客価値は高まりそうです。当然露出が増えますので、新たなお客さまとの出会いにつながります。また、在庫に特色を持たせることで別のお店作りが可能になります。つまり、近隣に出店することも可能ということになります。それによって、売り場面積が増えることと同じ程度の固定費増加で新規出店も可能になります。

新規出店のメリットは、これだけではありません。最大のメリットは、人と組織の成長です。オーナーの目が行き届かなくなることで、一時的にはトラブルなども増加するかもしれませんが、中長期的にみるとオーナーへの依存度が低下し、自分たちで工夫、判断することが増え、それが人や組織の成長につながります。その成長は、お客さま満足につながり、事業成長につながっていきます。


2. チームは、人と事業成長の根幹

モチベーションが高い人材は、自分の能力向上を実感し始めることで、さらに新しいステージで自分の力を発揮したり、試してみたりしたくなるものです。特に優秀な人材、向上心の強い人材は、なおさらその傾向が強いでしょう。そんなメンバーに成長の場を提供し支援することも経営者の大きな使命です。

(1)チームを編成する

まずグループとチームの違いから考えてみましょう。

グループとは、ある目的のために集まった「人の集まり、かたまり」のことを指します。各人が最大限の力を発揮することで成果が上がり、全体の成果につながっていきます。例えば、マラソン中継などで、「先頭グループや先頭集団」と呼ばれているものがいわゆるグループです。一人のスピードが上がれば、それにつられてみんなのタイムもよくなることなどが、メリットと考えられます。

一方でチームはというと、個人やグループでは解決できない問題に取り組むために、メンバーが個人の利害よりも組織の利益を優先して協力・連携し合う、いわば運命共同体です。メンバー全員が課題達成に必要な組織能力の発揮のために、個人に役割が与えられることもグループとの大きな違いです。例えば、野球では、速い球や変化球などを投げられる人がピッチャーを、身長が高い人がファーストを、といった具合に、個人には、やりたいポジションや個人の能力が高まる役割ではなく、あくまで組織の力が最も高まる役割が期待されます。つまり、グループは単なる人の集まり、チームは目的を果たすための機能を持っているのです。

(2)チームリーダーを育てる

そして、チーム内の役割の一つにリーダーがあります。リーダーには、物事を根拠に基づき素早く判断する力、そして判断したことを行動に移す力が求められます。さらに言えば、周りのスタッフに働きかけ共通目的達成のために必要な行動をとらせるためのコミュニケーション能力も必要不可欠です。そのため、リーダーにはメンバーの模範になることが求められるわけです。

適任候補者を見つけたら、チームとして不足している人材や新任リーダーを支援できる人材をアサインしてチームを編成しましょう。最初はとても不安で、お店やチームを任せられるとは思えないでしょう。しかし、その組織の隙間(不足している部分)が人を育てるのです。特にリーダーは、その隙間を埋めつつもスタッフに方向性を示さなくてはなりませんから、急激に成長します。荒っぽいと思われますが、ここでも「早く失敗して早く立て直す」ことが一番の近道になります。


まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、書店ビジネスにおける新規出店を実現するために必要なチームとリーダーについて考えてきました。書店ビジネスのドミナント出店は過去のものととらえられていますが、人と組織の成長こそが事業成長のエンジンとなることは、過去から変化がありません。まずはチームとしてありたい姿を描き、現状との差分を埋める計画を立案しましょう。計画は、社内で共有されることによってチームに変化を促します。チームワークが高まり、長くお客さまのお役に立てるチームに成長できることでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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